医学界新聞

連載

2008.04.28

 〔連載〕続 アメリカ医療の光と影  第126回

緊急論考「小さな政府」が亡ぼす日本の医療(7)

李 啓充 医師/作家(在ボストン)


2777号よりつづく

 前回,「小さな政府」路線が,(1)経済成長を実現してこなかっただけでなく,(2)先進国中でも最悪グループに属する富の偏在をもたらしてきた事実を示したが,こういった「失敗」の厳然たる証拠があるにもかかわらず,政府も財界も,「小さな政府」が失敗しているとは考えていない。それどころか,小泉政権以降の「改革」は着実に成果を上げてきたのだから「小さな政府」路線はますます強化されなければならない,と主張している。

「財界一人勝ち」のカラクリとは

 彼らが,失敗の証拠にもかかわらず,なぜ,「小さな政府」と「改革」に固執し続けるのか,その理由を図にまとめたが,小泉政権発足以後,企業の(税引き後)純利益が凄まじい勢いで増加し続けていることがおわかりいただけるだろうか? ここ10年間の日本の経済成長率がOECD加盟国中最低であることは前回も述べたとおりだが,国全体の経済という「パイ」の大きさはさほど変わっていないのに,財界は,自分たちの取り分だけは着実に増やし続けてきたのである。しかも,「パイ」の取り分をどうやって増やしてきたかというと,主に,「人件費」を減らすことで(即ち,勤労者の「パイ」の取り分を減らすことで)達成してきたのである。

 言葉を換えると,今の日本は,「財界一人勝ち体制」になっていると言っても過言ではないのだが,財界関係者を経済財政諮問会議民間議員に据えるという形で,プライベート・セクターの人間(=利益団体の代表)にパブリック・ポリシーの根幹を...

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