医学界新聞


日本MIT協会主催「第1回MITトレーナー実地研修」開催

取材記事

2022.11.21 週刊医学界新聞(通常号):第3494号より

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開催のあいさつを行う関啓子氏

 メロディック・イントネーション・セラピー(以下,MIT)とは,1973年に米国で開発された音楽的要素を活用した失語訓練法である。単語を構成するストレス・リズム・メロディーの3つを重視し,歌うことから自然な発話へと段階的に導く手法を取る。特に言葉を理解する力は保たれているものの表出が難しいブローカ失語症患者の発話機能改善への効果が期待される。

 83年,関啓子氏(日本MIT協会会長〕は原法である英語とは言語構造の異なる日本語に対応した日本語版MIT(MIT-J)を発表した。その後2021年に日本MIT協会が設立され,22年4月より失語症や高次脳機能障害に対する知識や適切な施術方法を提供する「MITトレーナー認定制度」が開始された。

 資格認定のプロセスは3段階。まずオンラインセミナーでMITの基礎を学んだ後に,実地研修で関氏をはじめとした講師陣による対面での実技指導を受ける。実地研修の翌日には学科・実技試験からなる資格試験があり,合格するとMITトレーナーの認定を得られるという流れだ。本紙では,上智大学(東京都千代田区)にて10月29~30日に開催された「第1回MITトレーナー実地研修」の様子を取材した。

◆実技指導でMIT実践の要点を学ぶ

 開催に当たって,関氏と佐藤正之氏(日本MIT協会事務局長)がそれぞれあいさつした。脳梗塞を発症し高次脳機能障害を患った際,音楽が発話機能の改善にもたらす効果を体感した1)という関氏は,「全国のブローカ失語症患者にMITを届けたいとの思いで活動を続けてきた。今回の研修の開催により,夢の実現へ一歩前進したと感じる。皆さんが失語症に悩む患者の助け手となることを期待する」と開催の喜びを述べた。

 続けて登壇した佐藤氏は「文章での説明ではMITの具体的な方法や実践の要点を理解しにくいため,実技形式で学ぶ場は非常に有意義だと感じる。MITの実施方法を正しく心得ている専門家はまだ少ない。ぜひ資格を取得し,MITのすそ野を広げてほしい」と実技研修の意義を強調した。

 実技研修は参加者が2人1組になり,患者役とセラピスト役を交互に担当する形式で行われ,講師らが教室を周回しながら指導を行った。翌日行われた資格試験においては参加者のうち23人が合格し,晴れてMITトレーナーとなった。参加者は「アットホームな雰囲気の中,丁寧な指導を受けながら繰り返し実技の練習ができたので理解が深まった。学んだ知識を現場で生かし,実践で集めたデータを基に研究にも取り組みたい」と意欲を語った。

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実技研修の様子
MITの導入では単語のアクセントに合わせてハミングを行う。まずはセラピストのハミングを聞かせ,その後左手で合図を出して斉唱を促す。その際患者の手を振ることでリズムを取る。

1)関啓子.「話せない」と言えるまで――言語聴覚士を襲った高次脳機能障害.医学書院;2013.

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