目的別量的研究ガイド(2)「関係を調べたい」(加藤憲司)
連載
2014.12.15
量的研究エッセンシャル
「量的な看護研究ってなんとなく好きになれない」,「必要だとわかっているけれど,どう勉強したらいいの?」という方のために,本連載では量的研究を学ぶためのエッセンス(本質・真髄)をわかりやすく解説します。
■第12回:目的別量的研究ガイド (2)「関係を調べたい」
加藤 憲司(神戸市看護大学看護学部 准教授)
(3101号よりつづく)
「相関」に注目するのは「因果」を調べるため
私たちは日常生活において,ある出来事と他の出来事との間の関係を知りたいと思うことが頻繁にあります。「彼が怒っているのは,私が昨日あんなこと言ったからなのかな」とか,「仕事が忙しすぎるから,新人ナースが次々と辞めていくのかな」などなど……。量的研究においても,関係を調べることは主要な目的の一つです。研究において測定された変数Aの値が変化すると別の変数Bの値も連動して変化する場合,AとBとは「共変関係にある」と言ったり,AとBとの間には「関連がある」「相関がある」などと言ったりします。本稿では簡単に表現するために,これらをひっくるめて「相関」という語を用いることにします。また,ここで言う変数とは数量的に測定されたものだけでなく,「YESかNOか」のようにカテゴリーの形をしたものも含みます。
量的研究でなぜ相関に注目するかと言うと,そこに原因と結果の関係,すなわち「因果関係」が存在している可能性があるからです。もし,ある結果をもたらす原因が特定できれば,原因を操作することにより,その結果の起きやすさを上げ下げすることができますね。労働時間と新人ナースの離職率との間に因果関係があるとわかれば,「労働時間をどう短縮するか」という対策の検討に移れることになります(もちろん,「言うは易く行うは難し」ですが……)。
実験研究と観察研究どちらで確かめるか
量的研究のうち,因果関係を調べることができる方法が実験研究です。理科の実験で試薬を混ぜたときとそうでないときとで反応を比べるように,ある介入をした群としない群とで,結果を比較するのです。前回述べたように,この比較は「反事実」,すなわち「介入群の人たちがもし介入を受けなかったら」という仮想的な状況を具現化しようとするものです。そのためには介入群と対照群(コントロール群)とが,介入の有無以外,できるだけ均一であるように選ぶ必要があります。そこで用いられる方法が無作為割付です。図を見てください。初めの時点で,誰がどちらの群に選ばれるかは決まっていません。無作為割付により,被験者一人ひとりが等しい確率で介入群と対照群にそれぞれ分けられます。こうすることで,介入の有無以外の条件について両群で偏りがない状態が実現され,その介入が結果に差をもたらした原因だと特定できるわけです。
図 因果関係を確かめるには,介入の無作為割付が重要な役割を果たす |
とは言え,世の中の多くの出来事は,実験研究を行うことができません。なぜなら,介入というのは研究者の側がいわば強制的に条件を操作するものなので,そんなことが倫理的に許されなかったり,現実的に不可能であったりするからです。例えば,「子どものころに虐待を受けると,成人してからうつになりやすい」という仮説があったとして,それを実験研究で確かめることなど...
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