医学界新聞

2010.04.19

MEDICAL LIBRARY 書評・新刊案内


DVD+BOOK
古武術介護――実践編

岡田 慎一郎 著

《評 者》小松 佳子(医科歯科大病院看護部)

患者と一心同体の感覚に感動

 看護ケアのなかで,腰を痛めた経験はないでしょうか。それまで腰に負担をかけない介助の方法を学ばなかったわけではありませんが,つい力任せの介助を行っていたように思います。また,患者の転倒防止に苦慮されている看護師も多いと思います。こうした思いから以前,安全で安楽な介助の方法について学びたいと研修企画を依頼したときの講師が,本書の著者の岡田慎一郎先生でした。

 岡田先生は,テレビなどで有名な武術研究家の甲野善紀氏に師事し,独自の「古武術介護」を提案され,多くの方に斬新な介護法を教え続けていらっしゃる方です。

 体位変換や移乗の際,私たちはついつい,支える手に力を加えてしまいがちです。しかし,古武術介護では,身体全体を使い,介助者と被介助者が一体化して動くという考え方に基づき,さまざまな工夫をします。実際に当院で岡田先生を招いた研修では,2時間という短い研修でしたので,教わった型をすべて習得することはできませんでしたが,自分の身体のちょっとした使い方によって,相手の身体と一心同体になった感覚で互いに“フワッ”と浮くように動けたときには,何とも言えない感動を覚えました。看護ケアの場面で力任せになりがちな方にとっては,力に頼らない介助法に目から鱗が落ちるでしょう。

 本書ではこうした「筋力に頼らず身体に負担をかけない」古武術の身体運用を踏まえた方法について,「古武術介護の型」「状況別の応用」「現場で実践」の3章から成る構成で解説されており,より具体的に理解するためにDVDが添付されています。DVDから見るもよし,本書を読んでDVDで再確認するもよしの内容です。

 古武術介護の基本となる型の一つである「手のひら返し」は日常生活の中でも重い荷物を持ち運ぶときなどに容易に活用できます。「上体起こし」は日常の看護場面で応用できそうです。「添え立ち」は実際に行うにはかなり難しいですが,身体が“フワッ”と浮く感じは感動です。

 基本的な型の応用の中では,ベッド上でのポジショニングについて述べています。特に褥瘡対策で使用されることが多くなったエアマット上でのポジショニングの仕方について,エアマットの浮き沈みに影響されない方法を提示しています。こうした点からも,古武術介護を現場の状況に合わせて次々と発展されていることがうかがえます。

 本書では,実際の研修と同様の動作を一つひとつ細かく写真に収め,所々で重要なポイントを示しており,非常に難しい動作を誰もがイメージしやすいような文章で説明されている点で素晴らしいと思います。

 以前講習を受けたときには,正直,岡田先生の教えを言語化することは難しいと思っていました。しかし,本書の説明は,非常にわかりやすくつづられています。皆さんも一度,本書をひもとき,試行してみてはいかがでしょうか。今までとはまったく違う身体の感覚に感動されることと思います。

A4横・頁144 価格3,990円(税5%込)医学書院
ISBN978-4-260-00889-1


EVTスタッフマニュアル

中村 正人 編

《評 者》小崎 信子(滋賀医大病院看護部)

EVTのすべてが凝縮されている

 EVTすなわち末梢血管インターベンションは,日々発展を遂げています。それは,ひとえに診断機器の進歩とカテーテルやステント類の開発・改良が進んでいることによります。そのため,医療現場にいるスタッフは,日々行われるEVTという業務をこなすことに精一杯ではないでしょうか。

 2008年4月に立ち会い規制が始まってはや1年半。臨床工学技士を配置した施設,業者と有償契約を結んだ施設とその対応はさまざまです。しかしながら,現場にあるマンパワーだけで日々のEVTをこなしているのが多くの施設の現状でしょう。次々に導入される機械や器具の種類も操作方法もわからない。また,カテーテルやステント類の多さに振り回され時間を取られ,看護師であれば本来行うべき患者看護やモニタリングがおろそかになる。それは決してあってはならないことです。

 本書は,現場に即した豊富な写真と図解入りで構成されています。カテーテルなどの器具類のサイズバリエーションについても具体的な商品名を含め詳細に記載されています。さらに,チェックポイントとして,看護で行うべき観察項目も手技ごとに詳細に述べられています。よって,初めてEVTに携わるスタッフには,現場の雰囲気をそのまま伝えるものとなっています。

 しかしながら,本書の真価は,EVTスタッフとしての業務に慣れたころ発揮されるでしょう。現場で使用する業務マニュアルは,通常手順を追ったものにすぎません。EVTの現場では,まずは手順が追えないことには進まないのも現状です。ですから,真にEVTスタッフとして動くためには本書に述べられているような解剖を含めた手技の理解が必要なのです。本文を丸ごと暗記するのではなく,実際自分が携わるEVTと照らし合わせながら身に付けていくべき内容です。そうすることで,看護師であれば患者への看護をより...

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