医学界新聞


7:1入院基本料算定基準見直しをきっかけに

寄稿

2007.02.26

 

【寄稿】

科学的な看護管理の幕開けとしての
看護必要度

7:1入院基本料算定基準見直しをきっかけに

嶋森好子(京都大学医学部附属病院看護部長)


7:1入院基本料新設がもたらした混乱とその解釈

 2006年11月29日に行われた中央社会保険医療協議会(中医協)において,4月の診療報酬改定で新設された7:1入院基本料について,混乱が生じているとの問題提起があったと「メディファクス」で報じられた。この議論では,7:1入院基本料を新設したことについては,支払い側,診療側のいずれもが必要と認めたとしている。会議で示された資料によると,10月1日時点で7:1入院基本料を取得している病院は199床以下が最も多く(340病院),ベッド数でも200床から499床の病院のベッドが最も多く(5万3638床),これを含む11万9093床が7:1入院基本料の届出をしていると示されている。国立大学病院など特定機能病院が含まれる500床以上の病院は届出が少なく,10月1日時点で,7:1入院基本料を取得している国立大学病院はない。

 さらにこの会議では,“思いがけず7:1を取得できた病院がある”ことや“他の病院へ患者を移送するような病院が7:1を取得する必要があるのか”という意見があり,“過渡期の混乱が生じている状況である”と認識されたと紹介されている。

 一方,国立大学病院が大量に看護師を集めていることへの批判があり,それが原因で病棟閉鎖に追い込また地方病院があるとの報道もある。しかし,現段階で7:1入院基本料を取得している国立大学病院はなく,前述のような申請状況を考えると,この批判は必ずしも当たらない。

7:1入院基本料の取得がほんとうに必要な医療機関はどこか

 このような混乱を生じさせている理由の一つは,看護師の数だけを入院基本料届出の基準にしたところにある。これについては,新看護体系が導入された当時に,今後看護に関わる診療報酬の改定にあたっては,「単に数を配置するだけで高い診療報酬を得られるような評価は考えられない。患者の看護の必要度に応じて必要な看護要員を配置した場合に評価する仕組みを考える」と聞かされていたように思う。

 しかし,今回の改定では,この考え方が踏襲されずに数を評価する仕組みのままで7:1入院基本料が導入された。しかもマイナス改定のなかで,7:1入院基本料の取得は経営的に大きなプラスをもたらす改定であった。そのため,すでに多くの看護師を配置していた私立大学病院などは,直ちに新しく設置された入院基本料の届出を行い,10億円を超える収入増があった病院もあると聞いている。

 このような混乱の是正が必要との認識が深まるなかで,2007年1月17日には中医協の総会が開かれ,7:1入院基本料に対する建議書を厚生労働大臣に提出することで合意した旨が報じられた。これによると次回の2008年度の改定で,“7:1入院基本料の施設基準に看護必要度を導入することを盛り込む”ことになったとのことである。やはりここでも,看護の必要度が高く看護師の配置を多くする必要のある医療機関が7:1入院基本料の届出をするのは問題ないが,もともとベッド数が少なくて数人の看護師を集めれば申請可能な医療機関が,これを...

この記事はログインすると全文を読むことができます。
医学書院IDをお持ちでない方は医学書院IDを取得(無料)ください。

開く

医学書院IDの登録設定により、
更新通知をメールで受け取れます。

医学界新聞公式SNS

  • Facebook