病院内における患者協働の実装に向けて
第26回日本病院総合診療医学会の話題より
取材記事
2023.03.06 週刊医学界新聞(通常号):第3508号より
第26回日本病院総合診療医学会学術総会(会長=獨協医大・志水太郎氏)が2月18~19日,「Diagnostic Excellence――総合診療,これからの診断学」をテーマに,ライトキューブ宇都宮(宇都宮市)の会場およびオンライン配信によるハイブリッド形式にて開催された。本紙では,シンポジウム「病院における患者協働の推進:AHRQ患者協働ガイドを実装できるか?」(座長=練馬光が丘病院・小坂鎮太郎氏,名大・栗原健氏)の模様を報告する。
◆日常臨床とリンクさせながら患者協働の概念の普及をめざす
医療の高度化・複雑化が進む中,ケアにかかわる関係者に患者や家族を巻き込む患者協働(Patient Engagement)が患者安全対策として重要視されてきていると話したのは栗原氏。病院内での患者協働の推進によって,投薬エラーや転倒の減少といった医療の質・患者安全の向上,病院の財務状況の改善,米国の医療研究品質機構(AHRQ)が中心となり開発された患者経験(Patient Experience)尺度であるCAHPS®の向上など,さまざまな項目での効果が期待されている。
実践に当たっては患者協働を実装していくための戦略が必要だ。参考にすべき資料として氏が挙げたのは,AHRQが策定する指針“Guide to Patient and Family Engagement in Hospital Quality and Safety”である。①患者・家族にアドバイザーとして協働してもらうこと,②質改善を目的としたコミュニケーションを行うこと,③看護師の引き継ぎ業務をベッドサイドで行うこと,④IDEAL(Include,Discuss,Educate,Assess,Listen)を用いて要点を押さえた退院計画を作成することの4つの戦略を以て,病院での患者協働の実装をめざす。同指針は,現在翻訳作業が進行中であり,近く一般に公開される見込み。栗原氏は「患者協働を意識していなくともコミュニケーションの重要性を普段から意識している医療従事者は多いはず。日常臨床とリンクさせながら患者協働の概念の普及をめざしたい」との考えを示した。
続けて,市中病院の立場から安本有佑氏(板橋中央総合病院),医療施設認定合同機構(JCI)からの認証を得た大学病院の立場から宮上泰樹氏(順大),総合診療科外来の立場から冨山周作氏(獨協医大)が,それぞれ自施設で実践する患者協働の取り組みの紹介および導入方法の提案を行った。討論の最後には座長の小坂氏が「本学術総会のテーマであるDiagnostic Excellenceの実現には患者協働が不可欠になっていくだろう。まずは患者・家族を医療のパートナーに加えるところから始めていただきたい」と,患者協働の実践を参加者たちに呼びかけた。
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