医学界新聞

寄稿

2009.06.01

【寄稿】

米国の予防接種制度と
日本への導入が望まれるワクチン

齋藤 昭彦(国立成育医療センター 第一専門診療部感染症科医長)


 米国においては,予防接種スケジュールが常に更新され,推奨されるワクチン数は,増加の傾向にある。そのきっかけとなったのが,1988年のインフルエンザ菌b型(Hib)ワクチンの導入で,そのワクチンの劇的な効果・安全性が,その後の多くの新しいワクチンの導入に弾みをつけた。ここでは,現在の米国の予防接種スケジュールを紹介し,日本のスケジュールとの比較を試みたい。

 表1は,米国において0-6歳児に推奨されている予防接種スケジュールである。計10のワクチンが健康な小児に推奨されている。日本では,それぞれのワクチンが定期接種(予防接種法に定められ,費用はすべて地方自治体が負担)と任意接種(費用は自己負担,地方自治体によって助成あり)に分けられているが,米国では,すべてのワクチンが国から推奨されており,その費用負担は非常に限られたものである。ワクチン接種率を上げるためにも,患者の費用面での負担が少ないことは非常に重要である。

表1 米国において0-6歳児に推奨されている予防接種スケジュール

 米国と日本の予防接種スケジュールを比較すると,日本で定期接種,任意接種に定められていないものが,ロタウイルス,7価結合型肺炎球菌(23価多糖体ワクチンは任意接種),不活化ポリオ(経口ポリオは定期接種)の3つである。日本では任意接種として規定されているものが,B型肝炎,Hib,インフルエンザ,流行性耳下腺炎,水痘,A型肝炎の計6つの予防接種である。BCGは,米国では推奨されていない。一方で,2007年より,11-12歳児に新しい3つのワクチンの接種が開始された。それらは,百日咳予防の3種混合(Tdap),ヒトパピローマウイルス,髄膜炎菌である(表2)。

表2 米国において7-18歳に推奨されている予防接種スケジュール

 ここで示したように,米国では日本に比べ,推奨されているワクチンの数が圧倒的に多いわけであるが,米国でこの近年始まったワクチンの中で,今後日本にも導入が予想され,これらの疾患の予防に大きな役割を果たすと考えられるワクチンについて,簡単に解説を加えたいと思う。

7価結合型肺炎球菌ワクチン(7-valent pneumococcal conjugated vaccine:PCV7, Prevnar(R))
 肺炎球菌は,小児の菌血症の9割,髄膜炎の8割を占める起因菌である。PCV7は,ペニシリン耐性の確率が高く,小児において重症化しやすい4,6B,9V,14,18C,19F,23Fの計7つ...

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