慢性腎臓病看護 第6版

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日本腎不全看護学会により編集された慢性腎臓病看護テキストの決定版。CKD(慢性腎臓病)の疾患概念に基づいた病態の基礎知識や看護総論を解説し、療養生活を支える看護の実践的な内容をまとめた。また、CKD各期の看護場面の事例を豊富に収載している。本書は、「慢性腎臓病療養指導看護師(旧透析療法指導看護師)」認定試験のテキストとして位置づけられている。

編集 一般社団法人 日本腎不全看護学会
発行 2021年10月判型:B5頁:304
ISBN 978-4-260-04683-1
定価 4,400円 (本体4,000円+税)

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第6版の序

 本書は,『透析看護』(初版,第2版),『腎不全看護』(第3~5版)と書名の変更を繰り返し,今回の第6版からは『慢性腎臓病看護』に改めました.
 “CKD is Common, Harmful and Treatable”といわれるように,わが国において慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)は,8人に1人が罹患するといわれる国民病です.高齢化の進展を背景に加え,CKDは糖尿病や高血圧,脂質異常症などの生活習慣病が背景因子となることが多く,末期腎不全に至る前に心血管系合併症を起こす危険性もあります.しかしながら,早期に適切な治療や療養を始めることで,重篤な合併症を予防し,腎臓病の進行を遅らせることができます.腎不全に携わる看護職には,保存期の段階から予防的な看護をすることが必須となってきているのです.
 第6版で書名を変更したのは,CKD看護に携わる看護職がCKDを予防的視点だけでなく,長期にわたるさまざまな場面において,包括的に看護を提供することでCKD患者のQOL向上,健康観の維持を可能にできると期待したからです.
 本書は,慢性腎臓病療養指導看護師(Chronic Kidney Disease Leading Nurse:CKDLN)のテキストでもあります.そのため,CKD看護の質向上のために,最低限の専門的知識が習得できることを目的とします.第6版においては,できる限り多くの執筆者を看護職としました.これは,今日の腎臓病に関わる看護師のなかには,専門的教育を受けた人材が多く存在しており,CKD 患者の置かれている状態について医学的視点と看護独自の視点を合わせた臨床判断ができるようになってきたからです.看護師を執筆者とすることで,看護の視点に立ち,さまざまな看護の場面で“どのような看護が必要とされるか”“看護職として何ができるか”を考えられる具体的実践手法をわかりやすく伝えることが可能であると考えたからです.
 さらに,第6版では,CKD患者を慢性の病いを抱える生活者ととらえ,慢性病看護の視点をもつことができるように,冒頭で「慢性の病い(クロニックイルネス)とともにある人々への看護」について解説します.CKD患者,いわゆる慢性の病いを抱える患者は,病いとともにどのように生活し,病いをどのように管理しているのか,その病いとともに生活する苦悩とは何かを知らなければ,患者が抱く問題の本質への支援提供が難しいと看護師は感じているからです.そして,第1章には日常的に起こるCKDステージ各期の看護場面を紹介し,その場面における看護の視点と支援の方法を看護場面の展開として示しています.そうすることで,看護師はCKD患者の看護を考える際に,どのような看護の視点をもち,アセスメントすることが求められているのかを考えることができます.各看護場面におけるキーワードは,第2章以降で具体的に説明されます.第1章に示す看護場面が,本書の検索用語になるとともに,日常の看護場面への示唆となるように構成しています.第2章では,CKD看護の概要を解説しました.第3章では,看護の基盤となる倫理と意思決定支援について最新の情報を踏まえ解説しました.第4章では,看護実践に必要な基礎知識として腎臓病の病態と主症状について解説しました.第5章では,CKDの各段階に応じた特徴や具体的な看護のあり様,発達段階に応じた療養生活を支える看護について解説しました.第6章では,CKD看護に携わる看護職に求められるマネジメントと教育および療養をする生活者に対する学習支援のあり方について触れています.本書を通じてCKD看護の意味を深く理解しながら,患者・家族の支援の基本として学びに役立てていただけることを,編集メンバーを代表して祈念しております.
 第6版の出版にあたり,大変お忙しい中,執筆してくださった皆様に感謝いたします.また,医学書院の吉田拓也氏はじめ皆様に多大なご支援をいただきましたことを,この場を借りて感謝申し上げます.

