医学界新聞

連載

2009.07.20

看護のアジェンダ
 看護・医療界の“いま”を見つめ直し,読み解き,
 未来に向けたアジェンダ(検討課題)を提示します。
〈第55回〉
実習への序章

井部俊子
聖路加看護大学学長


前回よりつづく

 まだ「看護師」のイメージとは程遠いにぎやかな学生の集団とエレベーターに乗り合わせた。「今日は予定を入れちゃったしー」と話し始めた。「何の予定?」と私が尋ねると「ナイトフレンドです」と言う。「楽しい?」と聞くと「はい,とっても」とすぐに答えが返ってきた。

友達に会いたいから行く「ナイトフレンド」

 「ナイトフレンド」は,本学の学生たちが聖路加国際病院の小児病棟で平日の夜に行っているボランティア活動であり,かれこれ10年以上続いている。「慢性期看護論」の授業の中で「兄弟の気持ち」を学んだ先輩が,何かできることはないだろうかと考えたことがきっかけだったと,学園ニュースNo.283(2008年10月)で学部3年の宇田川愛さんが紹介している。それによると,患児の兄弟は感染の可能性から病棟内に入ることができないため,患児が入院すると家か病院のロビーで待つことになる。また,入院中の患児はもっと自分に目を向けてほしいと思っているが,そのことを十分に表現できず苦しんでいること,兄弟との関係性にも変化を及ぼすことを授業で学んだ。そこで,そのような子どもたちの寂しさを軽減して,「普通に遊べる友達」になろう(なってもらおう)と始めた活動が「ナイトフレンド」であり,患児とその兄弟が対象となる。

 その活動のコンセプトは「友達」であり「友達に会いたいから行く」という気持ちをいちばんの基本と考えていると宇田川さんは強調する。「私たちは彼らの友達で,同時に彼らは私たちの友達です。だから,看護学生として何かをしてあげたいというのではなく,病気や怪我には何もできないけれど,ただの友達としてできることはたくさんあります」と書いている。彼女たちはスケジュールを組み,平日の夕方,1-2人で病棟に行き,絵本を読んだり,散歩をしたり,一緒に笑ったり,寝たり,ただそこにいるだけのときもある。夜に現れるナイトフレンドは,つきそっている親に休息をもたらし,不安定になりがちな患児の気持ちを支えてくれ,今では小児病棟の重要な一員となっている。登録メンバーはおよそ70人という。

触れ合いが楽しい「いちごフレンド」

 本学には「フレンド」と名づけられた学生たちのボランティア活動がもうひとつある。「いちごフレンド」がそれである。いちごフレンドは「ストロベリー」フレンドではない。彼女たちがボランティア活動を行っている病棟10Eと5Eの名称から105フレンドとなり,これを「イチ」「ゴ」と呼ぶことになったためだと学部3年の長澤裕美さんが紹介している。

 い...

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