医学界新聞

2009.11.30

MEDICAL LIBRARY 書評・新刊案内


標準生理学 第7版

小澤 瀞司,福田 康一郎 総編集
本間 研一,大森 治紀,大橋 俊夫 編

《評 者》友池 仁暢(国立循環器病センター病院院長)

医学の基盤を押さえる

 かつて,わが国の医学教育は原書に親しむことから始まった節があります。先日,緒方洪庵の若い頃をモチーフにした「浪花の華」という時代劇がテレビ放映されていましたが,そこで蘭学を学ぶ若者が欧文の医学書を講読する場面がありました。江戸時代から明治時代初期,この方式はシーボルトやベルツの失笑を買いましたが,1970年代の臨床教室でも原書の輪読という習慣が残っていました。1990年代になると,この伝統的学習法は消滅しますが,その背景には邦文教科書の充実があると思います。

 学生にとって,生理学は医学系諸学科のカリキュラムの中核となっています。臨床医にとって,生理学は日進月歩の医学の進歩にキャッチアップするまたとない窓口です。このように幅広い読者を対象に『標準生理学 第7版』が上梓されました。本書の初版は1985年,それから4半世紀の間,ほぼ4年ごとに改訂されています。このような蓄積があるからでしょう,本書は,変化の激しい医学・生理学の進歩をわかりやすい邦語に包摂しています。教科書としてのオーソドックスな体裁の堅持と定期的改訂という,執筆陣のたゆまぬ努力に敬意を表します。

 第6版と比較して,体裁,内容共に一新されている本書の特徴を紹介します。まず目につくのは,章の作りが秀逸であることです。最初に「本章を学ぶ意義」が1ページに端的にまとめられており,次に「章の構成マップ」が見開きで示されています。全体像と重要度がひと目にして理解できる仕組みになっていますので,これらは初めて生理学を学ぶ人の,莫大な知識を詰め込まねばならないという抵抗感を軽減するに違いありません。章の冒頭に生物学を通観する記述があり,執筆者の教養の一端を知りうれしくなります。この手の知識は,初めて学ぶ者の理解の助けとなり,臨床家にとっては基本概念を応用する際に思わぬ効用を発揮することになります。章末には「学習のためのチェックポイント」,巻末に「医師国家試験出題基準対照表」「医学教育モデル・コア・カリキュラム対照表」,別冊付録には「生理学で考える臨床問題」があり,まさに至れり尽くせりです。

 最近,国内外の教科書は多色刷りが流行になっていますが,色の取り合わせでかえって判読しづらくなっている事例も少なくありません。本書は心地よい彩度の色を採用しており,見やすく,また理解と知識の整理に役立っています。このように,細部に至るまで気配りが行き届いていま...

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