A Patient's Story(4)最小侵襲手術(李 啓充)
連載
2009.06.15
〔連載〕続 アメリカ医療の光と影 第153回
A Patient's Story(4)
最小侵襲手術
李 啓充 医師/作家(在ボストン)前回までのあらすじ:2009年初め,私は,直腸カルチノイドと診断された。
前回も述べたように,私の直腸カルチノイドは腫瘍径0.6cmと,非常に早期の段階で発見された。しかし,いくら腫瘍のサイズが小さいとはいっても,治療方針を決める前に,転移の有無を確認する必要があった。
小さな親切と大きな感激
転移の有無を調べるために外科医が指示した検査は,胸・腹部CTと,ソマトスタチン・レセプター・シンチグラフィ(カルチノイドに特異的な画像検査)の二つだった。二つの検査を同時に済ませるために,朝に同位元素の注射,4時間後に1回目のシンチグラフィ撮影(2回目は翌日),夕方にCT撮影というスケジュールが組まれたが,「一日中病院にいなければならない」と思うと,私は,正直言ってうんざりした。
私が日本にいた時代,放射性同位元素の注射をするのは医師の役目と決まっていたので,核医学科の技師が注射をすると知ったときは驚いたが,さらに驚いたのは,技師の「心優しさ」だった。注射をされながら,私が「今日は夕方のCTを済ませるまで一日中病院にいなければならない」とこぼしたところ,「それはかわいそうだ。午前中にCTが受けられるように交渉してあげよう」と,こちらが頼んだわけでもないのに,申し出てくれたのである。
彼女の任務は放射性同位元素の注射であって,「患者の検査スケジュールに気配りする」などということは,その業務には含まれていない。「それは大変ですね」と同情の言葉をかけてもらっただけでも,私は「親切な人だ」と思っていただろう。それを,「一日中病院に拘束されるのはかわいそうだ」と,自発的にスケジュール変更の交渉をすることを申し出てくれたのだから,私は感激した(患者が医療者の小さな親切にも大きく感激するのは洋の東西を問わない,と私は信じている)。私が受診したX病院は,ハーバード系病院の中でも患者に対する思いやりがあつい(別の病院で働くハーバードの教官も,いざ自分が...
この記事はログインすると全文を読むことができます。
医学書院IDをお持ちでない方は医学書院IDを取得(無料)ください。
いま話題の記事
-
医学界新聞プラス
[第1回]心エコーレポートの見方をざっくり教えてください
『循環器病棟の業務が全然わからないので、うし先生に聞いてみた。』より連載 2024.04.26
-
対談・座談会 2025.06.10
-
#SNS時代の医療機関サバイブ 鍵を握る広報戦略にどう向き合うべきか
鍵を握る広報戦略にどう向き合うべきか対談・座談会 2025.06.10
-
医学界新聞プラス
[第2回]アセトアミノフェン経口製剤(カロナールⓇ)は 空腹時に服薬することが可能か?
『医薬品情報のひきだし』より連載 2022.08.05
-
医学界新聞プラス
[第1回]ビタミンB1は救急外来でいつ,誰に,どれだけ投与するのか?
『救急外来,ここだけの話』より連載 2021.06.25
最新の記事
-
#SNS時代の医療機関サバイブ 鍵を握る広報戦略にどう向き合うべきか
鍵を握る広報戦略にどう向き合うべきか対談・座談会 2025.06.10
-
対談・座談会 2025.06.10
-
Sweet Memories
うまくいかない日々も,きっと未来につながっている寄稿 2025.06.10
-
寄稿 2025.06.10
-
複雑化する循環器疾患患者の精神的ケアに欠かせないサイコカーディオロジーの視点
寄稿 2025.06.10
開く
医学書院IDの登録設定により、
更新通知をメールで受け取れます。