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第3290号 2018年9月24日


Medical Library 書評・新刊案内


実習指導を通して伝える看護
看護師を育てる人たちへ

吉田 みつ子 著

《評者》蜂ヶ崎 令子(東邦大講師・看護技術学)

学生が実習で経験したことの“意味”を一緒に考える

 本書を読んだ後にまず思ったのは,「もっと早くこの本を読みたかった!」ということだった。実習場でよく見られる事例が紹介され,そこで起きている現象を読み解くヒントが,この一冊に詰まっているからだ。

 私が最近行った臨地実習でも,本書に取り上げられているような事例は日常的に見られた。電子カルテの前に張り付いてしまいなかなかベッドサイドに向かえない学生,「患者さんの話をただ聞くだけになってしまった」と嘆く学生,「2週間受け持ち患者のことしか考えられなかった。こんなに一人の人のことを考え抜いたのは初めてだ!」という学生……これらは初めての実習にありがちな場面である。

 こういった場面には,最近の看護事情も反映されている。例えば,シーツ交換をはじめとして,清拭や陰部洗浄といった清潔ケア,環境整備など,いわば患者の身の回りの「ちょっとしたこと」を介護福祉士やヘルパーに委ねている病院も多くなってきた。看護師が行っていないことを,学生たちにこれらが紛れもなく看護師の仕事,つまり「看護である」ということを意識して伝えなければならない。本書では,患者の身の回りの「ちょっとしたこと」に気付くことが非常に大事であり,患者との信頼関係を築くきっかけになると紹介している。

 また,私が何といっても助かると思ったのは,実習記録へのコメントの入れ方やアドバイスの仕方である。まさに十人十色の学生の記録に対し,どんなコメントを書いたらよいのだろうと頭を悩ませることがよくある。このような教員の悩みに,「“適切なコメント”という正解はない,記録を介して学生と対話すればよい」と著者は答えている。また,アドバイスを求めてきている学生に対して,「なぜ? 根拠は?」と問いがちな教員に,それだけでは学生は不全感を持ってしまうことなどを指摘している。「学生の経験したことの意味を一緒に考えることが大切である」という言葉に,これまで行ってきたことは間違っていなかったと安堵できた。

 指導者や教員から一挙手一投足を見つめられ,手取り足取り指導を受ける状態から,著者の述べているように,学生が自分の頭で考えて実践し,自ら問いを立てて解決していく力を身につけていくようにするのが実習の大きな目的である。指導者や教員が手や口を出しすぎると,その目的が達成されない。実習の後半に,「あ,先生いたんですか」と学生から言われるような,黒子に徹することができる実習――それが私のめざす,実習の理想のかたちである。

 学生のぎこちないあいさつとともに始まる実習,そこではさまざまなドラマが生まれる。指導者と教員はそのドラマに入り込み,学生が多くの人間とかかわる中で貴重な経験をし,飛躍的に成長していくことを実感する。実習は,看護師をめざす看護学生としての成長だけでなく,人間として成長する重要な機会でもある。未来の看護師が,その成長の第一歩として初めて患者を受け持つという貴重な瞬間に立ち会う前に,本書を一読しておくことをぜひお勧めしたい。

A5・頁176 定価:本体2,300円+税 医学書院
ISBN978-4-260-03529-3


知っておきたい変更点 NANDA-Ⅰ看護診断 定義と分類 2018-2020

上鶴 重美,T. ヘザー・ハードマン 著

《評者》饒平名 かおり(琉球大病院看護師長)

正確な看護診断に欠かせない最新情報がわかる

 2018年に改訂された『NANDA-I看護診断 定義と分類 2018-2020 原書第11版』では,何がどのように変わったのか,また,変更点についてどのように理解し活用すればよいのかについて気になっている人は多いのではないか。

 本書は,『NANDA-I看護診断 定義と分類 2018-2020 原書第11版』の変更点や新しい診断について典型的な事例を用いた活用方法が具体的に説明されており,わかりやすくまとめられている。

 第1章「何がどう変わったか」では,ヘルスプロモーション型看護診断やリスク型看護診断の定義について,変更点やヘルスプロモーション型看護診断における代理人としての看護師の役割などが具体的に解説されている。また,新しく追加された17診断や診断名が変更になった9診断,削除された8診断について説明されている。変更点については,『NANDA-I看護診断 定義と分類 2018-2020 原書第11版』の「3.変更と改訂」にも掲載されているが,本章ではさらにかみ砕いて説明されており,より理解が深まる。

 第2章「課題と今後の取り組み」では,看護診断の課題についてNANDA-Iが取り組んできたプロセスと,今後の取り組むべき内容について,具体的に説明している。特に,現場の混乱を回避するために,標準的な用語を正確に理解した上で活用することの重要性が説明されており,その注意点がわかりやすくまとめられている。

 第3章「臨床推論モデル」では,看護アセスメントを通して看護診断するための,臨床推論モデルの3つのタイプ(問題焦点型看護診断,リスク型看護診断,ヘルスプロモーション型看護診断)について紹介している。また,事例を用いて,3つのタイプごとに,臨床推論の要素(診断推論,目標・アウトカム推論,看護介入推論,評価推論)に分けながら解説しているため,現場の事例を想起しながら理解を深めていくことができる。

 第4章「クイックマスター! 新看護診断17」では,新たに採択された看護診断それぞれの意味と活用について,典型的な場面や事例を用いて臨床推論に基づき,アウトカムや一般的な看護介入が説明されており,イメージしやすい。

