連載開始にあたって(川島篤志)
連載
2010.10.18
小テストで学ぶ “フィジカルアセスメント” for Nurses
【第1回】連載開始にあたって
川島篤志(市立福知山市民病院総合内科医長)
患者さんの身体は,情報の宝庫。“身体を診る能力=フィジカルアセスメント”を身に付けることで,日常の看護はさらに楽しく,充実したものになるはずです。
そこで本連載では,福知山市民病院でナース向けに実施されている“フィジカルアセスメントの小テスト”を紙上再録しました。テストと言っても,決まった答えはありません。一人で,友達と,同僚と,ぜひ繰り返し小テストに挑戦し,自分なりのフィジカルアセスメントのコツ,見つけてみてください。
◆小テストラインナップ(予定)
●Vital sign
●聴診:呼吸と循環
●入院中の診断・発熱・胸痛・嘔吐……
●緊急時
●チューブ管理
●その他:全体の観察・ADLなど
医師に必須の身体診察能力,でも……
「看護師に身体診察能力は必要か?」この問いに一医師が簡単に答えるのはおこがましいことです。一方,「医師にとって,身体診察は必要か?」という問いになら答えてもよいかもしれません。「病歴聴取」と双璧をなして,「身体診察」は基本的臨床能力であり,患者とのコミュニケーションという側面を含めて,「必須のものである」と。
しかし,実際に身体診察を重要視している医師はどのくらいいるでしょうか? もちろん統計などありませんが,実感としてあまり多くないように思います。看護師の方々にとっても,身体所見を重要視した医師のカルテや,症例検討中に身体所見の議論をしている風景を見る機会は,実のところ少ないのではないでしょうか。
筆者は以前より,医師・医学生を対象に「身体所見の小テスト」と銘打って,「活きた身体所見を取る方法」の講演を行ってきました。その際のアンケートでも,「身体所見に自信がない」といった意見が多くみられます。また「学びたいけれど機会がない」「身体所見について議論をすることがない」といった意見も多くあり,それが日本の医療の現状だと感じています。
看護師とフィジカルアセスメント
では,看護師に身体診察能力(同義ではないと承知の上で,以下,フィジカルアセスメント)は必要か? という問いに戻ると,やはり必要ではないかと思いますし,実は皆,学びたいし,議論したい人も多いのではないでしょうか。
筆者は,現在の勤務先である福知山市民病院に赴任後,看護師を対象としたフィジカルアセスメントの講演会に参加する機会を得ました。筆者にとっては今まで耳にしたことのなかった(と思う)取り組みであり,病院と看護部の熱意を感じました。のちに香川惠造院長の「教育力のない病院に未来はない」という理念を知って,納得した次第です。
事前に看護師向けの教科書を見せてもらうと,平易な文章で書かれてはいるものの,その内容は医師対象の教科書にも匹敵するほど高度なものでした。
フィジカルアセスメントに関する書籍の執筆者によって行われた講演は,聴衆を引き込む素晴らしい内容でした。と同時に,「やっぱり……」と思えるものがありました。結論から言うと,(1)実践的であっても実現は難しい内容があること,(2)共通の言語の重要性,をあらためて感じたのです。
(1)に関しては,具体的に言うと「頸静脈の所見は有用である」とあっても,何割の看護師がその所見を取れるだろうか? 「IV音の聴取の仕方」を説明しても,IV音が聴けないタイプの聴診器を持っている看護師がいたらどうするのだろうか? といった懸念が生じました。こんな書き方をすると看護師の方から反発を受けるかもしれませんが,これは“医師でも無理”なことです。身体診察に興味を持って,熱心に取り組んでいる医師集団でも,なかなか実行できる...
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