医学界新聞

2010.08.09

第1回日本プライマリ・ケア連合学会開催

ジェネラリストのあるべき姿を探る2日間


 第1回日本プライマリ・ケア連合学会が,同学会初代理事長である前沢政次大会長(倶知安厚生病院)のもと,6月26-27日に東京国際フォーラム(東京都千代田区)にて開催された。日本プライマリ・ケア連合学会は,日本プライマリ・ケア学会,日本家庭医療学会,日本総合診療医学会の3学会が合併し本年4月に発足。深刻化する医師不足問題を解決する鍵として“総合的に診る医師”にいっそうの期待が集まるなか,わが国のプライマリ・ケア分野を担う医療者が一致団結した新学会が始動した。

 本紙では,新学会の発足を記念して催された記念シンポジウムならびにプライマリ・ケアの卒前教育について議論したシンポジウムのもようを報告する。


目標は家庭医・総合医の養成と普及

前沢政次大会長
 “国民が求める家庭医をより多く育成していきたい”。記念シンポジウム「国民が求めるプライマリ・ケア――分化から統合へ 新学会がめざすところ」(座長=佐賀大・小泉俊三氏,区立台東病院・山田隆司氏)で最初に登壇した前沢氏は,新学会の目標として家庭医・総合医の養成を掲げた。

 氏は,英ロンドン大のGreenhalgh氏が提唱する,(1)情報管理術,(2)一般の人とのコミュニケーション,(3)多職種連携,(4)変化への適応力,という4つのジェネラリストの役割を挙げ,これらの実践が国民に必要とされる医師につながると説明。また,充実したプライマリ・ケア環境の構築が,制度と臨床の両面から医療の質向上に寄与するという米国の研究結果を紹介した。また,私案としながらも“プライマリ・ケア医科大学の設立”と“新しい水平型専門医に新しい保険制度の試用”という2点の長期目標を掲げ,「地域医療枠の設立などよい芽が出つつある。最終的には大学を作れるよう長期的視点で活動していきたい」と語った。

 引き続き登壇した福井次矢氏(聖路加国際病院)は,これまでの総合医をめぐる論議を振り返りながらその普及に向けた方策を述べた。総合医の普及が進まなかった背景には,1980年代の「家庭医懇談会」の余波や,臓器別専門医の総合医に対する理解が少なかった状況があったという。氏は普及を図るため,プライマリ・ケア医の増員が死亡率の低下に寄与するという米国の臨床研究などを例に,総合医が医療に有用であることを訴える必要があると強調した。また望ましい医療体制として,臓器別専門医と総合医の組み合わせを提示。誰からも評価される「総合医」の認定医・専門医養成プログラムを確立するとともに,国全体として各専門医の必要数や医療制度のグランドビジョンの策定が必須と訴えた。

 最後に木村彰氏(日経新聞社)が,患者・メディアの立場から医療者と社会のかかわりについて発言。かつて脳腫瘍に罹患した氏は,当初病名がわからず臓器別専門医を渡...

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