 2021年8月
 一般社団法人日本腎不全看護学会 認定委員会 テキスト編集責任者
 名古屋大学医学部附属病院
 髙井奈美

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第6版の序
初版の序
慢性の病い(クロニックイルネス)とともにある人々への看護
略語一覧

第1章 慢性腎臓病看護の実践事例
 事例 1 CKD G1・2の患者の定期受診行動がとれるようになるための支援
 事例 2 CKD G1・2の患者のCKD管理に向けたセルフケア行動を確立できるための支援
 事例 3 CKD G3の患者の腎症進行予防と並行して行う重症化予防・合併症予防の支援
 事例 4 CKD G4の患者の腎代替療法選択に向けた身体的・社会的・心理的準備への支援
 事例 5 CKD G4の腎代替療法に関する十分な情報をもたずに腹膜透析を希望する患者への支援
 事例 6 CKD G4の高齢CKD患者の腎代替療法の意思決定支援
 事例 7 CKD G5の高齢者の非導入(保存期の延長)を代理決定した家族への支援
 事例 8 CKD G4の学童期から青年期への移行期にある子どもの腎代替療法の選択への支援
 事例 9 透析導入期に療養行動に対する意欲が低下している患者への支援
 事例 10 自分のことが他者に伝えられないつらさを抱える維持腹膜透析患者への支援
 事例 11 合併症が出現した維持透析患者の療養生活の再構築への支援
 事例 12 長期透析患者の療養生活支援
 事例 13 終末期の患者の気持ちの真意を深く考える支援
 事例 14 がんを患った血液透析患者の終末期支援
 事例 15 認知症のある高齢者の血液透析中の安全を守る支援
 事例 16 抑うつ状態にある長期血液透析患者に対する支援
 事例 17 物忘れが多くなった独居高齢腹膜透析患者に対する社会的資源の活用
 事例 18 透析クリニックにおける中途採用者に対する教育
 事例 19 キャリアラダー申請に消極的なベテラン看護師への支援
 事例 20 多職種チームカンファレンスを効果的に行うための取り組み
 事例 21 透析施設におけるB 型肝炎ウイルス感染予防対策
 事例 22 透析施設における自己抜針防止への取り組み
 事例 23 透析施設における自然災害対策への取り組み

第2章 慢性腎臓病看護概論
 1 慢性腎臓病看護総論
  1 慢性腎臓病看護の意義と役割
  2 慢性腎臓病看護の専門性
  3 慢性腎臓病医療の歴史
 2 慢性腎臓病に係る看護専門資格制度と診療報酬
  1 看護専門資格制度
  2 看護と診療報酬
 3 慢性腎臓病と地域包括ケアシステム
  1 地域包括ケアシステムとは
  2 介護保険および高齢者が受けられるサービスとは
  3 慢性腎臓病の患者や家族が利用できる介護保険以外の制度
  4 高齢透析患者の在宅支援体制における家族への負担――その現状と今後の課題

第3章 慢性腎臓病看護における倫理と意思決定支援
 1 看護倫理の考え方
  1 看護倫理とは
  2 看護職の倫理綱領
  3 倫理原則
  4 患者の自律を尊重するケア
  5 ナーシング・アドボカシー
  6 倫理的な感性を高める
 2 意思決定のプロセスとSDM(shared decision making)
  1 慢性腎臓病看護における意思決定支援
  2 わが国における医療の意思決定
  3 意思決定プロセスの変遷
  4 共同意思決定(SDM)
  5 看護師による意思決定支援に必要な考え方
 3 アドバンス・ケア・プランニング(ACP)
  1 ACPの背景
  2 ACPの定義と基本的な考え方
  3 ACPの実践方法
  4 ACPにおける看護師の役割
  5 CKD看護におけるACP
 4 倫理的視点の活用の仕方
  1 患者を取り巻く人々における価値観の調整
  2 臨床倫理の4分割表
  3 4分割表と多専門職種の協働

第4章 慢性腎臓病の基礎的知識
 1 腎臓病の病態と腎臓の働き
  1 腎臓の構造
  2 腎臓の働き
  3 腎臓病の病態
 2 腎臓病と治療・検査
  1 慢性腎臓病(CKD)とは
  2 急性腎障害の病態
  3 CKDの原因
  4 CKDに伴う症状と看護介入
 3 腎代替療法
  1 特徴
  2 わが国の腎代替療法選択の特徴

第5章 慢性腎臓病患者の療養生活を支える看護
 1 慢性腎臓病患者の療養生活支援の考え方
 2 慢性腎臓病患者への具体的療養支援の方法
  1 食事療法
  2 薬療法
  3 運動療法
  4 退院支援と地域連携
  5 CKDステージ別の看護
 3 家族に対する看護
  1 慢性腎臓病患者を含む家族の特徴
  2 慢性腎臓病患者を含む家族に対する看護
 4 発達段階に応じた看護
  1 小児
  2 思春期
  3 成人
  4 高齢者
 5 腎代替療法別の看護
  1 血液透析
  2 腹膜透析
  3 腎移植〔生体,献腎(脳死を含む)〕
  4 血漿交換とその看護
  5 保存期の延長(保存的腎臓療法の選択を含む)
  6 慢性腎臓病とがん
 6 慢性腎臓病患者の心と行動を支える看護
  1 セルフケアとセルフマネジメント
  2 心理支援

