医学界新聞

寄稿

2008.11.03

【寄稿特集】

これが私の進む道!
6人のレジデントが語る6つの診療科の魅力


 現在,新臨床研修制度の第1期生が卒後5年目を迎えています。いま初期研修医の皆さんはさまざまな科をローテートする中で,それぞれの魅力や苦労を感じていることでしょう。また,研修を受けて当初のイメージと印象が変わった科もあるかもしれません。今後の進路について悩むことも多いのではないでしょうか。本紙では,臨床研修を経て各科で活躍する卒後4-5年目の若手医師6人にアンケート。どうしてその科を選んだのか,やりがいや大変なことは何か,何を学べばよいのかなどを聞いてみました。まだ将来のことなんて考えていないという医学生にも,ローテート中で進路を決めかねている初期研修医にも,ためになるアドバイスがいっぱいです。先輩たちからの熱いメッセージを受け取ってください。

こんなことを聞いてみました
(1)経歴
(2)診療科の紹介
(3)ここが聞きたい!
 a.この科をめざしたわけ
 b.やりがいと大変さ
 c.普段どんな勉強をしているか
(4)この科をめざす後輩へひと言

上山 伸也
酒井 崇
小山 泰明
前川 絢子
和田 幹生
尾崎 友彦


小児科

子どもの将来を守ることのできる喜び

上山 伸也(倉敷中央病院小児科シニアレジデント)


(1)2004年金沢大医学部卒。倉敷中央病院で初期研修の後,同院小児科にて後期研修中。

(2)子どもはなかなか訴えを口にできませんし,検査の閾値も成人に比べるとはるかに高いと思います。“子どもを診るのは難しい”といわれるゆえんだと思いますが,侵襲的な検査に頼らずに,病歴と身体所見で診断する“Art”の部分が多いのが小児科の特徴です。また,病気だけでなく健診や予防接種,育児相談なども守備範囲に入るため,まさに「子どもの全身を診る」という言葉が適切な診療科だと思います。

(3) a. なぜ小児科か,と聞かれると「わからない」というのが最も正確な気がします。ひと言で「これが理由です」と言えるものはありません。

 自分自身,子どもの頃入院したことがあり,そのときの主治医の先生から退院祝いにもらったペンライトが僕を医師という職業に目を向けさせ,小児科を選択させたのだと思いますが,それは単なるきっかけに過ぎないようにも思います。未来ある子どもの将来を守る小児科医の仕事はとてもやりがいがあって日々充実しており,この仕事を選んで本当によかったと思っています。

b. 大変だと感じたことは一度もありません。採血,点滴はすべて自分で行わなければなりませんし,むちむちの手足に点滴を入れるのに1時間かかったり,CT,MRIを撮ろうものなら鎮静のために蘇生の準備をしてドルミカムを静注したり……などなど,仕事は本当に多岐にわたって多忙です。

 また,近年親の要望も強くなってきており,その期待に応えるのは容易ではありません。しかし,人工呼吸管理を要した喘息の子,歩くことすらままならなかったJIA(若年性特発性関節炎)の子,白血病で長い闘病生活を送った子,500gで生まれた超低出生体重児……そんな子どもたちが元気になった姿を外来で見ると,本当に幸せな気持ちになります。何の罪もない子どもが病気で苦しんでいる。それを助けることができるのは小児科医ならではの特権です。

 また学問としても多種多様の疾患を診ることができ,子どもを診るという意味ではspecialistであり,全身を診るという意味ではgeneralistです。この2つを兼ね備えた診療科は他にないのではないでしょうか。

c. やはり最も多くのことを教えてくれるのは患者さんです。患者さん一人ひとりを丁寧に診察することがいちばんの勉強だと思います。その患者さんの疾患についてstandardと呼ばれる教科書で概要をつかみ,一流雑誌のreviewやUpToDate,DynaMedでさらに知識を広げるようにしています。さらに細かく最新の文献を読む必要があれば,コクランやPubmedなどで検索して読むようにしています。

 独学だけだと長続きしません。おすすめの勉強法は研修医や他の後期研修医に教えることです。完全に自分の手のうちに入っていない知識は教えることができませんし,また質問を受けることで自分の知識の曖昧さが浮かび上がってきます。質問されて答えられなかったことを勉強して,また教える,という作業を繰り返すことでさらに勉強になると思います。“See one, do one, teach one”ですね。

(4)小児科は“忙しいし,子どもはうまく病状を話してくれないし,かといって親と話をするのは大変だし……”と敬遠されがちですが,ぐったりしていて本当にしんどそうだった子どもが元気になって退院する姿を見るのは,本当に心からうれしくなるものです。

 子どもの将来を守ることができるのは,他科では感じることのできない,とても大きな喜びだと思います。


救急医療

日本の救急医療は若手が変える!!