 『NANDA-I看護診断 定義と分類』は,エビデンスに基づいて検討され,3年に1度改訂が行われている。改訂年度には,当院においても新しく追加された看護診断や改訂された看護診断について理解を深め,活用するための検討を行っている。その中でも,著者が本書で何度も繰り返している「正確に看護診断することがスムーズな看護展開につながる(個別性をとらえた看護展開ができる)」は肝に銘じたい。看護診断を活用する現場の看護師が,看護師個人にとどまらず,組織全体での理解を深めるためにも『NANDA-I看護診断 定義と分類 2018-2020 原書第11版』に併せて本書を用いて学習する機会を増やしていただきたい。看護診断の理解と知識が深まり,看護の質向上につながる一冊である。

A5変型・頁112 定価:本体2,000円+税 医学書院
ISBN978-4-260-03610-8


《ジェネラリストBOOKS》
外来でよく診る

病気スレスレな症例への生活処方箋
エビデンスとバリューに基づく対応策

浦島 充佳 著

《評者》小泉 泰郎(FiNC代表取締役副社長CFO兼CIO)

患者の生活習慣を改善させる技術を解き明かす一冊

 本書が伝えるのは,来院者の健康のために,食事や運動などについての生活習慣を処方する「生活処方箋」という考え方です。診察に来る患者さんはそれぞれ別個の悩みや身体症状を抱えていますが,実に大部分の人が共通して,薬に頼らず治したいという要望を持っています。生活習慣を改め病因を根本から断つアプローチは,服薬と違い副作用の恐れや費用の負担もなく,理想的な治療法だといえます。

 このような方々の希望を実現するために,薬の処方一辺倒の治療では求められてこなかった,患者さんの行動変容を促す医師の腕前が問われるようになります。決して簡単なことではありませんが,本書の助けがあれば,個々の症状や価値観に応じ,適切な食習慣や運動習慣を身につけてもらうための道筋が見えてくるはずです。本書には「生活処方箋」の裏付けとなる有用なエビデンスから,患者さんをモチベートするためのフレーズに至るまで,当事者の納得とやる気を引き出し,より良い生活習慣の継続を実現する術が豊富に掲載されています。これは薬に頼らず病気を治したい人に,大きな希望を与えることでしょう。

 本書では,生活習慣の改善を通じて,さまざまな症状を回復に導くまでの好事例が多数収録されています。まるで,診察室に同席しているかのようなリアリティがあり,すぐに実用できる知恵ばかりです。医師にも,健康に関心がある一般の方にも多くの発見がある,珠玉の一冊です。

 「全ての人の健康のためにパーソナルAIを」という,弊社FiNCの掲げるミッションとも一致する本書と浦島充佳先生に敬意を表したいと思います。

A5・頁212 定価:本体3,600円+税 医学書院
ISBN978-4-260-03593-4


大人の発達障害ってそういうことだったのか その後

宮岡 等,内山 登紀夫 著

《評者》宮子 あずさ(看護師)

社会現象としての発達障害を正しく理解するために

 「あの人,発達障害もあるんだよね」「そうそう,確かそう」

 精神科領域では最近よくある看護師同士の会話。多くの場合,話題になっているのは,人とのコミュニケーションがうまくできず,環境変化に弱く,引きこもりがちな人たちです。

 この本は発達障害に詳しい精神科医の対談をもとに作られました。実際の診断,治療に当たる精神科医の話は,「なるほど,わかった」と得心がいきます。私は特に発達障害について正しく診断する意義が,よくわかりました。やはり,冒頭のような曖昧な理解では,とてもまずいのですね。

 前提として,発達障害は,自閉症スペクトラム(ASD),注意欠如・多動性障害(ADHD),学習障害などを含めた大きな枠組みであり,それぞれの障害によって治療やとるべき対応が異なっています。

 これを「一緒にしてしまうと本質が見えなくなる」と内山登紀夫氏。氏の経験では,その人がASDの場合,決められた役割だけは果たせるがそれを広げようとすると破綻しやすい傾向があります。この点はADHDの人とは異なる点。ASDとわかっていれば,他の支援者に対して役割の範囲を広げないよう進言することが大事だそうです。

 こう書きながら,私の頭には,すでに何人かの人の顔が浮かんでいます。高校までは一流の進学校に進んだものの,対人関係がうまくいかず不登校へ一直線。その後は引きこもり,親ともめ,精神科医療とつながり……。結局生活保護を受けながら,基本は無為自閉の生活です。

 見ているとどうしても「もう少しできるはず」と思い,強くプッシュしたくなってしまいます。この人が仮にASDだとしたら? 行動を拡大する大変さを理解し,焦らぬ努力ができるのではないでしょうか。

 本の始めには,発達障害と診断されるメリットにも触れられています。対応困難な子どもが診断されれば,親や教師など周囲の大人は「自分のかかわりではなく,発達障害のせいだ」と安心できますからね。

 読後,私が考えたのは,個人の責任が過剰に問われる社会のこと。その中で,発達障害は数少ない免責の切り札になっているのではないでしょうか。自分が職場でうまくいかない理由を,「発達障害」と説明されるとほっとする。そんな心情はとてもわかりますね。

 とはいえ,こうした「社会現象としての発達障害」があるからこそ,正しく理解するのが大切。「発達障害」との診断を受けた人をみる時は,さらにその先の診断に関心を寄せ,かかわりを検討したいと思いました。

A5・頁330 定価:本体3,000円+税 医学書院
ISBN978-4-260-03616-0

関連書
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