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医学界新聞プラス
[第13回]SNSの効果測定について――投稿分析編
SNSで差をつけろ! 医療機関のための「新」広報戦略
連載 町田詩織
2025.03.07
効果測定には,アカウント全体が正しく運用できているかを分析するアカウント分析と,一つひとつの投稿が効果的に発信できているかを分析する投稿分析の2種類があります。前回はアカウント分析について解説しました。今回は投稿分析について解説していきます。
投稿分析の重要性
投稿分析は単に過去のデータを分析するだけでなく,今後のコンテンツ戦略を立て,より多くのユーザーに響くコンテンツを創出するための重要なプロセスです。
ユーザーの反応を数値で可視化することで,どのような投稿が共感を呼び,興味を持たれているか。そして,どのような点を改善すべきか,客観的に把握することができます。これにより,ユーザーの興味関心や好みに最適化されたコンテンツを制作し,高いエンゲージメントを獲得することが可能になります。
投稿分析で見るべき数値
投稿分析は,1投稿ごとに行います。Instagramでは,各投稿の左下に表示される「インサイトを見る」を押すと確認できます。
前回述べたとおり,全ての数値項目をチェックする必要はないので,重要項目のみ確認すれば問題ありません。
・ストーリーズ閲覧率
・保存率
・ホーム率
・プロフィールアクセス率
ストーリーズ閲覧率(ストーリーズ閲覧数÷フォロワー数)
ストーリーズ閲覧率とは,投稿したストーリーズを,フォロワーのうち何人が実際に見たかを示す指標です。この数値が高いほど,アカウントへのエンゲージメントが高まっていることを意味し,新規投稿がフォロワーのホームに表示されやすくなる,「発見」タブ(アプリ版では虫眼鏡のマークで表示されるタブ)でおすすめ表示されやすくなるといった効果が期待できます。
これらの効果から,ストーリーズ閲覧率はアカウントを成長させる上で最も注力すべき数値の1つと言えるでしょう。ゆくゆくは20%を目標に,まずは10%をクリアすることをめざしましょう。
保存率(保存数÷リーチ数)
保存率の説明の前に,Instagramにおけるインタラクションについて解説します。インタラクションとは,アカウントにおけるエンゲージメントの指標を意味します。具体的には,ユーザーが投稿にアクションした数を示す「いいね!」数,コメント数,シェア数,保存数の4項目を指します。これらの合計がインタラクションの数値となります。
・「いいね!」数:投稿に対する肯定的な反応の数
・コメント数: 投稿に対する意見や感想の数
・シェア数:投稿が他のユーザーに共有された数
・保存数:投稿がユーザーによって保存された数
上記の中で,医療機関のSNS担当者に最もチェックしてほしいのが保存数です。
Instagramのエンゲージメントを考える際,「いいね!」にばかり目がいきがちですが,アルゴリズムの評価は「シェア数 > 保存数 > 『いいね!』数」の順であることをご存じでしょうか。 病院アカウントの場合,シェアを獲得するのは非常に難しく,分析に十分な数値が取れないため,保存数に着目することが現実的です。保存率が高いことは,それだけ「後でまた見たい」と思ってもらえる,有益な情報提供ができていることを意味します。
目標としてはリーチ数の1%ですが,難しい場合はできれば0.5%はクリアしたいところです。しかし病院アカウントの場合,保存を獲得することも容易ではありません。まずは,0.3%を目標に,0.1%のクリアから始めましょう。
コメント数が多いのは良いことですが,あまり気にしすぎる必要はありません。なぜなら,「コメントしてくれた方にプレゼント」のような文句でコメント数を稼ぐ「コメント誘導」という手法が横行しており,コメント数が多いからといって,その投稿が良い内容であるとは限らないからです。コメント誘導はInstagramの利用規約に違反します。投稿削除やアカウント停止といった措置が講じられる可能性もあるので注意しましょう。
ホーム率(ホーム画面閲覧数÷フォロワー数)
ホーム率とは,投稿がホーム画面(タイムライン)にどれだけ表示されたかを示す指標です。言い換えれば,あなたの投稿がフォロワーに「届いたか」を測るバロメーターになります。
Instagramの投稿は,まずフォロワーに表示され,フォロワーからの反応が得られると,他のユーザーへ拡散されていきます。そのため,まずはフォロワーにしっかりと見てもらうことが,アカウント成長の第一歩となります。
