名画で鍛える診療のエッセンス
[第1回] どうして医学教育にアートが必要なの?
連載 森永 康平
2020.10.12
名画で鍛える診療のエッセンス
大学の総合診療科医でもある著者が,教育・診療の視点でアートの可能性を探ります。
[第1回]どうして医学教育にアートが必要なの?
森永 康平(獨協医科大学総合診療科 助教/ミルキク 代表)
本紙の座談会記事『対話型鑑賞で鍛える「みる」力』(第3379号)は,分野を越えて大きな反響を持って受け入れられました。名画の鑑賞は診療にどう生きるのでしょうか? 今号から月1回,実際に名画をみながら,医学教育におけるアートの可能性を広く探っていきます。
みているようで,観察していない
さて,さっそくですが次の絵画(図)を見てみてください。
|
図 モナ・リザ(レオナルド・ダ・ヴィンチ) |
「あ,モナ・リザでしょ? 知ってる知ってる」と言わずにもう少しじっくりと。作者や作品の美術史的な情報はネットで検索すればすぐに出てきます。しかし絵をみずに「人物の左右にそれぞれ描かれているものは?」や「手はどちらを前にしている? どのように組んでいる?」と聞かれたら即答できますか?
実は私たちの目はみているようで,観察していないのです。つまり私たちの目は一度大まかな輪郭や色合いをみて「あ,モナ・リザだ」と認識すれば次の関心事に“目移り”してそれ以上細部をみることも,時間を掛けて注視することもしなくなる「サボりたがり」です。
医学部の授業では,観察することや話を聞くことが診療に重要だと教わります。一方でそれらの具体的な実践法について時間を掛けて習うことはほとんどなく,臨床での経験で自然に培われるものと認識されています。同様に「問題を解......
この記事はログインすると全文を読むことができます。
医学書院IDをお持ちでない方は医学書院IDを取得(無料)ください。
いま話題の記事
-
医学界新聞プラス
[第1回]心エコーレポートの見方をざっくり教えてください
『循環器病棟の業務が全然わからないので、うし先生に聞いてみた。』より連載 2024.04.26
-
医学界新聞プラス
[第3回]冠動脈造影でLADとLCX の区別がつきません……
『医学界新聞プラス 循環器病棟の業務が全然わからないので、うし先生に聞いてみた。』より連載 2024.05.10
-
医学界新聞プラス
[第1回]ビタミンB1は救急外来でいつ,誰に,どれだけ投与するのか?
『救急外来,ここだけの話』より連載 2021.06.25
-
医学界新聞プラス
[第1回]PPI(プロトンポンプ阻害薬)の副作用で下痢が発現する理由は? 機序は?
『医薬品情報のひきだし』より連載 2022.07.29
-
医学界新聞プラス
[第2回]アセトアミノフェン経口製剤(カロナールⓇ)は 空腹時に服薬することが可能か?
『医薬品情報のひきだし』より連載 2022.08.05
最新の記事
-
対談・座談会 2025.04.08
-
対談・座談会 2025.04.08
-
腹痛診療アップデート
「急性腹症診療ガイドライン2025」をひもとく対談・座談会 2025.04.08
-
野木真将氏に聞く
国際水準の医師育成をめざす認証評価
ACGME-I認証を取得した亀田総合病院の歩みインタビュー 2025.04.08
-
能登半島地震による被災者の口腔への影響と,地域で連携した「食べる」支援の継続
寄稿 2025.04.08
開く
医学書院IDの登録設定により、
更新通知をメールで受け取れます。