医学界新聞

寄稿 新井信隆

2024.06.11 医学界新聞(通常号):第3562号より

 第65回日本神経病理学会総会学術研究会(下関市,2024年5月16~18日)において,シンポジウム「今こそ頭部外傷の神経病理について考えよう――司法制度におけるその重要性と将来の展望」が行われた。本企画は,頭部外傷の法医鑑定にかかわる神経画像所見や神経病理所見の最新の知見と課題,および刑事裁判の現状にフォーカスした画期的なものであり,法曹界も含めた実務専門家が登壇する本邦初とも言える内容であった()。本稿では,背景にある医学的,社会的な課題に触れつつ,このたび日本神経病理学会において設置された,頭部外傷の神経病理診断の指針を発信する委員会の活動についても紹介する。

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 シンポジウムの概要

 乳幼児の虐待を想起する頭部外傷には,揺さぶられっ子症候群(shaken baby syndrome),虐待による乳幼児頭部外傷(abusive head trauma in infants and children)という用語があり,状況を示唆する臨床診断として使われる一方,死亡事例では,認められた病変が揺さぶりや虐待によるものなのか確定診断を行うことは難しいと

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東京都医学総合研究所 特別客員研究員

1982年横市大医学部卒。東京都神経科学総合研究所,東京都医学総合研究所研究員,副所長等を経て,2021年株式会社神経病理Kiasma & Consultingを起業する。同社代表取締役。日本神経病理学会名誉会員。東京都医学総合研究所特別客員研究員,東京医歯大法医学分野非常勤講師,東京都監察医務院特別講師等を務める。近著に『神経病理インデックス 第2版』。

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