小山 泰明(国立成育医療センター・手術集中治療部レジデント,聖マリアンナ医科大学・救急医学教室後期研修医)


(1)2004年筑波大医学専門学群卒。総合病院土浦協同病院で初期研修の後,聖マリアンナ医大救急医学教室に入局し後期研修中(同大病院にて3次救急・集中治療・ERの研修,分院である川崎市立多摩病院でER・総合内科・循環器内科・脳神経外科の研修の後,現在国立成育医療センターにて小児の3次救急・ER・集中治療・麻酔の研修中)。

(2)救急・ER:「救急は医の原点である!!」

 24時間どの時間どの年齢でも起こりうるのが病であり,時間は“待った”をしてくれません。適切な初期対応をしなければ,手遅れになる場合もあります。苦しんでいるどんな患者にでも適切に初期対応できるのが救急です。まさしく医師の原点,あるべき姿だと思います。特に聖マリアンナは大学病院というよりも民間の大病院として,3次の救命救急センターと1-2次の夜間急患センターを統合し,日本屈指のERとして運用されています。

集中治療

 集中治療は救急での重症患者対応の続きに存在するものです。重症患者が回復して社会復帰できることが最大の使命であり,救急とは切っても切れない関係です。

(3) a. 大学卒業後,多くの症例を経験したいと思い,救急搬送数が年間9000件台と多い土浦協同病院で初期研修をしていました。そこで見た現場は,「こんなに患者がいるのか!?」と驚くほどの,苦しんでいる患者でいっぱいの救急外来でした。診ても診てもカルテがたまっていく……。でも同時にこうも思いました。「周辺の病院で診てもらえず助けを求めている患者さんがこんなにいる。自分がやらなきゃ誰がやるんだ!!」。入院患者の大多数は救急外来からの入院です。救急外来での対応が後手に回り,状況悪化してしまったときもあり,この症例はPCPS(経皮的心肺補助装置)をすぐ導入できたら助かったかも……と悔しい思いもしました。救急専門の重要性を認識しながら日々研修していくなかで,生涯医師として働くには,救急・集中治療ができるようにならなければと思い,救急の道をめざすようになっていきました。

b. 夜間に患者が多いため,救急医は皆「夜の男(女)」になっていきます(笑)。やりがいは,重症患者を安定化させて一命を取り留めたり,軽症患者の中から重症患者を見つけ,適切な初期対応をして手遅れになるのを防ぐことだと思います。現在,専門医が当直していると自分の専門外の患者は断ってしまうことも多く,そのために「たらい回し」になってしまう患者さんがたくさんいます。そんななかで自分が受け入れると「ありがとうございます」と言われます。忙しく大変ではありますが,そのぶんアドレナリンも出て達成感もありますし,感謝の言葉や元気になって帰る患者さんの笑顔が見られると喜びを感じます。

c. まず多くの患者さんを診ることです。日々疑問に思ったことを調べながら知識や技術を深めて講習会などにも積極的に参加し自己研鑽し,患者さんに還元していきます。

(4)今は皆さん,上級医のもとで当直をしていることでしょう。しかし3年目以降は独り立ちです。独りでの当直がどれほどのストレスか。半年でも1年でもかまいません,他科に属していてもかまいません。救急・ER・集中治療を今一度しっかりと勉強してほしいと思います。“読んだことがあるだけ”と“見たこと・やったことがある”は明らかに違います! 救急医療の“崩壊”が叫ばれる今こそ,日本の救急医療は若手が変えてみせる! 今の救急に必要なのは,若い皆さんのやる気です! 一人でも多くの患者さんに笑顔で帰っていただけるように……。

◆中央の「ER UP DATE」のチェロキーを着ているのが私です。いろいろな講習会のバッチも付けています。

 左側は,聖マリアンナ医科大学救急医学教室の先輩であり小児救急を専門とされている境野高資先生,右側は成育医療センター救急診療科で小児搬送なども手掛けている辻聡先生です。境野先生にも辻先生にも日ごろからお世話になっております。よく真面目な雑談をしています(笑)。


家庭医療

専門医は縦糸。それをつなぐ横糸になりたい

和田 幹生(社団法人地域医療振興協会シニアレジデント/市立伊東市民病院)


(1)2004年京府医大卒。京都第一赤十字病院で初期研修後,06年より社団法人地域医療振興協会(以下...

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