肝腎要の風邪の勘
連載
2008.11.03
Primary CareとTertiary Careを結ぶ全方位研修
〔第3回〕
肝腎要の風邪の勘
齋藤中哉(医師・医学教育コンサルタント)
前回第2回は,劇症型心筋炎に学びました。「重症疾患は守備範囲外」と逃げ腰を決め込まないでくださいね。重症患者は,軽症患者に紛れて,しばしば立て続けに訪れます。医師が逃げれば,患者もその医師から逃げ出すでしょう。
■症例
Mさんは47歳・女性,家庭の主婦。「いつまでも風邪が抜けず,体がだるい」。5年前に健診で偶然指摘されたHBs抗原陽性の経過観察のため,A医院に3か月に1回,通院中。
ビニュエット(1)
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A医師に代わり,Mさんに診療方針を説明してください。
MさんのB型肝炎の状態を分析してみましょう。HBsAg(+)に加えてHBeAg(-)かつHBeAb(+)ですから,HBe抗体陽性のHBV無症候性キャリアですね。治療は必要ですか? ALT値が正常範囲内で,ウイルス量も少ないので,経過観察とします。Primary Care医を自認するA医師は次の3点に留意してきました。(1)血液検査による肝炎活動性の定期モニター。(2)劇症化の予知:HBV無症候性キャリアは,ウイルス増殖力を得た場合,劇症化の可能性があります。(3)肝細胞がんのスクリーニング:無症候性キャリアからでも肝細胞がんが発生するので,AFP,PIVKA-IIの測定および腹部超音波またはCT検査を定期に施行します。
Mさんの皮膚黄変の原因は何でしょうか? みかんの食べ過ぎはよくあるネタ(高カロチン血症)ですが,脂溶性であるカロチノイドは体表面では表皮角質層の細胞間脂質に選択的に沈着するため,i)粘膜と眼球結膜は黄変せず,ii)角質の豊富な手掌,足底,膝小僧,肘鉄砲で黄変が顕著となります。一方,黄疸は,総ビリルビン値2-3mg/dlを超えると認知されます。ビリルビンが弾性繊維に親和性を持つため,皮膚上皮より弾性線維の豊...
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