A Patient's Story(3)早期発見の幸運(李 啓充)
連載
2009.06.01
〔連載〕続 アメリカ医療の光と影 第152回
A Patient's Story(3)
早期発見の幸運
李 啓充 医師/作家(在ボストン)前回までのあらすじ:2009年初め,私は,直腸カルチノイドと診断された。
米国にも日本の「忌み言葉」に相当する感覚はあり,たとえば「Cancer」と直接言及せずに,「C-word」と言ったりすることがある。米国人にとって,医師から「C-word」の診断を告げられることほど恐ろしい体験はないとされているが,前回も述べたように,私は直腸カルチノイドと診断されたことにさほどのショックを受けなかった。もっとも,正確に言うと,私の場合,診断は「Cancer」ではなく「carcinoid」(字義通り訳せば「癌もどき」),米国人がショックを受ける大文字の「C-word」ではなく,いわば,小文字の「c-word」を告げられたのだから,ショックが小さかったのも不思議はなかったのかもしれない。
いずれにせよ,私にとって,診断を告げられた際の心的リアクションのメインは,ショックではなく,「早期に発見されてよかった」という「喜び」だった。しかも,もし日本に住んでいたら早期に発見されることはなかったのではないかと思うと,一層,わが身の幸運のほどが痛感されたのだった。
日米の大腸癌検診プロトコール
日本の検診では見逃されていただろうと私が思わざるを得なかったのは,日米の大腸癌検診のプロトコールに大きな違いがあるからである。読者もご存じのように,日本では,大腸癌検診の一次スクリーニングとして便潜血検査(対象は40歳以上)が採用されている。便潜血が陽性だったときに初めて,「S状結腸内視鏡検査と注腸X線検査の併用,あるいは,大腸内視鏡検査」を行うのが一般的だが,内視鏡施行時にわが目でも確認したとおり,私のカルチノイドは正常粘膜に被覆されていたので,出血を来すような可能性は皆無と言ってよかった。もし,日本で検診を受けていたら,きっと「便潜血陰性」で「...
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