標準生理学 第7版

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膨大な生理学の知識を基本概念から最新の知見までを、詳細かつわかりやすくまとめ、生理学を系統的・論理的に理解できる教科書。第7版では、章の始めに構成マップを設け、章全体の構成と要点を見て理解できるようにしている。また、複雑に関連しあう事項を「関連事項」や参照ページなどで明示。好評の別冊「生理学で考える臨床問題」もさらに充実し、臨床に役立つ生理学的思考方法を培う。
シリーズ 標準医学
総編集 小澤 瀞司 / 福田 康一郎
編集 本間 研一 / 大森 治紀 / 大橋 俊夫
発行 2009年04月判型:B5頁:1200
ISBN 978-4-260-00301-8
定価 13,200円 (本体12,000円+税)
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第7版 序

 生理学は,生体機能とその発現メカニズムを明らかにすることを目標とする,歴史的にもそして現在においても,医学の基幹となる学問である。この生理学の全体像を,最新の知見を含めて適切に伝えることのできる教科書づくりを目指して,1985年に本書の初版を上梓してからほぼ四半世紀が過ぎた。この間3~4年に一度のペースで改訂を重ね,このたび第7版を発行することとなった。
 本書は,医学生を主な対象とする生理学の教科書としてはかなりの大冊であり,最新の研究成果に基づく知識を網羅しているので,一見して難解な印象を与える。しかし,読者諸氏からは,「ていねいに読み進んでいけば理解しやすい本で,生体の複雑・精緻な働きのメカニズムに関する知的好奇心を満たすとともに,臨床医学に進んでからも役に立つ知識をしっかり修得できる」という評価を得て,「日本語で書かれた最も標準的な生理学の教科書」としての地位を築くことができた。本書がこのような高い評価を得ている理由は,歴代の編集者が,生理学は「覚える学問」ではなく「考える学問」であるという原点に立って,生体の精妙な機能とそのメカニズムについて「なぜそうなるのか」を丹念に説くことを編集の基本方針とし,執筆者の先生方の全面的な協力をいただけたことによると思われる。
 今回の改訂では,最新の知見を盛り込みつつも,従来以上の大冊になることを避けるために,執筆の先生方にお願いして,各章の間で内容の重複する部分を削除または一体化することに留意した。また,初版から読者の理解を容易にするために,各章の初めに「本章を学ぶ意義」の頁を設けて,その章の位置づけを示してきたが,第7版ではそれに加えて各章の構成マップを作成し,そこで取り扱う主要事項を的確に表現する図を提示することにより,その章の全体像を事前に把握できるようにした。さらに,第6版から添付した別冊付録「生理学で考える臨床問題」の問題形式を整えるとともにその内容を充実させることにより,医学生諸氏が臨床医学を学ぶにあたって,病気を生理機能の破綻としてとらえ,本書で学んだ知識をもとに,それぞれの疾患の病態の発現機序を論理的に説明する力を自主学習によって養えるように配慮した。
 この第7版では,編集者として本書の創刊に参加され,第6版では監修をお務めいただいた本郷利憲先生,廣重 力先生,豊田順一先生に代わり,小澤瀞司,福田康一郎が総編集者に就任し,小澤は大森治紀とともに主として動物性機能を扱う第1~7章の編集を担当し,福田が大橋俊夫,本間研一とともに植物性機能を扱う第8~15章の編集を担当した。また,第6版の執筆者のうち,これまで健筆をふるっていただいた15名の先生方が後進に道を譲られ,代わって16名の先生に新たに執筆者として参加いただいた。新しい執筆者はいずれも,当該領域の教育・研究の第一人者である。前版から引き続き執筆いただいている方々ともども,これらの先生方の本書の出版への多大なご貢献に心から感謝する次第である。
 これまで版を改めるたびに,高度な内容のレベルを落とすことなく,わかりやすく提示することに努めてきたが,今後ともこの努力を継続していきたい。第7版に対しても各方面からのご意見,ご批判をお願いしたい。終わりにあたり,本書の刊行に尽力され,膨大な作業を担当してくださった医学書院の編集部,制作部の皆様に厚くお礼を申し上げる。

