めざせ「ソーシャルナース」!社会的入院を看護する
[第20回] バーンアウトしないための医療者の心のケア
連載 石上雄一郎
2024.12.10 医学界新聞:第3568号より
CASE
白血病が急速に進行している25歳男性。入院が長期間であったことと,看護師とは同年代ということで趣味の話をするなど病棟スタッフとも仲良くしていた。その患者が少し息苦しいと訴えたことから,看護師は病棟主治医に電話したものの,バイタルに変化がないので経過観察を指示された。2時間後にショック状態となり,その数時間後に死亡してしまった。看護師は急変前に主治医に診察してもらえるように相談しておけばよかったと後悔し,遺族の前では泣きそうになるのを堪えていた。
医療者は泣いてもいいのか?
医療者は,「泣いてはダメだ」と教育されていることが多いと思われる。泣くことはプロとして失格であり,感情をコントロールできない弱さの表れとして認識されてきたからだ。しかし,医療者が不適切に感情を抑え込むのは不健全であり1),バーンアウトにもつながり得る。オーストラリアの研究では,医師の57%,看護師の76%が仕事中に泣いたことがあると報告されている2)。主な理由は,死にゆく患者への共感と絆が原因であった。医療者のwell-beingが専門のウォーカー医師は泣くことについて「患者と一緒に涙を流すのには適切な理由がある。医療者が弱さを見せることで,患者はわかってもらえている,大切にされていると感じる。泣くことは自己開示のようなもので,その瞬間患者と一緒に正直にいることができる」と述べている。医療者も1人の人間であり,患者の前で泣くことは悪いことではない。
医療者自身の悲しみと向き合う
医療者は日々「普通ではないこと」を目の当たりにする。死にゆく人々と毎日のように接することは「普通ではないこと」だ。医療者本人も知らず知らずのうちにつらさが積み重なり,バーンアウトしてしまうことがある。医療者には「患者のほうがつらいから,自分たちが弱音を言ってはいけない」という暗黙のルールがある。公認されない悲嘆とも言われるが,医療者の感情は周囲に理解されにくく,自分自身のつらさにも気づかないことが多い。飛行機の機内安全ビデオに出てくる酸素マスクの装着手順を思い出してもらいたい。「まず,親のあなた自身が呼吸できることを確認してからお子さんにマスクをつけてください」と言われるはずだ。医療者も同様で,まずは自分を守ることが大事である。
加えて,医療者は「もっとうまくやれる方法はなかったのか」と自分を責める傾向にある。システムを改善し,もっと良いケアを行うために振り返ること自体は問題ない。ただし,まずは傷ついた医療者自身の心のケアが必要だ。親友には「もっとできるはずだ。お前はダメだ」とは言わないはずだ。自分に対しても,同様に優しい声かけをしよう。あまりにつらい時は,心のケアが得意な医療者に助けを求めても良いだろう。恥ずかしいことではない。
心のセルフケアはトレーニングできる
医療者ができる心のセルフケアとして,GRACEがある(表)3)。GRACEは,死にゆく患者と関わる医療者のた...
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