医学界新聞

2009.03.23

第23回日本がん看護学会開催
「ゆいを深めるがん看護」をメインテーマに


 第23回日本がん看護学会が2009年2月7-8日の2日間にわたり,沖縄コンベンションセンター(沖縄県宜野湾市)を会場に開催された。今回のメインテーマは「ゆい(結い)を深めるがん看護」。多くの沖縄県民が持つ温かいホスピタリティマインドはよく知られるところだ。古くから大切にされてきた「結ぶ,つなぐ,助け合う」を意味する「ゆい」という独特の文化・考え方にそのルーツがある。

 すき間,切れ目のないがん医療体制の構築が進められているが,医療の地域格差は厳然と存在している。がん看護における「ゆい」,すなわちつながりや連携を構築するための方策が,島国・沖縄を舞台に幅広く話し合われた。


中森えり学術集会長
 今回の学術集会長,中森えり氏が副院長・看護部長を務める那覇市立病院(470床)は,昨年4月に全国の自治体立病院で初めて地方独立行政法人化(非公務員型)し,同年10月には7対1入院基本料を実現した。多くの自治体立病院の経営状態が逼迫するなか,近年は黒字確保を実現してきたという同院。独法化でさらに病院経営が柔軟化し,院内における判断・決定の迅速性が促進されたという。

 経営努力を続けている同院だが,沖縄は離島であり,解消できない地理的ハンディを抱える。この環境のなかでスタッフ確保や専門性を高める継続教育をいかに実現していけばよいのだろうか。このテーマについて中森氏は,会長講演「ゆい(結い)を深めるがん看護」のなかで,地域がん診療連携拠点病院の看護部長の立場から考察を行った。

「ゆいまーる」を社会や医療のつながりに生かす

 中森氏は沖縄に伝わる,労働交換を意味する「ゆいまーる」という言葉を紹介。産業構造の変化,都市化による社会の変容により農作業を媒介とする労働交換の形態は失われたが,助け合いの精神は沖縄に現存していると述べた。一方,わが国全体の精神構造が変化するなか,現代の日本人は一定の距離を保ちながらゆるやかにつながることを求めている,との指摘を行った。

 そのうえで,「ゆいまーる」の言葉が象徴する「相互扶助と平等の原則」をあらためて社会や医療のつながりの仕組みに意識的に生かすことはできないだろうかと呼びかけ,この仮説について看護の視点から考察を行った。

 まずがん看護の視点から,患者とのつながり方について「看護師は患者の意思決定の伴奏者である」と述べ,患者との距離を保ちながら必要なときにはいつでも手を差し伸べるという倫理的配慮に基づいたケアが求められているとした。同時に,よく知らない相手を許容し関係性を紡ぐ成熟した技量がプロフェッショナルに求められる能力であり,ひいては不確実な現代社会において生きる作法であると指摘した。

 看護界全体のつながりという視点からは,学会などの学術活動や臨床・研究・教育・行政が地域を越えて出合うことで新たなアイデアが...

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