医学界新聞

2008.06.16



社会で機能するProfessionalism
第108回日本外科学会開催


 第108回日本外科学会が5月15-17日,兼松隆之会長(長崎大)のもと,「外科学の新たな開港――社会で機能するProfessionalismの追求」をテーマに,長崎ブリックホール(長崎市)他において開催された。鎖国時,諸外国との唯一の窓口として,西洋医学を学び医学の向上をめざす若者たちが集い腕を競った長崎が会場となった今回は,「医学生・研修医による“外科”で学んだことの発表セッション」や,市民向けに開催された「キッズ外科体験セミナー」「『21世紀の予言』アイデアコンクール」など,外科医不足が叫ばれるなかでいかに外科に興味をもってもらうか趣向を凝らしたプログラムが目を引いた。


アカデミック・マインドの醸成を

 会長講演「外科学と科学技術の幸福な結婚がもたらす2050年外科への希望」では,ひらめきと洞察力を発揮した20世紀前半の外科医の業績を紹介。それに対し,20世紀後半における外科の進歩として,人工心肺,臓器移植などを挙げ,これらは科学技術の進歩から生まれたと述べた。

 その上で,わが国は近年「科学技術創造立国」をスローガンにしており,科学技術基本計画による公的研究費は年々増加傾向にあるものの,その約80%は民間企業からの資金であり,基礎研究よりもすぐ結果が出る研究に偏りがちであると指摘した。さらにわが国の人口減少や理系離れ,インド・中国の台頭など昨今の厳しい現状を指摘し,外科医自身のアカデミック・マインドの醸成が必要だとした。

 また,近年研究開発が進んでいるロボットや医療機器の改良などに触れ,外科学が常に革新的な素材,科学技術,新しい手技に後押しされ,進歩してきたことを強調。今後もリーダーシップを発揮し,科学技術と密な関係を保ち,基礎研究と臨床研究を融合させながら,社会の声にも耳を傾けて発展を図ることが重要だと述べた。

災害でいかに力を発揮するか

 ミャンマーのハリケーンや四川大地震など自然災害が相次ぐなか,災害発生時に外科医はどのような力を発揮すべきか,そしてその経験をどう生かすかが議論された国際シンポジウム「世界のテロ・大災害の経験に学ぶ」(司会=慶大・相川直樹氏,九大・前原喜彦氏)では,はじめにN.E.McSwain, Jr氏(Tulane大)が,2005年8月にニューオリンズに甚大な被害をもたらしたハリケーンカトリーナから得た教訓を語った。カトリーナの威力は当初の予想をはるかに超えるものであり,風,雨,洪水により街の80%が冠水。さらに,その水がしばらく引かなかったため,甚大な被害が出た。これについてMcSwain氏は,避難の準備や災害訓練が十分でなかったこと,長期的な孤立に対する計画がなかったこと,行政機関のコミュニケーションと救援がうまく機能しなかったことなどが,状況悪化の要因であると...

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