医学界新聞

寄稿

2007.09.17

 

【寄稿】

2007年麻しん流行と
国を挙げた“麻しん排除計画”

上野久美・多屋馨子(国立感染症研究所 感染症情報センター)


2007年の麻しん流行

 麻しんは,現在,感染症法に基づく感染症発生動向調査において5類感染症定点把握疾患に位置づけられている。全国約3000の小児科定点医療機関からの報告による「麻しん(成人麻しんを除く)」と,全国約450の基幹定点医療機関からの報告による「成人麻しん」の2つの届出システムがあり,成人麻しんは15歳以上の症例報告を収集する届出基準となっている。

 感染症発生動向調査によると,2000-01年の全国的な大規模流行後,麻しん患者数は確実に減少していった。その背景には,定期予防接種対象年齢である小児低年齢層が流行の中心であったために,“1歳を迎えたらすぐ”の予防接種を徹底しようとする小児科医を中心とした全国的な働きかけのほか,自治体によっては麻しん報告を定点報告から全数報告に切り替える,市町村を越えて予防接種が受けられる体制を作るなど,さまざまな対策が功を奏した結果といえる。

 しかし,2006年には茨城県南部・千葉県で地域流行がみられ,同年秋には終息に向かったものの,関東地方を中心とした散発的な患者発生はその後も続いた。同年末から埼玉県で流行が始まり,年明けから3月にかけて東京都へ流行が拡大した。5月の連休明けには全国に拡大するという6年ぶりの全国流行となった。特に,「成人麻しん」では1999年以降最大の流行を記録した。

 これまでの流行は1歳児を中心とした乳幼児での患者が主だったのに対し,今年の流行は10代から20代にかけての年齢層での発症が多いことが特徴である(図1)。これは,2002年以降,前述の種々の取り組みが進んだため,1-5歳までの小児における患者の割合が確実に減少した一方で,(1)年長児から若年成人にかけてはワクチン未接種者が10%程度存在すること,(2)1回の接種で免疫がつかなかったものが5%未満存在すること,(3)1回の接種で一度は免疫がついたにもかかわらず,その後の時間の経過とともにその免疫が減衰したものが10-20%存在すること,これらの要因が大きく関与している。

 国立感染症研究所感染症情報センターが,ホームページ上で,麻しんを診断した医師らを対象に,ボランティアベースで登録を募り...

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