MEDICAL LIBRARY 書評・新刊案内
2007.09.03
MEDICAL LIBRARY 書評・新刊案内


社団法人 日本リハビリテーション医学会 監修
日本リハビリテーション医学会診療ガイドライン委員会
リハビリテーション連携パス策定委員会 編
《評 者》浜村 明徳(小倉リハビリテーション病院長)
生き甲斐を持って生活できる連携リハ地域ネットワークづくりを

本書は,冒頭で診療ガイドライン委員会の里宇明元担当理事が述べているように,「単にツールとしての連携パスのみに焦点を当てず,障害を持つ人々が地域で生き甲斐を持った生活を送れるように援助する活動としてのリハ医療」の一環,そのつなぎに関係する人とツールのあり方を示したことに類書が及ばない特質がある。いわば,リハ医療における「連携の科学書」であり,かつ連携マニュアルとしても活用できる「連携実践の手引書」ともなっている。
前半では,(1)脳卒中診療の現状と診療連携,(2)クリニカルパスの基本,(3)脳卒中診療におけるクリニカルパスの動向,(4)データベースとITの活用と開発と,脳卒中連携に関する基本的な事柄,連携の概要や科学的根拠などが紹介されている。連携の基本はパートナーシップ(栗原),仲間づくり活動(正門),お互いの信頼(橋本)など「人」であること,急性期から在宅生活支援に至る「システムづくりを意識した活動の中に連携がある」ことを多くの執筆者が述べている。また,クリニカルパスの意義やパス作成のポイント,その動向などを通して,効果に関することや今後の方向性も示されている。
後半はより多くのページを割いて,(5)連携パスの実践,(6)ユニットパスの実際,(7)連携相手に望むことなど,実践事例や関係者の意見などが紹介されている。現時点でのわが国の先駆的連携事例,特徴ある事例の殆どが紹介されていると言ってもよい。これらの事例から,連携パスは地域のネットワーク活動の結果としてできてきたものもあれば,連携パスを動かすことが契機となってネットワーク活動が始まった事例もあることがわかる。ここには,連携パスを実践するための知恵,ネットワークづくりのヒントが集積されている。
リハにおいて連携は目標であり,念仏のように唱えられてきた経緯がある。昨今,医療機関の役割分担が明確になり,連携なくしてリハが成り立たなくなった。そのことが,支援ツールとしてのパスを活用できるものとした。
本書を参考に,それぞれの地域,関係者,時期,障害度などに適したあり方が検討され,また本書が障害のある人々のQOLの向上,地域のみんなで切れ目なく支える地域リハ体制づくりの一助となることを期待したい。
A4・頁256 定価3,990円(税5%込)医学書院
ISBN978-4-260-00478-7


大江 透 著
《評 者》杉本 恒明(関東中央病院名誉院長)
臨床医の視点で有用性を評価した不整脈教科書

大江教授は国立循環器病センターという臨床研究の場に長くあって,後に岡山大学内科教室という教育研究の場に移られた。この間にご自身がもたれた経験が本書執筆の動機となったもののように思われる。
不整脈の予後が健康な集団にみられた場合と末期患者にみられる場合とでは異なることを400年も昔の医学がすでに教えているということから本書は始まる。不整脈の分類には,心電図上の分類,原因・経過上の分類,電気生理学的検査による分類,発生機序による分類,有効薬剤による分類,日内変動による分類などと独自の分類がある。基礎的知識の解説がこれに続いて,次が検査である。基礎疾患の検索は本書ならではの章といえよう。診断は日常的な問診,身体所見,心電図によって行われる。この章ではティルト試験,圧反射感受性検査にもふれられている。ついで,電気生理学的検査である。電気生理学的検査は不整脈の機転を明確にし,診療に役立つ多くの知見を提供してきた。治療には薬物治療,デバイス治療,外科的治療,アブレーション,そして,さらに大規模臨床試験の成績が整理された問題点に私見を併せて紹介されている。各論では不整脈の種類別にこれらの知見が再度,まとめられていて,わかりやすい。ことに頻拍における興奮旋回路の同定,アブレーション部位の決定などについては流石に説得性がある。心室頻拍,心室細動が先にあって,これに心室期外収縮が続くのは,その意義を考えると理解しやすい。
本書に一貫しているのは,つねに臨床医としての視線があるということである。すべてが臨床的有用性によって評価されている。治療に役立つか,予後を改善するか,が評価の基準にある。アブレーション成功率別の不整脈の分類などはこの意味での独自の工夫であろう。
実にコンパクトによくまとめられている。単独執筆のよさであろう。また,大江教授の学識の深さを感じさせる。文章的には,独特の調子を帯びた表現もあって,講義風景が想像される。そして,このような大江教授の名講義が岡山大学の学生諸氏から,広くわれわれにも開放されたことを嬉しく思った。
B5・頁536 定価8,925円(税5%込)医学書院
ISBN978-4-260-00208-0


