MEDICAL LIBRARY 書評・新刊案内
書評
2022.02.28 週刊医学界新聞(看護号):第3459号より
《評者》 松尾 清一 名大総長
モデルチェンジを重ねて磨き上げられた名著
本書を一読して,三つの点に大変感銘を受けた。
第一に,慢性腎臓病患者さんたち(決して「慢性腎臓病そのもの」ではない)にかける執筆陣の熱い思いがひしひしと伝わってくることである。「疾患(disease)という病気そのものを診て看護するのではなく,患者に寄り添う気持ちを強く持って,病い(illness)をさまざまな形で克服していくのが看護師のミッションである」というメッセージが全編を通して貫かれている。これは執筆者のほとんどが現役看護師であることが大きな要因になっていると思われる。WHOではchronic diseaseという概念の重要性が昔から強調されているが,「病い」という全人的な視点からのアプローチは,人生100年時代で心身共に病態が複雑になり,社会の中での健康医療が大きな課題になるこれからの時代に極めて重要であり,医師である私自身も大変勉強になった。
第二に,読者の理解を促すように構成されている点である。一昔前までは慢性に経過する腎臓病には多様な病気が含まれており,原因や経過もさまざまで,医療の専門家ですら理解することが大変難しかった。関連する学会や関係者の努力もあり,今世紀初め頃から慢性腎臓病(Chronic Kidney Disease:CKD)という概念で,医療者や市民が理解しやすい形で社会に広く流布されることになった。これがきっかけで腎臓病の共通言語ができ,多様な専門家や職種が連携して腎臓病医療を進めることができるようになった。本書では,まずCKDの患者さんの事例と看護上の課題が進行度や症状,シチュエーションに応じてわかりやすく提示され,読者の問題意識を高めた上で,CKDの最新の概念に基づいて医学的および看護学的な知識・技術が解説されている。したがって,読者は自分の興味に沿って必要な内容を深掘りして読めるように工夫されている。
第三に,CKDに限らず慢性の病い(chronic illness)全般にも共通する重要なトピックスやキーワードがCOLUMNで(あるいは本文中にも)全編にわたってちりばめられており,かつわかりやすく書かれている点である。国内外の考え方も積極的に導入されていて,執筆者の高い見識と広い視野の一端がうかがえる。これらに触発されてさらに深く勉強してみようという読者もいるのではないか。
以上に述べたように,本書は改訂を重ねて,その都度,進化してきた素晴らしいテキストである。車で言えば,モデルチェンジを何回も重ねて磨き上げられた大衆的な名車であろう。本書をCKD看護に携わる看護師だけでなく,CKDのチーム医療にかかわっているさまざまな職種にも推薦したい。
《評者》 小枝 達也 国立成育医療研究センター副院長/こころの診療部統括部長
本書の3つの特長
本書の主な特長について...
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