医学界新聞

2009.10.26

第19回日本看護学教育学会開催


 第19回日本看護学教育学会が,9月20-21日,日赤北海道看護大(北見市)にて開催された。石井トク会長(同大)のもと,「未来を拓く看護学教育」をテーマに掲げた今回は,看護学教育は「看護師の人間力」が鍵であり,その人間力を培うために必要なのが「教育力」であることから,看護学教育の質は教育を担う「教師力」で決まると定義され,3つの力を高めるための方策が議論された。


教師の力を育むために

シンポジウムのもよう
 シンポジウム「看護学教育の質は教師力」(座長=金沢大・泉キヨ子氏,北海道医療大・花岡真佐子氏)では,「教師力」を高めて教育の質の向上に取り組む各地からの声が寄せられた。野本ひさ氏は,勤務する愛媛大のFD(Faculty Development)の実施体制と成果について報告。同大では授業・教授法の改善,カリキュラムの改善,組織の整備・改革というミクロ・ミドル・マクロの3レベルでFDに取り組んでいる。ミクロレベルのFDには5段階のコース設定があり,修得的立場から指導的立場に至るまでの持続・発展的な能力開発が特徴。ミドルレベルでは学部学科の教育責任者養成研修,マクロレベルでは管理職対象研修なども行っている。学内のFD専門スタッフ(FDer)は教職員がほとんどで,FDの「自前主義」での実施も特色と言える。最近では学外での講座開設や,四国地区近隣の32校と連携での教員の能力向上の試みも始めている。成果としては,学生の授業評価の上昇,休・退学者数の減少などを示した。

 森美智子氏(日赤秋田看護大)は,PBL・チュートリアル方式の教育を語った。氏は,課題事例の作成がPBL・チュートリアル教育方法の核と分析。(1)現実に即している,(2)思考を刺激する内容,(3)批判的思考が可能,(4)自己主導的学習の促進,(5)知識の習得・応用が可能であること,の5点をポイントとした。さらに学生に積極的にかかわり,的確なサポートができるチューターの養成や,学生自身での詳細な振り返りとともに,チューター・授業に対する学生からの厳格な評価を行う重要性も強調。対人能力・問題解決能力が育ち,学生自身にもやりがい,達成感が大きい教育方式であると総括した。

臨床現場における教育を探る

 看護学実習における教育について解説したのは佐々木幾美氏(日赤看護大)。実習では教員には臨機応変な対応が求められるが,その際必要なのは,専門的知識・技術と,学生への理解,そして教育内容の編成能力と指導技術の3点だという。特に編成能力・指導技術は,患者の状態が変化し続ける場面で教育内容を把握する「教材化の力」が試されると氏は指摘。加えて,実習への不安,患者への気持ちなどを含めた学生の学習状況全体の理解により,学生個々の学習目標が明確化でき指導の出発点になると,事例を交えて語った。同大では新人教員の実習指導や実習FDワークショップなどを実施しており,氏は,施設単位で教員の専門的能力の成長を支えるコミュニティを作る重要性を示唆した。

 川畑いづみ氏(北大病院)は,臨床における新卒看護師教育について語った。7対1看護体制の導入後の新卒看護師には,与薬や排便援助など技術面や,コミュニケーション能力の未熟さが見受けられる。そのため同院では,看護部キャリア支援室を設置して新卒看護師教育担当者を配置。部署のみに教育を任せず,新卒看護師,部署の教育担当者との個別の意見交換や,看護実践の場への立ち会いにより,「気持ちが打ち明けられた」「客観的評価が参考になった」という声があるという。技術面では,支援室によるフォローアップ研修で手技の確認に努めている。氏は,臨床の場では新卒看護師支援のシステム化が大切とした上で,新人看護職員卒後研修事業を見据え,基礎教育と卒後教育の連携を指導者レベルで強め,養成過程から連動したキャリアパスを構築することを提案した。

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