• HOME
  • 書籍
  • ナースのための管理指標 MaIN


ナースのための管理指標 MaIN

もっと見る

看護管理者のための自己評価ツール。病院の規模によらず、簡便に使えることを目指して開発されたMaIN(マイン)の解説書。業務効率と看護の質、個人と集団という対立機軸を乗り越えて良いマネジメントを実践するには、どのような点に注意すべきかが設問に答えていくだけで自ずと明らかになる。わが国の実情を踏まえ独自に開発された看護管理者向けミニマム・データ・セット。
監修 井部 俊子
発行 2007年08月判型:A5変頁:128
ISBN 978-4-260-00517-3
定価 1,980円 (本体1,800円+税)
  • 販売終了

お近くの取り扱い書店を探す

  • 更新情報はありません。
    お気に入り商品に追加すると、この商品の更新情報や関連情報などをマイページでお知らせいたします。

  • 序文
  • 目次
  • 書評

開く

はじめに
井部 俊子

 わが国では,老人病院,老人保健施設,特別養護老人ホームなどの長期ケア施設において,患者・入居者のケアプランを策定するためのツールとしてMDS(Minimum Data Set)やRAPs(Resident Assessment Protocols)が普及している。こうした標準化されたデータ群は,アセスメント指標となりケアプランを導き,客観的な評価を可能にするものである。
 筆者はMDSは,看護実践や看護管理においても有用であると考え続けてきた。筆者の看護管理におけるミニマムデータセット(MDS)への関心は,今から10年以上前にさかのぼる。当時,看護管理者として勤務していた私は,1995年1月から1年間に発生した転倒・転落事故について,ある研究会で発表する機会があった。

転倒が85件,転落が33件であり,転倒の発生場所は病室内が67件,トイレ10件,バスルーム42件であった。年齢別では,70-79歳が44人,80-89歳が32人,60-69歳が22人となっており,入院後3日以内が24%を占めていた。事故発生時間帯件数では,午前8時が少なく,多いのは午前3時,10時,午後6時,11時に山があった。看護度別では「B-2」が最も高い割合であった。

 この作業を通して痛感したことは,「こうしたデータの蓄積がなく,他と比較できない」ということであった。このときから,看護管理におけるMDSの全国的な整備が必要であると考えていたのである。
 時が流れ,平成16~18年度 科学研究費補助金を得て,「医療機関における看護サービスの提供と質の保証のためのデータベース開発に関する研究(研究代表者:井部俊子)」において,看護管理者が把握すべきMDSを開発し,信頼性・妥当性の検討を行うとともに,看護管理者の特性などの実態を調査することができた。看護管理者として把握すべき基本的情報を看護管理ミニマムデータセット(Nursing Management Minimum Data Set:NMMDS-j Ver.1.1)として試用していただいた多くの看護管理者の支持を得た。看護サービスの提供と質の保証に多大な貢献をしている看護管理者が,(1)計画,(2)動機付け,(3)教育,(4)コミュニケーション,(5)組織,(6)安全の6つのカテゴリに基づく看護管理MDSによって自己評価を実施し,マネジメント能力を高めていくことが期待される。
 このたび本書の出版にあたり,「NMMDS-j Ver.1.1」の名称を,「MaIN Ver.1.2:Management Index for Nurses Ver.1.2」と改めた。通称MaIN(マイン)には,「私のもの(mine=マイン)」という意味も含まれている。
 MaINによる自己評価を行うことにより,看護管理者は,実践の中ですでに十分に行っていたこと,行ったつもりではいたけれど実際にどうなのか確認してこなかったこと,また,これまで気がつかなかったことなどに気づく。このようにMaINの結果は,これまでの実践の中で,見落としがちだった重要な要素に気がつき,今後の改善策を考えるきっかけとすることができる。
 つまり,MaINを使った自己評価によって自らの看護管理における変化を感じるとともに,抱えていた課題が解決されたかどうか,新たな課題はないか,等を確認することができる。看護管理者同士がお互いの実践をMaINの指標という共通の言語を使って話し合うことは,看護管理実践の改善のためのヒントや,実践可能な看護管理の工夫を共有するという点で推奨できる。
 MaINの設問および選択肢の中には,先駆的な取り組みや状況,目指すべき方向を示した設問も含まれている。そうした近未来の目標を,現在の看護管理者が認識することが,わが国の医療を支えるすぐれた看護管理実践につながるものであると考える。
 MaIN(マイン)をあなたの管理を磨くツールとして活用していただき,使用後の感想や批判のフィードバックをお願いしたい。誕生したMaIN(マイン)を読者とともに育てて行きたいと願っている。
 最後に,研究の過程で,ご協力いただいたすべての皆さまに感謝の意を捧げます。特に,貴重なお時間をいただいて,長時間に及ぶインタビューやアンケート調査に応じてくださった全国の看護管理者の皆さまには,この場を借りて心よりお礼申し上げます。皆さまの看護マネジメントの向上に,本書が少しでも貢献できることを切に願っております。
 著者を代表して
 井 部 俊 子

開く

はじめに
1. MaINの概要
 1.1 MaINとは
 1.2 マネジメントを評価しうる指標
 1.3 6つのカテゴリ
 1.4 7つの設問と選択肢
2. MaINを正しく使うために
 2.1 回答上の注意事項
 2.2 選択肢の選び方
  1 計画
  2 動機づけ
  3 教育
  4 コミュニケーション
  5 組織
  6 安全
 2.3 結果の解釈
3. ナースのための管理指標(MaIN Ver.1.2)