ホーム率は50%を目標に,まずは40%をクリアすることをめざしましょう。ホーム率が高ければ,フォロワーの興味関心に合致しているコンテンツが作成できているということになります。逆にホーム率が低い場合は,あなたのコンテンツがフォロワーの興味を引けていない可能性があります。この場合はコンテンツの見直しが必要です。
プロフィールアクセス率(プロフィールアクセス数÷リーチ数)
プロフィールアクセス率とは,あなたの投稿を見た人があなたのプロフィールページを訪れた割合のことです。
投稿に興味を持ったユーザーは,どんなアカウントなのか,どんな投稿をしているのかを詳しく知りたいと思い,プロフィールページを訪れます。 つまり,プロフィールアクセス率が高いということは,あなたの投稿がユーザーの興味を引きつけ,アカウントへの関心を高めていることを示しています。
プロフィールアクセス率は2%を目標に,まずは1%をクリアすることをめざしましょう。投稿を見てプロフィールを訪れたユーザーが,「フォローする」ボタンを押すことで,あなたのフォロワー数が増加します。つまり,プロフィールアクセス率を上げることは,フォロワー増加のためにも重要です。
実際の画面を利用して保存率,ホーム率,プロフィールアクセス率を確認してみましょう(図)。
上記投稿の場合は,
保存率:0.33%(保存数172,リーチ数51,442)
ホーム率:77.1%(ホーム数8,545,フォロワー数11,074)
プロフィールアクセス率:4.4%(プロフィールアクセス数2,274,リーチ数51,442)となります。
分析投稿のタイミング
投稿分析は,投稿の成果を最大限に引き出すために,以下の2つのタイミングで行うことをおすすめします。
・投稿1週間後:長期的な効果を測定します。
投稿翌日に行う分析
ホーム率の確認:投稿がフォロワーにきちんと届いているかを確認します。フォロワーからの反応が良好であれば,フォロワー以外のユーザーへのおすすめ表示につながりやすくなります。
フォロワーからの閲覧率:フォロワーからの閲覧数とフォロワー以外からの閲覧数の比率も確認しましょう。通常は,この時点ではフォロワーからの閲覧率のほうが高くなります。この比率を見ることで,投稿がフォロワーに届いているか,そしてフォロワー以外に拡散され始めているかがわかります。
投稿から1週間後に行う分析
フォロワー以外からの閲覧率:フォロワー以外のユーザーへの拡散状況を確認します。インサイトの閲覧数欄で,フォロワーとフォロワー以外の比率を確認し,フォロワー以外の割合が高くなっていれば,その投稿が他のユーザーにも広がっていることを意味します。
「発見」タブでの表示:「発見」タブの数字は,あなたの投稿が「発見」タブでおすすめ表示され,ユーザーに見つけてもらった回数を示します。この数値が大きいほど,Instagramのアルゴリズムから高い評価を得ていると言うことができます。
継続的なチェック:中には,投稿後2~3週間たってから急に伸び始める投稿もあります。バズが起きる投稿は,特にこのようなケースが多いです。そのため,特に伸びそうだと思った投稿については,1週間後だけでなく,さらに長期的に分析を続けることをおすすめします。
投稿分析は,あなたの投稿がどのようにユーザーに届き,どのような効果を生み出しているかを把握するために不可欠な作業です。分析・改善を繰り返すことで,より効果的な投稿ができるようになります。
まとめ:SNSの効果測定について
SNS運用において数値分析は不可欠な作業のため,2回に分けて解説してきました。
「SNS運用に向いている人」として,「数字が好きな人」が挙げられると筆者は考えています。これは,筆者自身がSNS運用を続ける上で,「数字」が大きなモチベーションとなっているからです。さまざまな創意工夫が数字に結びついたときの面白さと喜び,数字が落ちることへの恐怖心。そういった数字への執着が行動量や企画力に結びついているのだと思います。
数字に注目し,楽しさや面白さを感じられるようになると,ゲーム感覚で継続できるようになります。

町田 詩織(まちだ・しほり)氏 湘南藤沢徳洲会病院マーケティング課 主任
製薬会社MR,フリーランスを経て,2013年湘南藤沢徳洲会病院に入職する。マーケティング課で広報誌を担当後,21年2月に同課責任者に就任。24年4月より現職。21年6月から職員採用を目的に開始したInstagramは開始3年間でフォロワー数1万人超えを達成。看護師,研修医,薬剤師などの採用に成功。病院広報アワード2023SNS部門最優秀賞受賞。医療従事者向けの雑誌記事の執筆,院内外での勉強会講師,メディア施策等で幅広く活動中。
X ID:まっちー@病院広報(@MACHY_pr )
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