 2009年2月 春立つ日に
 編集者一同

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序章
第1章 細胞の一般生理
 I.細胞の微細構造と機能
 II.細胞とその環境
第2章 神経と筋の生理学
 I.膜興奮性とイオンチャネル
 II.筋肉とその収縮
 III.興奮の伝達
第3章 神経系の形態と機能/概説
 I.神経細胞学/総論
 II.神経回路機能/総論
第4章 感覚機能
 I.総論
 II.体性感覚
 III.聴覚
 IV.平衡感覚
 V.視覚
 VI.味覚と嗅覚
第5章 運動機能
 I.筋と運動ニューロン
 II.脊髄
 III.脳幹
 IV.大脳皮質と大脳基底核
 V.小脳
 VI.発声と構音
第6章 自律機能と本能行動
 I.自律神経系
 II.視床下部と辺縁系
第7章 高次神経機能
 I.大脳皮質の機能
 II.統合機能
第8章 血液
 I.血液の組成と性状
 II.赤血球
 III.白血球
 IV.血小板
 V.鉄の代謝
 VI.血液型と輸血
第9章 循環
 I.循環系の基本的性質
 II.心臓の働き
 III.血液循環
 IV.循環系の調節
第10章 呼吸
 I.呼吸生理学の基礎
 II.気道・肺胞および呼吸反射
 III.呼吸運動,肺気量,換気力学
 IV.呼吸の神経性調節
 V.肺循環とガス交換
 VI.血液ガス
 VII.呼吸の化学調節
 VIII.呼吸の適応と病態
 IX.ガスの基本法則,呼吸生理学における呼吸気量の換算,記号,略号
第11章 腎と体液,酸塩基調節
 I.体液と内部環境
 II.腎臓の働きと尿生成のしくみ
 III.腎循環と糸球体濾過
 IV.有機物質の尿細管再吸収と分泌
 V.尿細管のNa,Cl輸送
 VI.K輸送
 VII.Ca2+,Mg2+,リン酸の輸送
 VIII.尿濃縮と希釈
 IX.体液量調節
 X.酸と塩基の輸送
 XI.酸塩基調節
第12章 消化と吸収
 I.消化・吸収の一般原理
 II.口腔・咽頭・食道
 III.胃
 IV.肝・胆・膵
 V.小腸
 VI.大腸
第13章 環境と生体
 I.エネルギー代謝
 II.体温とその調節
 III.概日リズムの生理学
 IV.運動・体力の生理学
第14章 内分泌
 I.内分泌総論
 II.視床下部ホルモン
 III.下垂体ホルモン
 IV.成長ホルモンとプロラクチン
 V.ACTH,副腎皮質ホルモン
 VI.副腎髄質ホルモン
 VII.ゴナドトロピン(性腺刺激ホルモン)
 VIII.甲状腺刺激ホルモンと甲状腺ホルモン
 IX.カルシウム代謝の内分泌制御
 X.膵島ホルモン
第15章 生殖
 I.生殖腺の性分化・発達
 II.男性の生殖機能
 III.女性の生殖機能
 IV.妊娠と分娩
 V.生殖機能の老化

医師国家試験出題基準対照表
医学教育モデル・コア・カリキュラム対照表

和文索引
欧文索引

別冊付録 生理学で考える臨床問題

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医学の基盤を押さえる
書評者: 友池 仁暢 (国立循環器病センター病院院長)
 かつて,わが国の医学教育は原書に親しむことから始まった節があります。先日,緒方洪庵の若い頃をモチーフにした「浪花の華」という時代劇がテレビ放映されていましたが,そこで蘭学を学ぶ若者が欧文の医学書を講読する場面がありました。江戸~明治初期,この方式はシーボルトやベルツの失笑を買いましたが,1970年代の臨床教室でも原書の輪読という習慣が残っていました。1990年代になると,この伝統的学習法は消滅しますが,その背景には邦文教科書の充実があると思います。

