指さし確認!(安藤大樹)
連載
2016.10.10
めざせ!病棟リライアンス
できるレジデントになるための㊙マニュアル
ヒトはいいけど要領はイマイチな研修医1年目のへっぽこ先生は,病棟業務がちょっと苦手(汗)。でもいつかは皆に「頼られる人(reliance=リライアンス)」になるため,日々奮闘中!!……なのですが,へっぽこ先生は今日も病棟で頭を抱えています。
[第5話]
指さし確認!
入院指示・デバイス・家族への連絡・転院調整
安藤 大樹(岐阜市民病院総合内科・リウマチ膠原病センター)
(前回よりつづく)
内科病棟での研修が始まって2か月,へっぽこ先生もどうにか病棟になじんできました。病棟スタッフとの会話も何となく様になってきましたし,担当患者さんのことを聞かれる機会も増えてきました。「もしかして,僕もやっていけるかも!?」なんて調子に乗りかけていたへっぽこ先生のところへ,担当看護師さんが「へっぽこ先生,○○さんのバルーン,まだ入れておくんですか? 調子も随分良くなってきていますけど,いつまで尿量のカウントをしなきゃいけないんですか?」と質問に来ました。
(へっぽこ先生) ええ~と,この方は心不全もあるから尿量は測らなきゃいけなくて……。
「もちろんそんなことはわかってますけど,今は全然症状ないですよ。ご本人も苦痛だっておっしゃってますし,ご自身で蓄尿もできます。何より,そろそろ退院なんじゃないですか?」と,看護師さんは納得がいかない様子。
(へっぽこ先生) そう言われればそうなんですけど……。
(セワシ先生) へっぽこ先生,もしかして入院時の指示を見直してないんじゃない? 患者さんの状態は日々変わっていくんだから,最初の指示のままじゃ……ねぇ。
患者さんの状態は日々変わっていく……当たり前のことなのですが,入院時の“大きな山”を越えることに力を注ぎすぎて,その後の入院経過観察が「何となく」になってしまうことが多く見受けられます(実はこれ,指導医の先生のほうが多かったりするかも)。ミスの多くは,この“山を登り終えた後”に見られるのです。もちろん,生命を扱う仕事に「何となく」は厳禁! そこで,ヒューマンエラーを回避するために鉄道や製造業などで当たり前のように行われている“指さし確認”,これを日々の診療に取り入れてみましょう! あなたの入院診療に“深み”が出てくると思いますよ。
まずは何に指をさす?
じゃあ,毎日毎日,何でもかんでも“指さし確認”をすればいいかというと,そんなことはありません。忙しい病棟業務を効率良く進めるためには,メリハリを付けることが肝心。まずはチェック項目を挙げ,どれくらいの頻度でチェックするかを決めましょう。項目は患者さんによって異なりますが,今回は一般的に注意すべき項目について考えていきたいと思います(表)。
表 指さし確認の頻度 |
【毎日指さし!】 バイタルサイン,点滴,デバイス
バイタルサインを毎日確認するのは当然のことですよね。むしろこれは,条件反射で確認するようになっていないとダメです。また,治療内容は頻繁に確認すべき項目の一つですが,特に点滴の内容については毎日確認しましょう。急性期の病態に対する治療は,「少しやりすぎ!?」くらいなこともあるため,症状が安定したのであれば見直しが必要です。例えば敗血症性ショックに対する輸液は,以前のガイドラインで推奨されていたような厳密な決まりはなくなったものの,「血圧を保つためにガンガン輸液!」という点はあまり変わりありません。急性期のバイタルサインを安定させることが治療成功の決め手になるので,救命のためには多少の心不全の合併も覚悟せざるを得ないのです。ただし,その輸液内容を「何となく」続けていると……どうなるかは言わずもがなですよね。
意外と忘れがちなのが,デバイスの確認。救急外来から入院する際,「とりあえずバルーン入れておいて!」みたいな会話を聞きませんか? 恐らく,“何かにつなぐことが入院治療”という間違った認識が広がっているからではないかと思います。もちろんそれが必要な場合もありますが,“不必要な異物は極力外す”ことが大原則! 中心静脈カテーテルはもちろん,経鼻経管チューブ(鼻翼潰瘍,副鼻腔炎),末梢点滴(蜂窩織炎,静脈炎),尿道カテーテル(カテーテル関連尿路感染症,膀胱結石症,神経因性膀胱)など,リスクのオンパレードです。それに,鼻や尿道に無駄に管が入っているなんて,誰だって嫌ですよね。
【3日ごとに指さし!】 入院指示,服薬,検査予定
冒頭の“入院指示の出しっぱなし”は,担当看護師さんの仕事を増やしてしまいますし,そのままあなたの病棟での評価低下につながるかもしれません。何より迷惑するのは患者さんです。目的もわからず尿をずっとためさせられたり,とうの昔に安定しているのにいつまでも血糖測定のために指に針を刺されていたり,すっかり落ち着いているのに抑制され続けていたりすることは,患者さんにとって不利益だらけです。毎日変更してい...
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