医学界新聞

2007.11.26

 

MEDICAL LIBRARY 書評・新刊案内


ナースのための管理指標 MaIN

井部 俊子 監修

《評 者》草刈 淳子(前・愛知県立看護大学長)

皆が使えて改善点が目にみえる管理指標

 看護サービスを提供する場と看護の責任は,2006年の診療報酬および医療関連法の一連の改正に伴い急激に拡大した。これにより医療における看護職の管理能力がこれまで以上に求められることになる。こうした中『ナースのための管理指標 MaIN』が出版された。

 まず,「ナースのための」という表題の意味するところに注目したい。「看護管理は管理者以上がするもの」といった考え方が未だに色濃く残っている医療現場への最初のメッセージである。その管理指標Management Index for NursesをMaINと略し,英語読みのメインではなくドイツ語の「私の」に通じるマインと読ませるのは,ややムリな気もするが,その意図するところが象徴されているのは理解できる。教育の場で常々指摘してきている点である。

 ナースはみな一生懸命努力するのだが,その効果を目に見えるものにするのは難しい。私は,看護管理は「ケアする人のケア」であり,目標達成と問題解決は同じで,それができなければ管理にならない! と強調しているが,それができないで苦しんでいるナースが多いのが現状である。その意味で,この指標が,施設の規模によらずに日常業務の中で手軽に自己評価でき,しかも改善点が目に見える形で具体的に示される点で,現場のナースにとっては何よりの贈り物といえよう。

 ただし,この指標が活きるためには,まずは組織成員が,合意の上で共通目標を「意思決定」できる基礎的能力が必要である。回答上の注意事項として「計画は目標を達成するための具体的で評価可能なものでなければなりません」と指摘されている。しかし,現実には,計画以前に「問題」が何かが把握できないのが共通の弱点であることを,永年の管理者研修や大学院教育を通して痛感している。まずは,ものの見方・考え方をしっかり学ぶことだ。事象は見れば見えるのか,どこから何を見るのか,見たものをどういう規準で区分し,それをどのような共通用語で表すのか。一人ひとりの主体的・創造的な改革意識が生まれればしめたものだ。

 計画,動機づけ,教育,コミュニケーション,組織,安全の6項目中の「教育」には,ぜひ「学習」も入れたい。最後の「安全」は,行動変容の成果として得られるものであろう。何時までに達成させるのか期限をつけることも重要な点である。バーナードの組織活性化の3要素:(1)共通目的,(2)コミュニケーション,(3)協働意欲,あるいは教育における(1)情報提供,(2)動機づけ,(3)行動変容,等これまで私自身が講義で伝えてきた内容に通じるのみならず,確実な管理行動を創り出すエネルギーが沸く待望の書である。

 現場のナースたちの実践を通して,この指標がさらに洗練されることが期待される。

A5変・頁128 定価1,890円(税5%込)医学書院ISBN978-4-260-00517-3


ナレッジマネジメント
創造的な看護管理のための12章

大串 正樹 著

《評 者》森田 孝子(上武大教授・看護学部)

臨床で直面する壁を乗り超える看護管理実践家の道標

 今,私が看護管理者に推薦している図書の1つが,大串正樹著『ナレッジマネジメント 創造的な看護管理のための12章』である。本書は,知の研究者が支持的で客観的視座と批判的視点から看護と看護管理を間近で見つめてきた成果をまとめたもので,看護の知を理解しやすく解説している。看護管理者あるいは管理的側面を実施する看護者が,困惑した時に関連項目ページを開くと解決に向けたヒントや学習の方向性に気づかされる一冊である。

 看護者は日々,暗黙知と形式知の2つの知識形態をミックス稼働させて看護を提供している。しかし,文字や図表で言表が可能な形式知よりもむしろ言表不可能な暗黙知のほうが比重は大きいのが看護現場の実態である。それは看護がさまざまな人を対象とし,その場でその時に生産し消費されるという特性ゆえである。その看護管理環境・状況は常に流動しており,管理者には現実に即した実践的判断を倫理観に基づいて...

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