目的別量的研究ガイド(1)「比較したい」(加藤憲司)
連載
2014.11.17
量的研究エッセンシャル
「量的な看護研究ってなんとなく好きになれない」,「必要だとわかっているけれど,どう勉強したらいいの?」という方のために,本連載では量的研究を学ぶためのエッセンス(本質・真髄)をわかりやすく解説します。
■第11回:目的別量的研究ガイド (1)「比較したい」
加藤 憲司(神戸市看護大学看護学部 准教授)
(3097号よりつづく)
今回から本連載の最後のパートとして,研究目的に応じた方法を検討する際のポイントについて述べていきます。
「比較」は量的研究の本質
量的研究における本質的な目的は,「比較すること」です。比較することで,差異を見いだすことができます。比較しなければ,差異は見いだせません。量的研究においては,データを数量的に表すことによって比較が可能になることが,最大のメリットだと言えます。
比較しない量的研究というのもあることはあります。それは記述研究とか実態調査と呼ばれるものです。読者の皆さんが量的研究の計画を立てた際,「それは実態調査に過ぎない」といった意見や批判を受けたことはありませんか? 例えばアンケート調査を実施する研究で,その回答を「はい」が何%,「いいえ」が何%などと集計するだけでは,確かに実態調査にしかなりません。実態調査のレベルを超えたければ,そこに比較の要素を盛り込みましょう。回答者のある属性がAである群とBである群とで,ある項目に当てはまる人の割合に差があるかどうかを調べるというのであれば,それは量的研究上の一つの問いになります。また「属性AのほうがBよりも,当てはまる人の割合が大きい」というのがあなたの仮説であれば,量的研究によってそれを検証することができます。このように比較の要素を取り入れることによって,あなたの研究がグッと量的研究らしくなるでしょう。
比較することがとりわけ重要なのは,ある介入(治療や予防やケア)の効果の有無を調べる場合です。読者の皆さんの中にも,「○○を食べるだけで痩せる」といううたい文句につられて「○○ダイエット」を試みた人がきっといると思います。また,受け持ち患者さんに,「自分のがんには△△を食べると良いと聞いたが,本当か」と尋ねられた経験のある人もいるかもしれません。多くの場合,そうした言説は体験談に基づくものです。体験談がうそであれば論外ですが,たとえそういう事例があったとしても,そこには比較対照(コントロール)がないため,エビデンス(根拠)と見なすことはできません。食べ物に限らず,何らかの介入の効果を主張するには,コントロールと比較して差があることを示さなければなりません。「食べた,痩せた,効いた」という体験談レベルの言説は「三た論法」と呼ばれます。三た論法に陥らないよう,量的研究では比較するということを強く意識してほしいと思います。
差異の検出が比較の質を高める
せっかく比較対照群(コントロール群)を含めて研究計画を立てていても,その選び方や比べ方が適切でないと正しい比較ができません。そこで,介入研究を例に取って,比較の質を高める方法について考えてみましょう。
介入の効果の有無を調べるには,介入ありの群と介入なしの群とで効果を比較することになります。このとき,これら二つの群は,介入するかしないかという点のみが異なっていて,それ以外の全ての要素についてはまったく同一の状態であるのが理想です1)。言い換えれば,介入研究におけるコントロール群は,「介入群の人たちがもし介入を受けなかったら」という仮想的な状況に相当するものと言えます。実際には一人の対象者が介入あり群と介入なし群の両方に属することはできませんから,これは「反事実」と呼ばれます1)。質の高い比較をす
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