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写真を見て・解いて・わかる皮膚排泄ケア「WOCドリル」創傷編

連載 間宮直子

2025.07.09

Example ImageWOCドリルを担当するマミヤです。私は皮膚・排泄ケア認定看護師(WOCN)として,WOCNが在籍していない施設へケアの技術・知見を共有してきました。こうした経験を通して得たことを基に,皮膚・排泄ケアで間違いやすいポイントを中心に,適切なケアをドリル形式で解説していきます。
Example Image一緒に学習する臨床3年目看護師のさくらです。私が所属する病院にはWOCNはおらず,学生時代に学んだ方法や,代々引き継がれてきた病院独自の方法で皮膚・排泄ケアを行っています。患者さんのことを想うと,本当にこの方法で正しいのか自信がありません……。
Example Image褥瘡を見つけたとき,きちんとアセスメントして,適切なケアを実施して重症化予防に結び付けたいと考えています。
ですが,持ち込まれた褥瘡は情報がなくて,発生要因がわからないことが多いです……。
Example Image褥瘡の定義は第1回に解説しました。褥瘡の発生要因である「圧迫」や「摩擦・ずれ」,皮膚の「湿潤」を可能な限り避けることが予防になります。
もし褥瘡を発見した場合は,発生要因をいち早くアセスメントして排除するケアができれば,悪化予防につながります。

問題 「圧迫」が主な要因の褥瘡はどれ?

Example Imageこれらの褥瘡患者は車椅子やベッド上で座っている時間が長かったようです。
「ずれ・摩擦」の関与より,「圧迫」が主な要因である褥瘡を探したらよいですね。

解説

褥瘡の発生要因は圧迫による阻血だけではありません。摩擦・ずれ,湿潤,低栄養,不潔などの要因が複合的に重なり発生する事例もあります。

押さえてほしいのは,褥瘡の形状からでも発生要因を推察できることです。褥瘡の形状から推察された要因をアセスメントして,それを排除するケアは重症化を予防するうえでとても重要となります。

Example Image図1を参考にしながら,それぞれの褥瘡の発生要因を考え,圧迫が主である褥瘡を探してみましょう。
WOCドリル1_表.jpg
図1 褥瘡の形状と要因(尾骨部褥瘡) (文献1を参考に作成)
逆V字のような形に広がっている褥瘡
 

①逆V字のような形に広がっている褥瘡

馬蹄形であり,これは「ずれ」が大きく関与した褥瘡です。
×

ベッド上で頭側挙上をする時間が多かったようです。
おむつ内の汚染による皮膚の湿潤があるうえに体が下方にずれることが繰り返された結果,このような形状となりました。炎症の強い褥瘡であることもわかります。

左側に褥瘡が集中し,形は不整形な褥瘡
 

②左側に褥瘡が集中し,形は不整形な褥瘡

不整形であり,これも「ずれ」が大きく関与した褥瘡です。
×

殿部左側に不整形の褥瘡があり,中央に白色壊死組織があります。ベッド上での頭側挙上,車椅子での座位姿勢の際,左側にずれやすかったことが推察されます。
左側に片麻痺があり,姿勢保持が困難だったようです。強いせん断力が左臀部に生じており,とても深い褥瘡となりました。

骨突出部に見られる円形の褥瘡
 

③骨突出部に見られる円形の褥瘡

円形であり,これは「圧迫」が大きく関与していた褥瘡です。

固着した壊死組織はほぼ円形で,骨突出部に一致しています。 車椅子での座位姿勢が多かったことから,除圧不足を疑いました。
また,体が前方にずれた姿勢で座っていたこと(仙骨座り)が推察されます。なぜなら姿勢よくまっすぐ座っていた場合(90度ルール),尾骨ではなく坐骨結節部位に発生しやすいからです。

殿裂を中心に見られる褥瘡
 

④殿裂を中心に見られる褥瘡

くさび型であり,これは「排泄物の汚染・皮膚の密着による湿潤」が大きく関与している褥瘡です。
×

殿筋を持ち上げている手を離すと図2のように皮膚が密着していました。1回の排尿量が多く,使用するおむつパッドが過度に濡れている状態だったことが原因と考えられます。
このような状態であるとき,軽い圧迫や摩擦などの負荷がかかると皮膚が損傷しやすいことは容易に想像ができます。

殿筋を持ち上げ手を離した際の皮膚が密着している様子
 

図2 殿筋を持ち上げ手を離した際の皮膚が密着している様子

答え ③骨突出部に見られる円形の褥瘡

Example Image形状から発生要因を推察することもアセスメントですよね。
Example Imageもちろん形状だけでなく,得手体位や麻痺,皮膚の湿潤やるい痩の程度など,全身をみてアセスメントすることが重要です。
ただ,発生要因が把握できれば,正しいケア計画でいち早い適切なケアの提供ができるわけです。

褥瘡の形状から発生要因をアセスメントできることがある円形,輪形の褥瘡は主に「圧迫」の関与が多い馬蹄形,蝶形,不整形の褥瘡は主に「ずれ」の関与が多い線型,くさび型の褥瘡は主に「排泄物の汚染や皮膚の密着による湿潤」の関与が多い​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​

参考文献

1)真田弘美,他(編).実践に基づく最新褥瘡看護技術.照林社;2007.pp130-40.

 

間宮 直子(まみや・なおこ)氏

 1997年に大阪府済生会吹田病院に入職。皮膚・排泄領域のケアを専門とし,04年に皮膚・排泄ケア認定看護師資格を取得する。その後,16年に創傷管理関連の特定行為研修修了,17年に滋慶医療科学大大学院医療安全管理学修士課程修了。11年より現職。
 「高度な急性期病院でありつつ、医療・介護をトータルに支える地域密着型の病院機能も担う“二刀流の病院”を目指す」という病院のミッションの下,同じ医療法人グループの中にある高齢者施設,訪問看護のみならず多くの施設・機関にアウトリーチ活動を行っている。
 所属学会は,日本創傷・オストミー・失禁管理学会(評議員),日本褥瘡学会(評議員・褥瘡認定師) ,日本フットケア・足病医学会(理事・学会認定師) ,日本認知症ケア学会(認知症ケア専門士) ほか。

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済生会吹田病院副看護部長/皮膚・排泄ケア認定看護師

 1997年に大阪府済生会吹田病院に入職。皮膚・排泄領域のケアを専門とし,04年に皮膚・排泄ケア認定看護師資格を取得する。その後,16年に創傷管理関連の特定行為研修修了,17年に滋慶医療科学大大学院医療安全管理学修士課程修了。11年より現職。
 「高度な急性期病院でありつつ、医療・介護をトータルに支える地域密着型の病院機能も担う“二刀流の病院”を目指す」という病院のミッションの下,同じ医療法人グループの中にある高齢者施設,訪問看護のみならず多くの施設・機関にアウトリーチ活動を行っている。
 所属学会は,日本創傷・オストミー・失禁管理学会(評議員),日本褥瘡学会(評議員・褥瘡認定師) ,日本フットケア・足病医学会(理事・学会認定師) ,日本認知症ケア学会(認知症ケア専門士) ほか。

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