抗真菌薬の考えかた―侵襲性深部真菌感染症での主な静注抗真菌薬(大野博司)
連載
2009.07.06
ジュニア・シニア
レジデントのための
日々の疑問に答える感染症入門セミナー
[ アドバンスト ]
〔 第4回 〕
抗真菌薬の考えかた
-侵襲性深部真菌感染症での主な静注抗真菌薬
大野博司(洛和会音羽病院ICU/CCU,
感染症科,腎臓内科,総合診療科,トラベルクリニック)
(前回からつづく)
今回は前回に引き続き,真菌感染症の治療薬である抗真菌薬の使いかたについて考えてみたいと思います。
■CASEケース(1) 亜急性の経過の発熱,頭痛で来院したHIV陽性の40歳男性。髄液から墨汁染色陽性,血清・髄液クリプトコッカス抗原陽性。 |
◆抗真菌薬の分類
侵襲性の深部真菌感染症の治療薬は,大きく表の4つに分かれます。今回はこれらの抗真菌薬の作用機序とスペクトラムを中心に取り上げます。
表 主な抗真菌薬 | |
| |
※2009年5月現在,ポサコナゾール,カスポファンギン,アニデュラファンギンは国内未承認 |
◆抗真菌薬の作用機序
真菌の細胞壁(図)は,外側からマンナンタンパク,βグルカン〔β(1,6)グルカンとβ(1,3)グルカン〕,細胞膜のリン脂質(ここにエルゴステロールがある)の3つから構成されます。
図 抗真菌薬の作用部位 |
細胞質内のエルゴステロール合成経路からエルゴステロールは作られ細胞膜に移動します。また,βグルカンは細胞膜に存在するグルカン合成酵素から作られます。
1.ポリエン系:真菌の細胞壁を構成するエルゴステロールに結合して膜を不安定化。
2.アゾール系:細胞質内エルゴステロール合成経路の合成酵素のひとつ,14αデメチラーゼを阻害。
3.エキノキャンディン系:細胞膜のグルカン合成酵素を阻害。
4.フルオロピリミジン系:核内のDNA合成を阻害。
◆抗真菌薬各論
前回の3系統の真菌の分類,(1)酵母(カンジダ,クリプトコッカス),(2)糸状菌〔接合菌,アスペルギルス,その他(スケドスポリウム,フサリウム)〕,(3)その他(ニューモシスチス,地域流行型真菌),を確認してください。日常臨床の現場では,上記抗真菌薬が特に酵母ならどれを,そして糸状菌ならどれをカバーしているかを中心に整理していくと見通しがよくなります。
1.ポリエン系抗真菌薬
アンホテリシンB(AmB-D) 非常に古くから存在する抗真菌薬ですが,今でも侵襲性深部真菌感染症の治療に重要です。殺菌的に作用し,接合菌も含めほぼすべての真菌をカバーします。しかし,腎機能障害,電解質異常(低K血症,低Mg血症,尿細管アシドーシス),投与時の悪寒・血圧低下の副作用が問題となります。そのため,副作用を少なくしたアンホテリシンB脂質製剤の開発へとつながりました。
アンホテリシンB脂質製剤 脂質製剤として,Amphotericin B lipid complex,Amphotericin B colloidal dispersion,Liposomal amphotericin Bがありますが,国内ではリポソーム型アンホテリシンB(L-AmB)のみ使用可能です。脂質製剤は,効果(抗真菌スペクトラム)に大差なく,副作用が少ないという特長がありますが,非常に高価です。
主なスペクトラム:酵母-カンジダ(C. lusitaniaeを除く),クリプトコッカス。糸状菌-アスペルギルス(A. terreusを除く),接合菌。その他-地域流行型真菌(コクシジオイデス,ヒストプラズマ,ブラストミセスなど)。
2.アゾール系抗真菌薬
アゾール系抗真菌薬は,肝臓のチトクロームP450で代謝されるため,多数の薬物相互作用があることには注意が必要です。使用の際は常に同時投与の薬剤をチェックする必要があります。
フルコナゾール 酵母のカンジダ(C. krusei,C. glabrataは除く),クリプトコッカスの治療に重要な抗真菌薬です。優れたBioavailability(90%)があるため状態が安定し次第,経口投与に変更可能です。副作用には,消化器症状や肝障害があります。
主なスペクトラム:酵母-カンジダ(C. glabrata,C. kruseiは除く),クリプトコッカス。糸状菌-なし。
イトラコナゾール フルコナゾールよりスペクトラムは広く,糸状菌に効果があります。現在は内用液と静注薬が入手可能になったため,使い勝手が良くなりました。内服の使い方として,(1)カプセル剤は胃酸の影響を受けるため食事と一緒に内服〔またはコーラなど胃内pHを下げた状態で内服,胃酸分泌抑制剤(PPI,H2...
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