医学界新聞

2010.09.13

小児医療の充実をめざして議論

在宅医療,緩和医療,終末期医療をテーマとした2つの研究会より


 近年,小児医療における在宅医療や緩和医療,終末期医療の在りかたをめぐる議論が高まりつつある。日本小児科学会では,小児終末期医療ガイドラインワーキンググループを中心に,ガイドラインの作成が進められている。また,患者家族でつくる「がんの子供を守る会」では,医療者および患者家族に向けた「緩和ケアのガイドライン――この子のためにできること」(仮称)を今冬に発表する予定だという。さらに患児のQOLに着目した小児ホスピスや,難病の子どものための自然体験施設設立などの動きもある。本紙ではこの夏,より質の高い小児医療の提供をめざして開催された2つの研究会のもようをお伝えする。


■小児在宅医療の裾野を広げるために

シンポジウムのもよう
 第1回日本小児在宅医療・緩和ケア研究会が8月29日,聖路加看護大(東京都中央区)にて開催された。本研究会は,小児医療において在宅医療と緩和医療とが有機的に連携することをめざし2008年に発足。ネットワークの構築とともに,小児ホスピスを立ち上げることを目標に活動しているという。当日は,250人を超える参加者を集め,活発な議論が展開された。

 シンポジウム「我が国の小児在宅医療の現状と課題」(座長=名大・奈良間美保氏,群馬大・吉野浩之氏)では,各地で意欲的な取り組みを行っている4名の医師・看護師が登壇し,小児在宅医療の展望を語った。

 在宅医療支援室で勤務する望月成隆氏(大阪府立母子保健総合医療センター)は,病院医師の立場から小児在宅医療の現状を概説。世界トップクラスの周産期死亡率の低さを誇るわが国だが,一方で長期入院を余儀なくされる重症児が増加しており,急性期医療を必要とする新生児や妊婦の受け入れを困難にしていると述べた。さらに,レスパイト入院を必要とする患児を急性期病棟が受け入れざるを得ない状況があると指摘。このような問題を解決するためには地域連携が必須であることから,同センターでは3年前に在宅医療支援室を開設。大阪府も2009年度に「長期入院時退院促進等支援事業」「在宅高度医療時支援ネットワーク構築事業」を開始したという。

 小児在宅医療の中心となる小児科開業医の立場からは,緒方健一氏(おがた小児科内科医院)と高橋昭彦氏(ひばりクリニック)が登壇。緒方氏は,熊本市が取り組む小児科開業医,大学小児科・病院勤務医が一体となった小児医療について紹介。人的・経済的基盤の少ない地方都市として,レスパイトケアや緊急時対応に備えるための「市中基幹ネットワーク」や熊本市歯科医師会との連携,患者家族会の設立など,ネットワーク構築に取り組んでいるという。さらに氏は,自宅で療養する患児の避け得る死亡や再入院の主因が分泌物による気道閉塞であることに着目し,早期からの呼吸リハビリテーションを開始。患児の外出や旅行が可能になるなど,QOLの向上にもつながっていると述べた。

 高橋氏は,2008年に開始したレスパイトケアについて紹介。氏がレスパイトケア施設の開設を決意した背景には,親の介護疲れ,経済的問題,きょうだい...

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