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第3026号 2013年5月13日


外来診療
次の一手

第14回】「このごろ,時々動悸がするんです……」

前野哲博(筑波大学附属病院 総合診療科教授)=監修
小曽根早知子(筑波大学附属病院 総合診療科)=執筆


3022号よりつづく

 本連載では,「情報を集めながら考える」外来特有の思考ロジックを体験してもらうため,病歴のオープニングに当たる短い情報のみを提示します。限られた情報からどこまで診断に迫れるか,そして最も効率的な「次の一手」は何か,ぜひ皆さんも考えてみてください。


【症例】Tさん 37歳女性

Tさん 「このごろ,時々動悸がするんです」
Dr. M 「動悸ですか。具体的にはどんな感じですか?」
Tさん 「急に,脈が連続して速くなる感じがして,しばらく続きます。今はないですけど」

バイタルサイン:体温36.6℃,血圧126/74 mmHg,脈拍90回/分(整)。

⇒次の一手は?

■読み取る

この病歴から言えることは?

 30代女性の動悸の症例である。一般に,患者が訴える「動悸」の意味は,心拍数の増加・減少,脈拍不整,拍動を強く感じる,胸部違和感など幅広いが,この患者の場合は心拍数の増加を訴えているようである。受診時には無症状でバイタルサインでも頻脈や脈拍不整はなく,患者の症状は発作性である可能性が高い。見逃したくないのは心原性疾患であるが,比較的若年女性であり,甲状腺機能亢進症やパニック発作の可能性も考慮する必要がありそうだ。

■考える

鑑別診断:「本命」と「対抗」に何を挙げる?

 「本命」心原性。致死的な疾患(心室頻拍などの致死的不整脈,心筋梗塞,肺梗塞など)の頻度は,特に30代女性では決して高くないが,発作性上室性頻拍,期外収縮,発作性心房細動などの可能性は十分にある。

 「対抗」パニック発作。動悸を訴える患者の原因疾患として,パニック発作を呈する,不安障害,身体表現性障害,うつ病などは比較的多い。ただしこれらの疾患と発作性不整脈が併存する可能性もあるので,いずれにしても不整脈の除外は必要である。

 「大穴」貧血。発作的な動悸を訴えているので可能性は低いが,貧血の有病率は高く,労作に伴う頻脈の可能性もある。

■作戦

ズバッと診断に迫るために,次の一手は?

「また発作が起こるのではないかと強く不安に感じて,日常生活に支障を来すことはありますか?」

 パニック障害では,患者は発作に対して強い恐怖を感じ,また発作が起きるのではないかという強い不安(予期不安)を抱く。予期不安はパニック障害の必須項目であり,これがあればパニック障害の可能性を考えて具体的な診断項目まで確認したほうがよい。心原性の動悸でも症状出現への不安を感じることはあるが,日常生活に支障を来すほどの予期不安まで抱くことは少ない。ただし,いずれの場合でも来院時には無症状であり,一度の診察で心原性を完全に否定することは難しいので,フォローアップは必要である。

その後

 患者は,予期不安は感じていなかった。十二誘導心電図では異常なかったが,ホルター心電図では一過性心房細動があり,血液検査では甲状腺機能亢進症を認めた。甲状腺機能亢進症の治療とともに,動悸発作は出現しなくなった。

■POINT

動悸発作では予期不安に注目する!

つづく

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