医学界新聞


医療機関の特殊性を考慮して

連載

2007.06.25

 

ストレスマネジメント
その理論と実践

[ 第15回 事業場外資源によるケア
医療機関の特殊性を考慮して ]

久保田聰美(近森病院総看護師長/高知女子大学大学院)


前回よりつづく

事業場外資源とは

 平成18年3月に新たに公示された厚生労働省の「労働者の心の健康の保持増進のための指針」において,事業場外資源とは「事業場外でメンタルヘルスヘの支援を行う機関及び専門家をいう」1)と定義されています。  また,事業場外資源は「大きく分類すると医療機関と相談機関に分けられ,具体的には,地域産業保健センター,都道府県産業保健推進センター,健康保険組合,労災病院勤労者メンタルヘルスセンター,中央労働災害防止協会,労働者健康保持増進サービス機関等,産業医学振興財団,日本医師会,都道府県医師会,産業医科大学,精神科・心療内科等の医療機関,地域保健機関,各種相談機関等」2)を指します。  医療従事者の場合には,自分自身や所属する組織が事業場外資源の役割を担っている場合も多い反面,メンタルヘルスへの偏見や誤解も一般人以上に強い側面も持っています。こうした医療機関の特殊性を考慮しながら,事業場内外の関係機関と連携をうまくとっていくことが重要です。

「まさか自分が」を捨てる

 「医者の不養生」という諺にもあるように,「まさか自分が」という思いが人一倍強いのが医療従事者です。また,医療従事者だからこそとも言える偏見の深さも見過ごせません。  「ここ数週間眠れなくて」と訴える患者さんに対しては,精神科や心療内科の受診を勧めるナースが,自分自身の不眠には問題意識を持てず,自分の心のSOSのサインに気づかないことも少なくありません。何気ない同僚の会話や体調不良で受診した内科の医師等に「うつ状態」を指摘されて愕然としてしまったという事例もあるようです。

自分自身が患者になることの受容

 今の医療現場の厳しさを鑑みると,誰もが「こころの風邪をひく(うつ病になる)」可能性は高いのかもしれません。風邪も初期のうちに休養をとって対処すれば長引くことがないように,こころの風邪の対処も同様です。そのためには,自分自身が患者になることを受容し,できるだけ早く治療に専念することが大切です。しかし,その環境を作ることがいちばん難しいのも医療従事者かもしれません。  こうして自分自身の「こころの風邪」に気づくことができても,専門機関受診までたどり着くためには,組織的に環境を整えることが大切です。

利便性と個人情報保護

 事業場外資源は,こころの問題の特殊性から有効な資源であると言われてきました。しかし,忙しい医療従事者は,その利便性から自分の所属する病院を受診することもよくあるようです。  この場合,主治医はもちろん守秘義務を守ってはくれるでしょうが,受診行為自体が同僚や他職種の目にふれることもあり,個人のプライバシーは守られにくい状況にあります(昨今の電子カルテの導入も影響しているようです)。また,同じ組織内では,前回紹介したようにラインや事業場内スタッフとの間で情報が錯綜することもあるでしょう。  そのような事態を避けるためにも,院内での基本的なルール作りと適切な事業場外資源の選定が必要と言えます。

事業場外資源の情報提示

 事業場外資源選定のためには,利用可能な医療機関や相談機関に関する情報の提示が重要です。  医療機関の場合は,地理的条件,土日・夜間診療の有無等の診療曜日・時間帯の情報が主な内容となります。精神科や心療内科の場合には,近くの病院や土日がよいとは限りません。知人の少ない遠方の病院や平日の昼間のほうがかえって受診しやすいこともあるようです。  相談機関には,公的な機関としては,労災病院勤労者メンタルヘルスセンター(全国12か所に設置),産業保健推進センター(各都道府県に設置),精神保健福祉センター(各都道府県および政令指定都市に設置),地域産業保健センター(各労働基準監督署単位で設置)等が挙げられます。それぞれの機関の特徴がありますが,個々の事例に対応するよりも事業場内の担当者への支援や地域におけるメンタルヘルス支援体制の教育的支援といった間接的なサービスを提供することが主な役割と言えます。ただし,他の医療機関に対する一定の判断基準を持つ医療従事者にとっては,自分が相談者の立場で適切な医療機関を探す際の資源として,安心して活用できる機関でもあります。  また,最近

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