医学界新聞プラス
[第2回]どのような場面でGen AIや最新ツールを活用できるのか
面倒なタスクは任せてしまえ! Gen AI時代のタイパ・コスパ論文執筆術
連載 中島誉也
2024.09.27
今回は,論文執筆のプロセスにおいて,具体的にどのような場面でChatGPT,Gemini,Claudeといった生成AI(Generative AI:Gen AI)や最新ツールを活用できるのかを詳しく見ていきます
論文執筆プロセスの全体像
まずは,論文執筆の一般的なプロセスを確認しておきましょう。下記に示す各段階において,AIツールはさまざまな形で私たちをサポートしてくれます。
●研究テーマの設定
●研究計画の立案
●データ収集と分析
●論文の執筆
●文章の校正
●投稿と査読対応
研究テーマの設定
文献検索
文献検索の最大の目的は,自分がやりたい研究テーマに最も近しい先行研究を見つけることにあります。しかし,日々忙しい医療者にとって,PubmedやGoogle scholarを用いて1から検索を始めることは今の時代得策ではありません。ある程度,AIで当たりをつけることが重要です。
ただし,ここで気を付けたいことが1点あります。それはハルシネーション(AIが生成する誤った情報)の可能性です。以下のツールはどの文献からAIがその情報を仕入れてきたかを引用付きで表示してくれるため,この問題を防ぐことができます。
Perplexity:質問すると,インターネット上から関連情報を収集し,要約して回答を生成します。学術論文だけでなく,最新のニュースや専門家の意見なども含めた幅広い情報を提供してくれるのが特徴です。
Elicit:学術論文に特化した検索エンジンで,研究質問に対して関連する論文を探し,要約してくれます。研究の方法論や結果の要約に特に強みがあり,多数の論文から効率的に情報を抽出できます。
Genspark:医療に関する複雑な質問を自動的に小さな要素に分解し,それぞれを同時に調査します。例えば「糖尿病の最新治療法」という質問を,「糖尿病の種類」「従来の治療法」「新薬の開発状況」「生活習慣改善の効果」などに分けて調べます。最後に全ての情報をまとめて,幅広い視点からの回答を作成します。
Connected Papers:特定の論文を中心に関連する論文のネットワークを可視化します。自身の研究の核となる論文を発見した後に使うと有用です。研究分野の全体像を把握したり,重要な論文を見逃さないようにしたりするのに役立ちます。
文献管理
目ぼしい文献を集めたら,それらを保管する場所を確保する必要があります。その時には文献管理ソフトを使うのが効率的です。
Paperpile:クラウドベースの文献管理ツールで,論文の整理,注釈付け,引用の管理が簡単にできます。Google Chromeの拡張機能を使うことで,Paperpile,PubMedやGoogle scholarの検索結果から,ボタン一つで直接文献を取り込むことができます。またGoogle Driveと連携しているため,どこからでもアクセスが可能です。
文献精読
先行研究を集めたら,精読し,その研究の限界点を把握した上で,今わかっていないことは何かを明確にしていく必要があります。しかし,数十もの先行研究を全て読み込むには相当の時間を要します。そこで以下のツールが有用です。
NotebookLM:Googleが開発したAIツールで,アップロードした文書の内容を理解し,質問に答えたり要約したりできます。複数の論文を同時に分析し,それらの内容を正確に要約・回答する点に特化しています。
Paper Interpreter:論文のPDFをアップロードすると,内容をわかりやすく説明してくれるAIツールです。図表の解説も行ってくれるため,視覚的な情報の理解も支援してくれます。
Readable:PDFを読み込み,元の形式を保ったまま翻訳を行ってくれます。英語論文の理解を助けるツールとして有用です。
研究計画の立案
この段階では,ChatGPT,Claude,GeminiなどのGen AIを主に活用します。これらのツールは以下のようなサポートを提供できます。
研究デザインの提案
先行研究をもとに,どのような患者を組み入れるべきか,必要な変数は何かなど,研究目的に適した研究デザインを検討する際の壁打ち相手になります。
研究計画書の内容の確認
適切な文章を書けているかどうかをAIにチェックしてもらうことができます。
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中島 誉也(なかしま・たかや)氏 長崎大学病院麻酔科 修練医1年目
長崎大医学部医学科在籍時代から医療AIや臨床研究に興味を持ち,ベンチャー企業でのインターンや複数の臨床研究を手掛けてきた。2022年に同大を卒業。現在は麻酔・集中治療分野の大学院や国内外のデータベースを用いた臨床研究を行いつつ,麻酔科医として臨床業務にも携わっている。
X ID:@naka_takaya
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