呼吸器疾患(COPD)症例に対する栄養管理(大村健二・加藤章信・大谷順・岡田晋吾)
連載
2008.06.09
レジデントのための 栄 養 塾
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第11回 | 呼吸器疾患(COPD)症例に対する栄養管理 |
今月の講師= 岡田 晋吾 |
(前回よりつづく)
今回は呼吸器疾患,特にCOPD(慢性閉塞性肺疾患)の栄養管理について解説します。COPDの患者数や死亡率はこの10年ほどで増加しています。最近の疫学的調査では,40歳以上の日本人の有病率は8.5%,約530万人が罹患していると推測されています。COPD患者は低栄養状態を示すことが多く,適切な栄養管理を行わないことで呼吸不全,呼吸器感染症を起こし致命的になることが考えられます。今後患者数のますますの増加が予測されており,早期からの栄養管理が必要とされる疾患です。
【Clinical Pearl】
・COPD患者は近年増加しており,約530万人が罹患している。
・COPD患者の約7割に%標準体重(% ideal body weight:%IBW)が90%未満の体重減少が認められる。
・COPD患者では,栄養管理を適切に行わないと呼吸不全への進展や呼吸器感染症を引き起こす。
【練習問題】74歳の男性。20歳のころより喫煙。65歳時に呼吸困難が出現し呼吸器科受診。以来薬物療法を続けるも,栄養指導,呼吸リハビリテーションなどは受けていなかった。最近呼吸困難が強くなり,診察を受け入院となった。 主病名:肺気腫 身体所見:身長160cm,体重38kg,BMI14.8,血圧108/64mmHg,標準体重(IBW)56.3kg,%IBW67.4%,TSF(上腕三頭筋皮下脂肪厚)8.6mm,AMC(上腕筋囲)15.8cm 検査所見:WBC4560/mm3,Hb12.9g/dL,Plt24×103/mm3,TP7.0g/dL,Alb4.0g/dL,AST38IU/L,ALT35IU/L,PaCO2 60mmHg |
Q 血清アルブミン値は正常ですが,どのような栄養状態でしょうか?
A マラスムス型の栄養障害です。
栄養障害にはマラスムス型とクワシオルコル型の2つがあります。マラスムス型はエネルギーと蛋白質の両方が足りない状態です。この場合には筋蛋白の崩壊が起こり,血清アルブミン値は正常もしくは軽度の低下が多いとされています。これに脱水状態が加わると,血清アルブミン値は高値を示します。一方のクワシオルコル型は主に蛋白質が足りない状態であり,血清アルブミン値は低値を示すことが多いとされます。
COPD患者では,血清アルブミン値は正常もしくは軽度の低下を示すことが多いとされています。健常人と比べて身体計測値では体重減少を示すことが多く,体成分分析ではfat mass(脂肪量;FM),fat free mass(除脂肪量;FFM)の低下が認められます。
%標準体重については,90%未満の低栄養状態がCOPD患者の約7割に見られます。特に今回の症例のようにCOPDの原疾患が肺気腫の場合には,%IBWの低下が多くなります。この患者も%IBWが67%と低下しています。「JARD2001」の平均値と比較すると,%AMCは67.8%,%TSFは80%と特に筋肉量の減少が著しいのが分かります。栄養不良はマラスムス型と考えられるでしょう。
マラスムス型の栄養不良を示すことが多いCOPD患者の栄養評価においては,血清アルブミン値よりも身体計測値が重要視されます(表1)。
表1 COPD症例において推奨される栄養評価項目 『COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン』から | ||||||
| ||||||
IBW:80≦%IBW<90:軽度低下,70≦%IBW<80中等度低下,%IBW<70:高度低下,BMI:低体重<18.5,標準体重18.5-24.9,体重過多25.0-29.9,FM:脂肪量 |
【Check】
・COPD患者の栄養評価には,血清アルブミン値よりも身体計測値が有用である。
・体重減少を認める患者は呼吸不全化や累積死亡率が高い。体重減少(%IBW,BMIの低下)は気流制限とは独立した予後因子とされる。
Q どのような栄養管理を行えばよいですか?
A 十分なカロリーを投与しなければいけません。
COPD患者では,安定期においても安静時エネルギー消費量(resting energy expenditure:REE)が増大しています。これは,呼吸筋酸素消費量の増大から代謝亢進状態になっているためと考えられます。十分なエネルギーを投与しないと,エネルギー源として筋蛋白も利用され呼吸筋力や換気効率の低下を招き,必要エネルギー量が増加するという悪循環に陥ることになります。COPDのガイドライン1)では,REEの1.5倍以上のエネルギーが必要とされ,高エネルギー,高蛋白食が必要となります。%IBWが80%以下の患者では,積極的な栄養介入が必須とされます。
今回の症例では,%IBWが70%以下であり,十分なエネルギー摂取量を確保しなければなりません。Harris-Benedictの式から基礎代謝量(BEE)は...
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