 学生にとって,生理学は医学系諸学科のカリキュラムの中核となっています。臨床医にとって,生理学は日進月歩の医学の進歩にキャッチアップするまたとない窓口です。このように幅広い読者を対象に『標準生理学 第7版』が上梓されました。本書の初版は1985年,それから4半世紀の間,ほぼ4年ごとに改訂されています。このような蓄積があるからでしょう,本書は,変化の激しい医学・生理学の進歩をわかりやすい邦語に包摂しています。教科書としてのオーソドックスな体裁の堅持と定期的改訂という,執筆陣のたゆまぬ努力に敬意を表します。

 第6版と比較して,体裁,内容共に一新されていますので,本書の特徴を紹介します。まず目につくのは,章の作りが秀逸であることです。最初に「本章を学ぶ意義」が1頁に端的にまとめられており,次に「章の構成マップ」が見開きで示されています。全体像と重要度がひと目にして理解できる仕組みになっていますので,これらは初めて生理学を学ぶ人の,莫大な知識を詰め込まねばならないという抵抗感を軽減するに違いありません。章の冒頭に生物学を通観する記述があり,執筆者の教養の一端を知りうれしくなります。この手の知識は,初めて学ぶ者の理解の助けとなり,臨床家にとっては基本概念を応用する際に思わぬ効用を発揮することになります。章末には「学習のためのチェックポイント」,巻末に「医師国家試験出題基準対照表」,「医学教育モデル・コア・カリキュラム対照表」,別冊付録には「生理学で考える臨床問題」があり,まさに至れり尽くせりです。

 最近,国内外の教科書は多色刷りが流行になっていますが,色の取り合わせでかえって判読しづらくなっている事例も少なくありません。本書は心地よい彩度の色を採用し,見やすく,かつ理解と知識の整理に役立っています。このように,細部に至るまで気配りが行き届いていますので,医学にとどまらず,薬学,生物学,化学,物理,医療系諸学科の初学者が生理学を学ぶ際にも,本書は違和感なく受け入れられるのではないでしょうか。

 臨床現場ではエビデンスが尊重されています。最新情報を収集するため目を通すべき論文は,週刊総合誌から月刊専門誌に至るまで日々莫大な量になります。個々の症例に則して最新のエビデンスを有効に活用できるかは,それらの臨床的意義を評価し得て可能になります。しかも情報過多の時代ですから,事の軽重をきちんと押さえることも大切です。さらに臨床医学は,総合性と専門性への要求度を高めていますので,その背骨となる“病気の診断と治療”についての理解を深めねばなりません。したがって,医学の基盤に相当する生理学を繰り返し学ぶことが必要です。このようなことから,本書を学生は言うに及ばず,臨床の現場に出た医師にもお薦めします。
深い内容と最新の知見を取り入れた無二の教科書
書評者: 柚崎 通介 (慶應義塾大教授・生理学)
 これは驚くべき教科書である。「生理学の知識を暗記するのではなく理解するために」をめざし,各分野で活躍中の著者陣を結集して,本書の第1版は1985年に出版された。それ以来3-4年に一度のペースで改訂を重ね,常に各分野の第一人者の先生方を執筆陣に加えて最先端の知見を取り込み,本書で第7版となる。この大部の教科書をここまで育ててこられた監修・編集の先生方には,心から賛辞を贈りたい。優れた外国語の生理学教科書はいくつかあるが,本書のように深い内容と最新の知見を取り入れた教科書は皆無であり,日本が誇るべき教科書であると思う。

 今回の改訂でまず気がつくのは,各章の初めに「構成マップ」として,その章で取り扱う主要事項を文章とともに数点の図で表現するページが追加されたことである。これはこのような大部の教科書に取り組む学生にとっては,全体の見通しを立て,頭を整理する上で助けになるものと期待される。また,多くの図表が多色刷りとなった点も視覚的に初学者の理解を助けてくれる。

