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医学界新聞プラス
[第12回]SNSの効果測定について――アカウント分析編
SNSで差をつけろ! 医療機関のための「新」広報戦略
連載 町田詩織
2025.02.21
これまで,Instagramの具体的な運用方法について解説してきました。これからは2回にわたり,SNSの効果測定について解説していきます。
効果測定では,アカウント全体が正しく運用できているかを分析するアカウント分析と,一つひとつの投稿が効果的に発信できているかを分析する投稿分析の2つの視点が必要です。今回はアカウント分析について解説していきます。
SNS運用において重要なのは,「どのようにして成果を出すか」を考え実行することです。SNS運用自体が目的化してしまわないように,「なぜSNSを運用するのか」を常に明確にすることが大切です。
KGIとKPI
マーケティングの世界では,KGIとKPIという言葉をよく耳にします。やや専門的な言葉ですが,SNS運用においては避けて通れない概念なので,ここで理解しておきましょう。
KGI(重要目標達成指標)
Key Goal Indicatorの略で,最終的に目標を達成できたか否かの「結果」を評価する指標です。
KPI(重要業績評価指標)
Key Performance Indicatorの略で,KGI達成の「過程」として設定する具体的な数値目標です。KGI達成のために,SNS運用でどのような成果を出すべきかを数値化します。
SNS運用において,KPIとKGIの設定は,効果的な施策を実行し,目標達成に近づくために不可欠です。
・どのような数値で成果を測るのか(KPI)を具体的に設定する。
これらを行うことで,SNS運用がより効果的になり,目標達成に貢献できるでしょう。KGIの設定なしにKPIを目標とする人もいますが,KPIはあくまでも目標を達成するための複数ある指標の1つなので,目標と混同しないようにしましょう。
ただし,KGI,KPIを定めただけではSNSを効果的に運用することはできません。KGI,KPIに加えユーザーの反応や動向を数値でとらえ,分析することが不可欠です。
PDCAサイクルを意識しよう
SNSの運用は,一朝一夕に成果が出るものではありません。単に投稿するだけでなく,PDCAを繰り返して継続的に改善していくことが重要です。PDCAサイクルとは,計画(Plan),実行(Do),検証(Check),改善(Action)の4つのステップを繰り返すことで,より良い成果を上げる手法です。
PDCAサイクルを成功させるには,単なる感覚や主観ではなく,具体的な数値を用いて客観的に,かつ定量的に評価することが重要です。数値化することで,改善すべき点が明確になり,より効果的な対策を講じることができます。
定量的な分析に役立つ機能・ツール
SNSの分析には,さまざまなツールや機能が利用できます。Instagramの分析ツールでは代表的なものとして,以下に示すものが挙げられます。
・ Meta Business Suite
・ 企業が提供する分析ツール
インサイト機能
Instagramのインサイト(分析)機能は,アカウントの運用状況を詳細に把握できる便利なツールです。リーチやエンゲージメント,フォロワー数の推移などを確認できます。この機能は無料で利用できますが,プロアカウントへの切り替えが必須です。
Instagramのアカウントは,大きく分けて「個人アカウント」と「プロアカウント」の2種類があります。プロアカウントは,さらに「ビジネスアカウント」と「クリエイターアカウント」に細分化されます。
【個人アカウント】
一般的なユーザー向けのアカウント
【プロアカウント】
ビジネスアカウント: 企業や店舗が利用するアカウント
クリエイターアカウント: インフルエンサーやクリエイターが利用するアカウント
ビジネスアカウントとクリエイターアカウントでは,使用できる機能や表示項目が少し異なるようです。筆者はクリエイターアカウントに設定しています。プロフィール画面に住所を表示できるビジネスアカウントのほうが病院アカウントには適していると考える人が大半かと思いますが,筆者がアカウントを開設した2021年時点ではビジネスアカウントではBGMの選択肢が限定されてしまい流行曲が使用できないという弊害があったため,表現の多彩さを求めてクリエイターアカウントを選択しました。
Meta Business Suite
