血小板減少がみられた患者へのアプローチ(谷口俊文)
連載
2009.07.06
レジデントのための 【7回】血小板減少がみられた患者へのアプローチ 谷口俊文 |
(前回よりつづく)
救急外来でみられる血小板減少と入院中の患者でみる血小板減少では,鑑別が異なります。ここでは主に,入院患者での血小板減少症を中心に症例を見ていくこととします。
■Case
72歳の女性。深部静脈血栓症(Deep Vein Thrombosis:DVT)のためヘパリンの持続点滴にて治療中。入院第4日目には肺炎を併発し院内肺炎のためにバンコマイシンとセフェピムにて治療が開始された。300万あった血小板数が徐々に低下し,第7日目には8万/μLまで低下していた。白血球数は12000/μLでヘモグロビンは10.6g/dL。その他,腎機能,肝機能などは正常範囲内である。
Clinical Discussion
入院時に正常値を示していた血小板数が徐々に低下してきた。このような血小板減少に対するアプローチはどのようにすべきか。また,どのような緊急性があるのだろうか。血液疾患の鑑別診断も重要だが,ここでは,普段から何気なく投与している「薬剤」が原因となるかもしれない血小板減少に焦点をあてる。
マネジメントの基本
まずは血小板減少をみたときの基本的なワークアップからみていこう。図を参照していただきたい。基本は血算と血液塗抹標本を確認するところから始まる。これにより血小板の産生が落ちているのか,破壊が亢進しているのかの目安をつける。
| 図 血小板減少の基本的なワークアップ |
産生が落ちている場合には骨髄生検が必要な症例が多い。破壊が亢進している場合は免疫性か非免疫性かに区別される。
・免疫性……1次性:特発性血小板減少性紫斑病(Idiopathic Thrombocytopenic Purpura:ITP)など。2次性:感染症(HIV,C型肝炎など),膠原病(SLEなど),リンパ球増殖性疾患(CLL,リンパ腫),薬剤性など。
・非免疫性……播種性血管内凝固症候群(Disseminated Intravascular Coagulation:DIC),溶血性尿毒症症候群(Hemolytic-Uremic Syndrome:HUS),血栓性血小板減少性紫斑病(Thrombotic Thrombocytopenic Purpura:TTP),発作性夜間血色素尿症(Paroxysmal Nocturnal Hemoglobinuria:PNH)など。
そのほかには血小板の分布・貯留異常(splenic sequestrationなど脾機能亢進でみられる),低体温などの原因もあるが詳細は各自参照していただきたい。
ヘパリン起因性血小板減少症(Heparin-Induced Thrombocytopenia:HIT)
DVTの予防にヘパリンの皮下注射があまり使用されない日本ではその正確な頻度は不明であるが,ヘパリンロックなども含めてヘパリンの投与中の患者に血小板減少をみたらまずはHITを考える。診断が遅れ適切な対応を取れないと重大な合併症を来すからである。
HITはI型とII型に分類される。I型はヘパリンの直接的な影響により投与開始後1-4日後に血小板減少がみられるが,10万/μL以下になることはあまりなく,そのまま継続してヘパリンを投与し続けて観察する。問題はII型で,こちらはヘパリンとPlatelet Factor-4(PF4)に対する抗体が産生されることで血小板減少が起こる。診断はこのPF4に対する抗体(抗ヘパリンPF4複合体抗体)のELISA法による検出である。疑いが強い場合には繰り返す必要もある(血小板凝集能測定による診断もある)。II型HITはヘパリン開始後5-10日程度で発症するが,以前にヘパリン投与を受けたことがあり,...
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