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医学界新聞プラス
[第3回]そんなとき,尿試験紙
<<ジェネラリストBOOKS>>『診療ハック——知って得する臨床スキル 125』より
連載 上田剛士
2025.04.17
診療ハック——知って得する臨床スキル 125
『診療ハック——知って得する臨床スキル 125』は,毎日の診療がちょっとラクになる、そんな診療のライフハックを集めた一冊です。問診,診察,検査,治療・処方に留まらず,コミュニケーション,患者(家族)説明,マネジメント,看取り,研究・論文・学会で使える125ものスキルを紹介しています。
「医学界新聞プラス」では本書のうち,厳選した5つのハック「頭頚部の診察スキル」「予防接種時の診察スキル」「尿試験紙を使った検査スキル」「桔梗湯の処方スキル」「患者さんの話がなかなか終わらないときの対応」をご紹介します。
単関節炎があれば基本原則として関節穿刺を行い,関節液の性状を確認すべきです。もちろん,多発関節炎であっても必要であれば関節液検査を躊躇せずに行うべきです。関節穿刺により結晶性関節炎とわかればステロイドの関節内投与は非常に有用な治療法ですが,化膿性関節炎であれば禁忌です。化膿性関節炎の最終診断は細菌培養によりますが,何もせずにその結果を待つわけにはいかないため,迅速性に優れるグラム染色や関節液の白血球数でマネジメントの方向性を付けることになります。しかし,それらも文字どおりベッドサイドで結果が得られる検査ではありません。
肝硬変患者の腹水貯留においても,迅速な検査結果が得られずに,もどかしい思いをさせられます。特発性細菌性腹膜炎を除外するために腹水検体を採取しても,細胞数や細菌培養の結果が得られるまでに時間がかかるからです。
このような場合,1分程度で化膿性関節炎や特発性細菌性腹膜炎を診断する方法があります。
どんな診療ハックスキル?
関節液/腹水に対して尿試験紙で白血球定性±糖定性を確認する。
用意するもの・準備するもの
尿試験紙
実際の方法
◎ 関節液
関節を穿刺する際にはあらかじめ膿盆などの上に尿試験紙をセッティングしておきます。関節液を尿試験紙に垂らし,1分後に判定します(判定時間は用いる試験紙の説明書に従う)。化膿性関節炎の判定は白血球定性と糖定性によって行います。
関節液の白血球定性が陽性(≧1+)で糖定性が陰性であれば,感度85%,特異度100%で化膿性関節炎です(図1)。つまり,化膿性関節炎として抗菌薬投与すべきです。一方,関節液の白血球が正常(≦±)かつ糖も正常(≧±)であれば,化膿性関節炎は否定できます 1)。多くの検査室ではヒアルロニダーゼ添加の手間などから,関節液の細胞数については迅速に結果が得られず,糖の値も計測されていないと思われ,尿試験紙法では迅速にこれらの判定ができることが優れています。

穿刺針を残したままシリンジを取り外して検体を採取し,尿試験紙で化膿性関節炎が否定されれば,残していた穿刺針からステロイドを関節内投与することも可能です。
◎ 腹水
腹水検体も同様に尿試験紙で確認しますが,白血球定性だけで判定を行うことが,関節液の場合との違いです。白血球定性が陽性(≧1+)であれば,特発性細菌性腹膜炎と判断します。陰性であれば特発性細菌性腹膜炎の可能性はかなり低いと考えます(表1)。

☞検体採取前に尿試験紙をセッティングしておくと,手技をしながらその後のマネジメントに想いを馳せることができる。
参考文献
1)Kolbeck L, et al:Leukocyte esterase and glucose reagent test can rule in and rule out septic arthritis. In Vivo 35(3):1625-1632, 2021. PMID 33910845
2)Nguyen-Khac E, et al:Review article:the utility of reagent strips in the diagnosis of infected ascites in cirrhotic patients. Aliment Pharmacol Ther 28(3):282-288, 2008. PMID 19086234
3)Koulaouzidis A:Diagnosis of spontaneous bacterial peritonitis:an update on leucocyte esterase reagent strips. World J Gastroenterol 17(9):1091-1094, 2011. PMID 21448413
診療ハック——知って得する臨床スキル 125
毎日の診療がちょっとラクになる、そんな診療のライフハックを集めました
毎日の診療がちょっとラクになる、そんな診療のライフハックを集めました。診療前の準備、問診のポイント、診察のワザ、検査のコツ、治療・処方のコツ、看取り時の心得、患者(家族)への説明の仕方、コミュニケーションスキル、マネジメントスキルなど、ここでしか読めない「臨床の知恵」が満載です。本書を読めば、その悩みが解決するかもしれません。
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