BMB(日本生化学会・日本分子生物学会合同大会)2007開催
新たな研究の発展に向けた取り組み
2008.02.04
新たな研究の発展に向けた取り組み
BMB(日本生化学会・日本分子生物学会合同大会)2007開催
さる12月11-15日,パシフィコ横浜(横浜市)ほかにて,第80回日本生化学会(会頭=東大・清水孝雄氏),第30回日本分子生物学会(年会長=東大医科研・山本雅氏)合同大会,BMB2007が開催された。両学会は生命科学分野においてカバーする領域が多く重なっているが,相互に特徴的な研究領域を有するため,合同開催による両学会員の交流が新たな研究の発展,共同研究への足がかりとして期待される。本紙では,メタボリックシンドロームに関するシンポジウムを取り上げる。
シンポジウム「メタボリックシンドローム――臓器連関と分子メカニズム」(座長=東大・門脇孝氏,東大・宮崎徹氏)では,中枢や膵β細胞,血管・マクロファージ,脂肪組織の代謝制御における役割と,それらの連関に携わる神経系や内分泌ホルモン,アディポカインなどの生理的意義,その機構の破綻による病態の生化学的・分子生物学的メカニズムに関する最新の知見が紹介された。
はじめに中里雅光氏(宮崎大)が「消化管と脳を結ぶペプチド性摂食調節機構」と題し口演。摂食は脳と消化管,脂肪組織で産生される摂食亢進物質と抑制物質の相互作用により,複雑かつ巧妙に調節されているが,末梢で産生される摂食亢進シグナル分子は胃体部で産生されるグレリンのみである。グレリンは視床下部の摂食抑制ニューロンへの抑制系シナプス形成を増加し,興奮系シナプス形成を抑制して,摂食調節の神経回路網の可塑性にも関与している。腸管で産生される摂食抑制ペプチドコレシストキニン,ペプチドYYとGLP-1は,迷走神経求心路の電気活動を興奮させ,延髄に情報を伝達していることなどについて解説し,「消化管ペプチドのメタボリックシンドロームへの臨床応用も現実化が近づいている」と述べた。
シグナル伝達による調節
木戸良明氏(神戸大)は膵β細胞増殖の障害が起こるメカニズムについて発表。膵β細胞の障害は,1型糖尿病のみならず2型糖尿病でもその発症進展に大きく関与しており,氏はこれまでにPDK1(3-Phosphoinositide-dependent kinase1)の膵β細胞特異的遺伝子ノックアウトマウスを作製し,インスリン/インスリン様成長因子受容体からの膵β細胞量調節シグナルが主にPDK1を介して伝達することを報告している。
今回,PDK1の下流に位置し,mTORの活性制御に関わっているTSC2(Tuberous sclerosis2)の膵β細胞特異的遺伝子ノックアウトマウスを作製し,mTOR活性の亢進が細胞成長を促進することを明らかにした。その一方で,恒常的なmTOR活性の亢進がインスリンシグナルを減弱させるネガティブ・フィードバック機構を介し,膵β細胞のアポトーシスを引き起こし...
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