医学界新聞


「ともに感じ,支え,生きる」をテーマに

2007.07.30

 

「ともに感じ,支え,生きる」をテーマに

第41回日本作業療法学会開催


 第41回日本作業療法学会が,さる6月22-24日,岩瀬義昭会長(鹿児島大)のもと,鹿児島市の鹿児島市民文化ホール(ほか2会場)にて開催された。本学会のテーマ「ともに感じ,支え,生きる」に基づき,演題発表中心のプログラムが組まれ,各会場では3000名を超える参加者による熱気あふれる討議がみられた。


 教育講演「認知症を理解するために」では,小川敬之氏(九州保健福祉大)が登壇。認知症に苦しんでいる方たちとの関わりについて言及した。

 小川氏は認知症者を理解するためには,その人をよく知り,関わり合う(Tune in)ことが大切であると強調した。認知症者と向き合う側の問題として,行為を発現させるために,運動企図を引き出そうとして,かえって認知症者の混乱を誘発してしまっているのではないかと指摘。そうではなく,その人がもともと持っているものを自然に出してもらうために,自動的運動命令が行えるよう誘導してあげることが大切であると語った。

 また,われわれの生活や生き様には,自分なりの世界や個々の行動原理があり,例えば,ある日突然,交通事故に遭い骨折したという“ゆらぎ”が起きたとしても,自分のなかで現状に折り合いをつけることでその“ゆらぎ”を調整することができるが,認知症者は,その調整ができないために混乱が増し,「自分の生き方ができない」,あるいは「自分が自分でなくなっていく」という不安や恐怖感,喪失感によって,生活のいたる場面で「つまずき」を起こすことになると説明。

 そこで,認知症者へサービスを提供するうえでは,こうした「つまずき」のもとを紐解いていきながら,関わりを整理していく作業が必要であるとした。さらに,(1)認知症者にもそれまでの生活史が存在していること,(2)疾病・疾患の特性,(3)実際に見られる状態像,の3つの関連性をしっかりと把握しなければ適切なサービスは提供できないと述べた。

 認知症者と向き合うには,CTやMRIなどを使ったEBM(Evidence-based Medicine)に基づく医療も勿論大事ではあるが,それだけでは駄目で,物語と対話に基づく医療(Narrative-based Medicine)により,専門性に偏るのではなく,個人の生き方やその家族をも含めて認知症者全体に関わっていくことが何よりも大切であるとして講演を締めくくった。

子どもの成長に合わせた支援を

 シンポジウム「子どもの生活を広げる家庭支援――ライフステージを通して」では,辛島千恵子氏(名大),佐々木清子氏(心身障害児総合医療療育センター),土田玲子氏(県立広島大)が登壇。それぞれの実践をもとに発達障害領域における作業療法士の役割を提言した。

 辛島氏は子どもが成長していくにつれ,生活の場が家庭から社会へと変化することから,ライフステージの変化に応じた家族支援と作業療法の必要性を述べた。佐々木氏は,家族はもちろん保育士や学校の教師と連携をとることの重要性を述べた。土田氏は障害を重度にしている要因は環境と課題にあるとし,「集団行動ができない」といった目先の課題にとらわれることの危険性を指摘。「対象者が生き生きと毎日を送ることがもっとも大切ではないか」と述べた。また,岩崎清隆氏(群馬大)の司会によるディスカッションの場では,「子どもと家族のニーズが異なる場合にはどうしたらよいか」「殺人や傷害といった衝動的な行為を防ぐには」など質問が相次いだ。

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