開く

これであなたも一人前のマネジャーになれます(雑誌『看護管理』より)
書評者: 塚崎 惠子 (福岡市民病院看護部長)
■日本発の評価ツール「MaIN」

 看護管理者の仕事は「最も有効で可能なケアを患者,およびその家族の人々に提供するために計画し,組織化し,指示し,そして入手できる看護資源(人・物・金・情報・時間)全要素間の有効な相互作用が発現されるように,看護システムを運用すること」である。看護ビジョンを示し,革新と創造を駆使して,看護サービスを24時間,コスト面においても,構造・プロセス・成果の関係をシステマティックにみていく必要があり,医療チームのなかで信頼関係を築き,適切な意思決定にもとづいた行動・判断・選択をし,さらに交渉力を発揮せねばならない。

 このように看護サービスの提供と質保証に多大な貢献をしている看護管理者にとって,マネジメントを分析評価するツールは米国を中心に開発,検討されてきたが,日本の看護事情には馴染まないものであった。ところが,本書は日本の看護事情を十分踏まえ,病院の規模によらない看護管理の本質的な最低限の課題を厳選して指標化したものであり,いつでも,どこでも,必要時に手軽に利用できる優れものであることに驚かされた。

■シンプルかつ多様なマトリックス

 「MaIN」は最低限の指標群でありながら,看護マネジメントの基本的な課題がすべて含まれる実用性のある項目によって構成されており,“業務効率と看護の質”という対立要素に加えて,“個人と集団”“相互作用”という3つの要素を軸に,2×3のマトリックスに配置されている。「計画」「動機づけ」「教育」「コミュニケーション」「組織」「安全」の6つのカテゴリ各々に設定された7つの設問に答えて数値化し,レーダーチャートで視覚化することが可能である。6つのカテゴリは相互に関係し合いながらも対立概念となっており,対立を乗り越えたよいマネジメントの実践であれば,隣り合うカテゴリのチャート形状は,美しい六角形バランスが保たれ,拡大していくはずである。

 「MaIN(マイン)」は「私のもの(mine=マイン)」という意味も含まれており,看護管理自己評価によって管理実践の工夫や改善ヒントをつかむことができる仕掛け本である。看護管理者のための自己評価指標で,マネジメント実践の指針となるものであり,看護部長から中堅看護師に至るまで幅広く活用できる待望のツールである。繰り返し使うことで,自らの自信につながり,マネジメント能力を高めていくことが期待できる。また,正しく使うためのアドバイスが丁寧に解説されてあることも嬉しい。

 例えば,結果の解釈では視覚化したチャートの形状は必ずしも大きな六角形でなくても,落胆や,自己嫌悪に落ち込まなくてよい。自己評価に込められた意味を考えて,しっかり理解すれば容易に新たな実践へとつなぐことができる。言い換えれば,取り組むべき自己の課題を明確に抽出できるので,看護マネジメントの短所を具体的に見直すことに役立つ。あとは繰り返し見直すことが成長につながっていく。

 まさに「これであなたも一人前のマネジャーになれます」。本書は,看護の質向上をめざす看護管理者のマネジメント実践を支援するにふさわしく頼もしい一冊である。
皆が使えて改善点が目にみえる管理指標
書評者: 草刈 淳子 (前・愛知県立看護大学学長)
 看護サービスを提供する場と看護の責任は,2006年の診療報酬および医療関連法の一連の改正に伴い急激に拡大した。これにより医療における看護職の管理能力がこれまで以上に求められることになる。こうした中「ナースのための管理指標 MaIN」が出版された。

 まず,「ナースのための」という表題の意味するところに注目したい。「看護管理は管理者以上がするもの」といった考え方が未だに色濃く残っている医療現場への最初のメッセージである。その管理指標Management Index for NursesをMaINと略し,英語読みのメインではなくドイツ語の「私の」に通じるマインと読ませるのは,ややムリな気もするが,その意図するところが象徴されているのは理解できる。教育の場で常々指摘してきている点である。ナースはみな一生懸命努力するのだが,その効果を目に見えるものにするのは難しい。私は,看護管理は「ケアする人のケア」であり,目標達成と問題解決は同じで,それができなければ管理にならない! と強調しているが,それができないで苦しんでいるナースが多いのが現状である。その意味で,この指標が,施設の規模によらずに日常業務の中で手軽に自己評価でき,しかも改善点が目に見える形で具体的に示される点で,現場のナースにとっては何よりの贈り物といえよう。

 ただし,この指標が活きるためには,まずは組織成員が,合意の上で共通目標を「意思決定」できる基礎的能力が必要である。回答上の注意事項として「計画は目標を達成するための具体的で評価可能なものでなければなりません」と指摘されている。しかし,現実には,計画以前に「問題」が何かが把握できないのが共通の弱点であることを,永年の管理者研修や大学院教育を通して痛感している。まずは,ものの見方・考え方をしっかり学ぶことだ。事象は見れば見えるのか,どこから何を見るのか,見たものをどういう規準で区分し,それをどのような共通用語で表すのか。一人ひとりの主体的・創造的な改革意識が生まれればしめたものだ。計画,動機づけ,教育,コミュニケーション,組織,安全の6項目中の「教育」には,ぜひ「学習」も入れたい。最後の「安全」は,行動変容の成果として得られるものであろう。何時までに達成させるのか期限をつけることも重要な点である。バーナードの組織活性化の3要素:(1)共通目的,(2)コミュニケーション,(3)協働意欲,あるいは教育における(1)情報提供,(2)動機づけ,(3)行動変容,等これまで私自身が講義で伝えてきた内容に通じるのみならず,確実な管理行動を創り出すエネルギーが沸く待望の書である。

 現場のナース達の実践を通して,この指標がさらに洗練されることが期待される。

  • 更新情報はありません。
    お気に入り商品に追加すると、この商品の更新情報や関連情報などをマイページでお知らせいたします。