現場から学ぶ
自立支援のための住宅改修
みてわかる工夫事例・不適事例
鶴見 隆正,田村 茂,宮下 忠司,与島 秀則 著
《評 者》秋田 裕(横浜市総合リハビリテーションセンター)
生活様式・動作をもとに工夫のポイントを解説

本書には57の住宅改修事例が紹介されていますが,書名にもあるように「生活の現場から学んだ」具体的な事例紹介にあふれています。巷には住宅改修に関する書籍が数多く出版されていますが,制度の解説や一般的な改修事例の紹介に終始しているものが多いようです。そんな中で,あえて失敗した改修事例や工夫を施した事例を取り上げているのが本書の大きな特長と言えます。
不適切な事例の紹介では,何が不適切だったのかを指摘して,その対応を示し,ミスを起こさないためにはどうしたらよいのかを簡潔にまとめています。また,当事者の生活様式や動作を確認した結果をもとに,さまざまに工夫した改修事例では,なぜそのような工夫が必要であったのか,工夫のポイントは何かが解説されています。改修事例は,手すり,段差,スロープ,トイレ,浴室などの項目ごとに,豊富な写真とイラストとともに紹介されており,さらに改修箇所ごとに知っておきたい基本事項がわかりやすく解説されています。巻末に,よくある住宅改修のQ&Aと建築関係の用語解説が掲げられているのも実践の場ではすぐに役に立つでしょう。
数年前のことになりますが,著者のお一人である田村茂さんから,本書が出版されるきっかけとなった『住宅改修あれこれ』という小冊子をいただきました。田村さんは富山県で訪問リハビリテーションの実践者として,長らく住宅改修の現場に関わってこられましたが,その活動の中で住宅改修に関わる保健医療福祉領域の専門職,建築士,福祉用具製作者,障害の当事者と家族の方々や住宅改修に関心のある市民の方々とともに「障壁を考える会」を組織し,住宅改修事例の報告や住宅の見学を行いながら意見交換を積み重ねてきたそうです。こうした障害者・高齢者の生活の現場での実践の積み重ねと,関係者の熱い議論があったからこそ,本書のような現場の視点に立った事例紹介ができたのだと確信しています。
B5・頁144 定価2,520円(税5%込)医学書院
ISBN978-4-260-00454-1


寺本 明,山下 俊一 監訳
秋野 公造,太組 一朗 訳
《評 者》渡辺 英寿(自治医大教授・脳神経外科学)
最小のページ数で最大の内容 神経解剖学の理解と知識整理に

脳の解剖学は構造も複雑であるにも関わらず,羅列的にそのままを記憶しようとすると,平板であり,非常に苦労するものである。しかし,この平板な内容も,いったん疾患や障害を理解しようとして解剖学を見直すと,それぞれに重要な構造物が立体的に浮かび上がってきて,容易に記憶ができるものであったことに気付くものである。これは多くの臨床家が実体験していることではないだろうか。これを教育に生かさない手はない。本書はおそらくこのような経験をもとに,臨床を切り口として,読者の理解と記憶を促しているようである。さらに,最大限に効率よく記憶できること(High-Yield...
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