風邪の仮定:仮に肺炎だとしたら?(齋藤中哉)
連載
2009.08.03
Primary CareとTertiary Careを結ぶ全方位研修
〔 第12回 〕
風邪の仮定:仮に肺炎だとしたら?
齋藤中哉(医師・医学教育コンサルタント)
前回は,急性副腎皮質機能不全の一態として,ステロイド減量中に生じた離脱症候群を取り上げました。今回も,入院経過中の「風邪」を診ましょう。
■症例
Wさんは61歳・男性。朗らかで活動的。限局型ウェゲナー肉芽腫症の治療のためC医療センターに入院中,「風邪」をひいた。ビニュエット(1)
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今後の経過で注意することは?
Wさんのウェゲナー肉芽腫症は,現在,耳・鼻と肺を中心とする限局型です。腎症状がありませんので,全身型ではありません。今後,壊死性肉芽腫性血管炎が全身に拡がった場合,重要臓器の梗塞や肺・脳・消化管の出血が生じるかもしれません。疾患活動性のモニターにPR-3ANCAが有用です。
予後決定因子として敗血症と呼吸不全が重要なので,両者の「交差点」となる肺病変に注意します。(1)聴診で乾性ラ音と胸部X線で線状網状影を認めていますから,間質性変化は既に存在し,今後,肺梗塞や肺出血を合併する可能性もあります。(2)ウェゲナー肉芽腫症は,他の膠原病に比較して,二次性肺炎(黄色ブドウ球菌など)を起こしやすく,それが原疾患を増悪させ悪循環となります。(3)Wさんは2剤併用療法を受けていますので,「ダブル・パンチ」の細胞性免疫抑制による日和見感染のリスクがあります。(4)シクロフォスファミドの副作用による間質性肺炎も忘れないようにしましょう。
ビニュエット(2)
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