医学界新聞

連載

2008.02.11



連載
臨床医学航海術

第25回

  医学生へのアドバイス(9)

田中和豊(済生会福岡総合病院臨床教育部部長)


前回よりつづく

 臨床医学は大きな海に例えることができる。その海を航海することは至難の業である。吹きすさぶ嵐,荒れ狂う波,轟く雷……その航路は決して穏やかではない。そしてさらに現在この大海原には大きな変革が起こっている。この連載では,現在この大海原に起こっている変革を解説し,それに対して医学生や研修医はどのような準備をすれば,より安全に臨床医学の大海を航海できるのかを示したい。


 読解力に関連して,今回は学術誌を読むことについて考えてみたい。

人間としての基礎的技能
(1)読解力――読む
(2)記述力――書く
(3)聴覚理解力――聞く
(4)言語発表力――話す,プレゼンテーション力
(5)論理的思考能力――考える
(6)英語力
(7)体力
(8)芸術的感性――感じる
(9)コンピュータ力
(10)生活力
(11)心

学術誌
 “The New England Journal of Medicine(以下,NEJM)”を購読すると毎週1冊ずつ学術誌が送られてくる。また,学会に所属すると毎月1回学会誌が送られてくる。これらの学術誌や学会誌にすべて目を通している人はどれくらいいるであろうか?

 これらの学術誌や学会誌は少し読まないと大量にたまる。本棚に置いておくスペースなどとてもない。しかし,読んでいないのに捨てる気にもなれない。仕方がないから机の横に平積みにする。しかし,このたまった学術誌と学会誌はいつかどうにかしなければならない。古いものから一気に読むか,それとも,一気に捨てるか? このまま積んでおいたら天井まで届いてしまうかもしれない。

 仕方がない。一気に速読して読むか! 細かい内容などどうでもよい。書いてある内容だけわかればよいのだ。だから,要旨しか読まない論文もある。しかし,論文の中には重要なものもあるし,また,興味深い論文もある。これらの論文をどのようにして保存しておけばよいであろうか? 保存する論文をいちいちコピーしていたらとても時間がない。それに,コピーをしてもカラー印刷は白黒になってしまう。そんなとき,筆者はアメリカ留学時代に上司のAttending doctorが論文を学術誌からカッター・ナイフで切り取ってファイルに入れて保存していたのを思い出した。自分もこうやって論文を保存しよう!

 そこで,保存する論文を学術誌からカッター・ナイフで切り取り,それにパンチ穴を開けて直接ファイルして論文を保存することにした。こうすれば,カラー印刷もそのまま保存できる。

 しかし,この方法は実際やってみると結構大変であった。まず最初に必要なページをカッター・ナイフでまっすぐに切り取るという作業がなかなか難しい。まっすぐいかず斜めになってしまうこともあった。最後までカッター・ナイフで切りとれないときには最後の部分は引きちぎった。保存する論文が2つ連続して並んでいると,最初の論文の最後のページの参考文献の部分は裏面が2番目の論文の表紙になるので,コピーしなければならなかった。必要なページをやっと切り取ってもこれで終わりではなかった。それから,その論文にパンチで穴を開けて,分類科別にファイルの所定の位置に綴じるのである。このように論文を切り取り整理しファイルしておいたおかげで,必要な論文をすぐに取り出せたこともあるにはあった。しかし,切り取ってファイルした論文の大部分はほとんど二度と読むことはなかった。

 この愚直な努力の成果で,床から高く平積みされていた学術誌や学会誌はほとんどなくなった。送られてきた学術誌や学会誌は次の号が来るまでには目を通し必要な論文は切り...

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