Instagramを運営するMeta 社が提供しているFacebookページとInstagramアカウントを統合管理できる無料ツールです。使用するにはFacebookページと連携させる必要があります。過去90日分のパフォーマンス結果を確認でき,CSVファイルとして出力できるため定期的にExcelで保存することを推奨します。
企業が提供する分析ツール
上記2つには,保存できる情報が不十分な点や使いにくさといったデメリットがあります。それらを補完するために筆者は,Meta社以外の企業が運営している分析ツールの無料プランにいくつか登録しており,主にCSVファイルでレポートを出力できる機能を利用しています。無料プランでは過去45日分のインサイトを確認できるものが多いため,月に1回,Meta Business Suiteと一緒にデータを出力する日を設けてExcelで保存しています。自施設の運用スタイルに合ったツールを探してみてください。
アカウント分析の重要性
アカウント分析をすることで,アカウントを正しく運用できているか判断することができます。リーチ数の減少や,フォロワーが増えないといった状況があった場合,何がボトルネックになっているのかを探り改善します。例えば,リーチ数が増えない原因が投稿数の少なさにあるのであれば投稿数を増やします。リーチ数減少の原因がアルゴリズムの変更にある場合は新アルゴリズムに対応した投稿スタイルに変更します。
アカウント分析の方法
分析機能で確認できる数値はとても多く,何が何やら難しくてよくわからないと思っている担当者も少なくないと思います。実際のところ,全ての数値をチェックする必要はありません。ここでは筆者がチェックしている項目と分析の仕方を解説していきます。
・リーチ数
・閲覧数(インプレッション数)
・フォロワー数
・フォロワー増加数
・フォロワー減少数
上記5項目の日々の数値を,毎月1回,分析ツールを使用して書き出し,Excelに保存しています。大きく伸びた日はその要因を分析し,再現性のある要素は後日の投稿に反映させます。大きく落ち込んだ日は投稿内容などに問題がないか確認し,改善の材料にします。日々の数値の変化をグラフ化して流れでとらえると,数字の伸びや落ち込みに気づきやすく,アルゴリズム更新などの影響を考察することができます。
図はInstagramのプロフェッショナルダッシュボードをタップするとすぐに開くページです。ここで直近30日間の閲覧数と新規フォロワー数を確認し,アカウントが健全な状態か,改善が必要な状態かを大まかに判断しています。簡単に確認できる場所なので,日々チェックしています。
図を見ると,直近30日間の閲覧数は約80万件とありますが,これはある投稿がバズって,閲覧数が伸びている状態です。当院のアカウントの場合,直近30日間の閲覧数が50万件程度あれば好調,30万件を切った場合は何らかの改善策が必要と判断しています。2024年12月のアルゴリズム更新によりリーチ数が一時的に落ちましたが,投稿内容の工夫などにより改善しました。
また,直近30日間の新規フォロワー数を見ると約200人に新規フォローされていることがわかります。この数字は当院のアカウントにとって健全な状態と考えています。この数字が減少している場合は,アカウント運用が間違っているため改善が必要です(フォロワー数については後の回で解説します)。
以上のように,分析の際は数値をもとにアカウント全体の状態を評価しています。皆さんもまずはSNS運用のそもそもの目的に立ち返り,成果を出すための運用ができているのか,数字を使って分析し,PDCAを回していきましょう。
次回は一つひとつの投稿を分析する投稿分析について解説します。

町田 詩織(まちだ・しほり)氏 湘南藤沢徳洲会病院マーケティング課 主任
製薬会社MR,フリーランスを経て,2013年湘南藤沢徳洲会病院に入職する。マーケティング課で広報誌を担当後,21年2月に同課責任者に就任。24年4月より現職。21年6月から職員採用を目的に開始したInstagramは開始3年間でフォロワー数1万人超えを達成。看護師,研修医,薬剤師などの採用に成功。病院広報アワード2023SNS部門最優秀賞受賞。医療従事者向けの雑誌記事の執筆,院内外での勉強会講師,メディア施策等で幅広く活動中。
X ID:まっちー@病院広報(@MACHY_pr )
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