医学界新聞

連載

2016.11.14



めざせ!病棟リライアンス
できるレジデントになるための㊙マニュアル

ヒトはいいけど要領はイマイチな研修医1年目のへっぽこ先生は,病棟業務がちょっと苦手(汗)。でもいつかは皆に「頼られる人(reliance=リライアンス)」になるため,日々奮闘中!!……なのですが,へっぽこ先生は今日も病棟で頭を抱えています。

[第6話]
見直しのチャンス!
さよなら,ポリファーマシー

安藤 大樹(岐阜市民病院総合内科・リウマチ膠原病センター)


前回よりつづく

 救急外来当番のへっぽこ先生,偶然にも,今日の指導医はローテート先のセワシ先生です。発熱と意識障害で救急搬送になった70代男性が,急性腎盂腎炎の診断で入院になりました。普段のADLは問題ないようですが,糖尿病,高血圧症,心房細動,脂質異常症,陳旧性脳梗塞,前立腺肥大症,腰痛症,白内障,不眠症と病気のオンパレードで,複数の医療機関を受診しているようです。ご家族が持ってきた薬の袋の中には,どこから処方されたかわからない大量の薬が……。

(セワシ先生) 少なくとも20種類以上は飲まれているようだねぇ。似たような作用の薬もあるし……。へっぽこ先生,入院中の薬の管理やってみようか。
(へっぽこ先生) わかりました! 薬の入力ですね。最近,電子カルテの扱いにはちょっと自信出てきたんです。病棟に上がってささっとやっちゃいます!
(セワシ先生) ちょっと待った。僕がお願いしたのは,薬の“入力”じゃなくて“管理”だよ。これだけの薬,本当に必要だと思う?
(へっぽこ先生) でも,他院で出された薬を勝手にいじって怒られないですかね。
(セワシ先生) 聞いたことないかな? 薬は反対から読んだら“リスク”って。


 今の研修医の先生方は大変だと思います。ただでさえ,聞いたことのない薬の商品名を覚えなければいけないのに,それに加えて薬の一般名,ジェネリック医薬品や合剤の普及など,なじみのない薬剤名が次々と出てきます。多剤処方のお薬手帳には訳のわからない単語が並び,さながら“呪文の書”のようではないでしょうか? 慣れないとその解読のみで終わってしまうことも多いと思いますが,少し踏み込んで内容を整理してみましょう。入院って,実は患者さんの服薬管理,特に“ポリファーマシー”な患者さんにとって薬の見直しのチャンスなんです!

“ポリファーマシー”はなぜダメなの?

 日本は“お薬大国”です。厚労省の「平成26年社会医療診療行為別調査の概況」において,75歳以上の1件当たりの薬剤種類数は,院内処方(入院外・投薬)で4.48種類,院外処方(薬局調剤)で4.76種類,そのうち約25%の方が7種類以上を処方されていると報告されています1)。それに加えてサプリメントやら○○汁やら××茶やらで,「お薬だけでお腹いっぱい」な状態です。多剤併用にはさまざまなデメリットがあり,65歳以上の患者の入院の約30%がポリファーマシーによるもの(有害事象,もしくはアドヒアランスの問題)である,診療所通いで5剤以上内服している患者の転倒発生率が40%以上であるといった報告もあります2,3)

 そもそも,なぜポリファーマシーが溢れているのでしょうか? 「症状一つひとつに対して異なる医療機関(診療科)を受診する」,「それぞれの医師が他の医師の処方に無関心(もしくは薬剤師にお任せ)」,「検査異常があると,症状の有無にかかわらずすぐに正常化させようとする」,「処方後に必要性を再検討しない」といった医療者側の問題はもちろん,「何かあるとすぐに薬を欲しがる」といった,患者側の問題もあるでしょう。その根底には,昔ながらの「薬を出してくれるのがいいお医者さん」という,日本の文化がありそうです。そして,無駄に出された薬の副作用を抑えるために,さらに薬が処方される悪循環(処方カスケード)。これからの医療文化を担う研修医の先生方には,今この時期にこそ「薬を“必要以上に”出さないのがいいお医者さん」という“肌感覚”をぜひ身につけてほしんいんです。

“根気”と“勇気”で処方内容をチェック!

 では,実際に処方内容を整理しましょう……って,いきなり言われても困りますよね。いろいろな方法がありますが,ここでは,昨年JAMAで紹介された“deprescribing”を紹介します4)。不適切なポリファーマシーに対する薬の減らし方を示し......

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