 意外と知られていないもう一つの本書の特徴は,第6版から別冊付録として付いてきた「生理学で考える臨床問題」である。さまざまな病態を生理学的な思考により本質的に理解する面白さを伝えようとの意図の下に,79問の症例問題が厳選されている。例えば脱力感と知覚異常,脈の乱れを訴える患者さんが高カリウム血症であることがわかった際に,どうして高カリウム血症で麻痺や不整脈が出現するのか,あるいはどうしてグルコース・インスリン投与が治療として使われるのかを生理学的に考えさせる,といった問題である。第7版では問題数が増えるとともに,解答と解説が詳しくなり,各問の教科書の対応ページが明示されるようになった。臨床実習が始まってからもう一度この別冊を読むと,さらに病態の理解が深まることと思う。

 各論では,膜興奮性とイオンチャネル(第2章)の充実ぶりが特に目を引く。厳選された最先端の知見が詰め込まれている。数学的な準備ができていない初学者には難しい部分もあるであろうが,授業と併用する際には役に立つ。また神経幹細胞・細胞移動(第3章),味覚受容体(第4章),温覚受容体とカプサイシン受容体(第4章)などの最先端の知見も早速取り入れられている。高次神経機能の項(第7章)も充実し,これまであまり言及が少なかった失語症について触れられるようになった点もありがたい。

 なお,瑣末な点ではあるが,次の改訂版へ向けての希望を書いておく。大脳皮質のブロードマン野は第7章で解説されるが,感覚機能(第4章)や運動機能(第5章)の前のほうが良いかもしれない。もう一つは,興奮伝導の説明(第2章)のところに軸索の分類(A-CやI-IV)の一覧表があったら良いと思った。

 しかし全体としてはまさに圧巻の教科書であり,意欲ある医学生にはぜひがっぷりと取り組んでほしいと思う。
臨床医も手元に置きたい生理学の教科書
書評者: 齋藤 宣彦 (聖マリアンナ医大名誉教授・内科学)
 「標準生理学」は1985年に第1版が上梓されてからすでに四半世紀が過ぎ,歴代執筆者の欄には斯界の泰斗が名を連ねている。本書は発刊以来,文字通り医学生用生理学教科書のスタンダードとなってきた。

 このたび出版された改訂第7版は,本文だけで1000頁を超え,カラーイラストも多く,各章の終わりには「学習のためのチェックポイント」が箇条書きで示され,巻末には「医師国家試験出題基準対照表」と「医学教育モデル・コア・カリキュラム対照表」が付されている。加えて44頁からなる別冊には,79項目に及ぶ論述試験問題「生理学で考える臨床問題」が解説付きで示されている。学生用としてこれ以上行き届いた教科書は類をみない。特に「生理学で考える臨床問題」は,臨床医を志す学生が生理学の重要性を意識することで学習へのモチベーションを高める効果がある。

 近年の医学・医療は,地を揺るがす巨大な列車のように轟音を立てながら驀進している。ぼんやりしていると,振り落とされそうな勢いで進歩しているといってもよい。筆者は,この列車から振り落とされないよう,しゃにむにしがみついているつもりなのだが,ひょっとすると本人も知らない間に,すでに振り落とされてしまっているのかもしれない。

 臨床医の場合,基礎科学の知識は大学を出て数年後にはそろそろ錆が出始め,臨床経験と反比例して学生時代の知識は化石となっていく。それを防ぐには,医学部卒業後も,①生理学をはじめとする基礎科学の教科書を気軽に開く習慣をつけることと,②最新の臨床医学の知識や技能を修得する努力をすることで,この2つは臨床医の生涯教育における必須科目である。臨床の知識は常に基礎科学に裏打ちされたものでなければ,病態解析が極めて浅薄なものになってしまうことは,臨床に身を置く者ならば皆,感じているに違いない。病態生理という言葉はいささか使い過ぎ気味だが,この言葉が頻繁に使われるゆえんは,生理学は日常の病態解析に応用可能な部分が多く,かつ他の基礎科学に比べて親しみやすいからだと思う。

 そこで,本書は学生用教科書の範疇にとどめておくべきではないという結論に至る。本書では,新しい基礎科学の知識のみならず,現在の卒前医学教育の目標や臨床医学への橋渡し的内容を備えてあることで,医師の生涯教育用教科書としての役目も意識してつくられていることがわかる。編集や執筆に携わった方々の慧眼に敬服する次第である。

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