ウガンダで考える「ジェネラリスト」(斎藤浩輝)
寄稿
2008.08.04
【投稿】
ウガンダで考える「ジェネラリスト」
斎藤 浩輝(JICA青年海外協力隊員)
私は日本で約2年半医師としての研修を終えた後,2008年3月からJICA青年海外協力隊のエイズ対策を目的としてウガンダに派遣されています。医師としての経験はまだまだ不十分ですが,皆さまの日々の医療活動を改めて考える機会となることを願い,こちらの状況を報告させていただきます。
衝撃の帝王切開も「これが日常」
私がウガンダに来て約3か月(ウガンダがどこか,アフリカ大陸の赤道直下の国をたどっていけば見つかります),ケニア国境に接し,人口26万人のブシアという県に来てからは約1か月がたったところです。このブシア県の中心から赤土の凸凹道を通って10キロほど南に下るとマサフという村があり,そこの県病院に派遣されています。
今働いているマサフ病院は日本の援助で外来・入院病棟が増設され,5月末にヘルスセンターから病院として格上げされました。稼働病床数は実質50床前後だと思います。設備としては,ハエが飛び交い固形石けんで手洗いをする手術室,マラリアチェックや血液型,Hb,一般検尿・検便ができる程度の検査室といったところでしょうか。その病院に医師は一人,2005年大学卒の若手ドクター,フランシスだけです。
ここで最初に遭遇した衝撃の患者は,帝王切開の妊婦/児。近くにある病院の医師から携帯電話で応援を頼まれたフランシスに連れられ,その病院を訪れたときのことでした。妊婦が歩いて手術室に入室してきたと思ったら,麻酔はケタミン等で静脈麻酔。麻酔下の妊婦は鼻カニューレから2Lの酸素を供給されているだけでモニターもなく,時々看護師が胸を聴診するのみです。手術適応と判断されるまでの妊婦/児の状況は分かりませんが,フランシスの手で取り上げられた児は泣きません。また,その児に誰が対応するのかあらかじめ決まっていたとは考えづらく,助産師なのか手術室の手伝いなのか,女性スタッフ一人しか手が空いていません。目の前には呼吸が止まったままで心拍数60回以下の新生児……。
結果的に児は赤みをとりもどしたのでひと安心しましたが,こんな状況でもフランシスは何ごともなかったかのような表情で手術を終え,スタッフもにこにこ笑顔。「これが日常」という感じが伝わってきて驚きでした。
その他,マラリアによる貧血で真っ青の小児,HIVと結核の感染合併患者など,日本の市中病院で研修していたときとはまったく違う人々が毎日病院を訪れてきます。子どもの発熱といえば,鼻風邪以上にマラリアか下痢・嘔吐症,来...
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