医学界新聞

連載

2009.06.15

〔連載〕続 アメリカ医療の光と影  第153回

A Patient's Story(4)
最小侵襲手術

李 啓充 医師/作家(在ボストン)


2832号よりつづく

前回までのあらすじ:2009年初め,私は,直腸カルチノイドと診断された。


 前回も述べたように,私の直腸カルチノイドは腫瘍径0.6cmと,非常に早期の段階で発見された。しかし,いくら腫瘍のサイズが小さいとはいっても,治療方針を決める前に,転移の有無を確認する必要があった。

小さな親切と大きな感激

 転移の有無を調べるために外科医が指示した検査は,胸・腹部CTと,ソマトスタチン・レセプター・シンチグラフィ(カルチノイドに特異的な画像検査)の二つだった。二つの検査を同時に済ませるために,朝に同位元素の注射,4時間後に1回目のシンチグラフィ撮影(2回目は翌日),夕方にCT撮影というスケジュールが組まれたが,「一日中病院にいなければならない」と思うと,私は,正直言ってうんざりした。

 私が日本にいた時代,放射性同位元素の注射をするのは医師の役目と決まっていたので,核医学科の技師が注射をすると知ったときは驚いたが,さらに驚いたのは,技師の「心優しさ」だった。注射をされながら,私が「今日は夕方のCTを済ませるまで一日中病院にいなければならない」とこぼしたところ,「それはかわいそうだ。午前中にCTが受けられるように交渉してあげよう」と,こちらが頼んだわけでもないのに,申し出てくれたのである。

 彼女の任務は放射性同位元素の注射であって,「患者の検査スケジュールに気配りする」などということは,その業務には含まれていない。「それ

この記事はログインすると全文を読むことができます。
医学書院IDをお持ちでない方は医学書院IDを取得(無料)ください。

開く

医学書院IDの登録設定により、
更新通知をメールで受け取れます。

医学界新聞公式SNS

  • Facebook