第6章 慢性腎臓病看護を実践するためのマネジメントと教育
 1 チームマネジメント
  1 チーム医療と看護サービス
  2 目標管理とキャリア開発ラダー
  3 リーダーシップ
  4 カンファレンス
  5 看護必要度
 2 セーフティマネジメント
  1 医療事故対策
  2 感染対策
  3 災害対策
 3 継続教育と患者教育
  1 継続教育の方法
  2 患者教育の方法

索引

COLUMN
 ・保健信念モデル(ヘルスビリーフモデル)
 ・自己効力感(セルフ・エフィカシー)
 ・エンパワメント
 ・セルフケアを行う力を測る質問紙「SCAQ」(Self-Care Agency Questionnaire)
 ・精神科リエゾンチーム
 ・新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による3つの感染症
 ・症状マネジメント
 ・アギュララの危機モデル
 ・死の受容過程
 ・悲嘆(Grief)
 ・エンド・オブ・ライフケア(End-of-Life Care)
 ・コーチング
 ・ファシリテーション
 ・慢性腎臓病関連法規
 ・日本老年医学会による「高齢者ケアの意思決定プロセスに関するガイドライン」と「ACP推進に関する提言」
 ・日本透析医学会による「透析の開始と継続に関する意思決定プロセスについての提言」
 ・倫理的分析のプロセス 日本看護協会「看護倫理――看護職のための自己学習テキスト・事例検討編」から
 ・パーソン・センタード・ケア(Person-centered Care)
 ・ユマニチュード(Humanitude)
 ・サイコネフロロジーの考え方
 ・慢性腎臓病患者の生活の質の評価と健康尺度について
 ・ナラティヴ
 ・リフレクション
 ・CKD看護関連の実践報告の場の紹介

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看護師の実践を支える心強い基盤となる一冊
書評者:東 めぐみ(日赤北海道看護大教授・成人看護学)

 本書は『透析看護』(初版,2003年)から,約20年にわたり刊行を継続し,今回,『慢性腎臓病看護』に書名を変更した第6版である。その歴史は慢性腎臓病看護の発展のプロセスであり,本書は最新の看護を提供するための指南書でもある。

 慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)は,生活習慣病が背景因子になることが多いが,早期に適切な治療や療養を始めることで重篤な合併症の予防や,進行を遅らせることが可能である。本書は,CKDの予防的視点とともに長期にわたる療養生活への包括的な看護実践に焦点を当て,第1章が実践事例の解説,第2~6章が看護実践,医学的知識の解説編という構成になっている。

 第1章では,日常的に起こる,CKDのステージに応じた23の看護場面が紹介されている。各事例では,「看護の場面」「アセスメントの視点」と「看護の方向性」が示され,読者は「なるほど,そのように考えて実践していけばよいのか」と自己の思考や実践と照らし合わせながら,読むことができる。
 例えば,高齢者の透析の非導入(保存期の延長)を代理意思決定しなければならない家族への支援の場面がある。この場面では,認知症で透析導入を判断できない患者とその患者に代わって意思決定を行う家族の苦悩が描かれる。また,家族は「透析をしない」という意思決定を行うが,その決定とは裏腹に,家族の取ろうとしている行動が,「緊急透析導入」に至る可能性があることを察知した看護師の状況判断が秀逸である。長く腎臓を患って生活してきた患者と,その体験を共にしてきた家族,その両者を支える看護師の実践は,多職種協働,倫理的課題の分析,家族への配慮といった多角的な方向性を提示している。読者は「本当にその選択でよかったのか」という代理意思決定を行う家族の葛藤と患者のその人らしさを支える看護の実際を学ぶことができる。

 第2章以降は看護実践,医学的知識の解説編ががっちりと構成されており,看護師の実践を支える心強い基盤となっている。特徴的な章として,第5章「慢性腎臓病患者の療養生活を支える看護」がある。食事療法や薬物療法,運動療法などの実際とともに,CKDステージ別の看護においてはセルフケア能力を高める支援による患者の成功体験が,自律や強みにつながることが解説されている。また,第6章の「慢性腎臓病看護を実践するためのマネジメントと教育」では,看護師自身の教育などが示されており,患者とのかかわりに行き詰まったときに自分を見直すチャンスを与えてくれるであろう。

 黒江ゆり子氏は本書の冒頭で「慢性性におけるケアの焦点は治療にあるのではなく,『病いとともに生きること』(living with illness)にあり,『病いとともに生きる方策』を“発見”することに重点がおかれる」と述べている。本書の内容はこの一文そのものであり,CKDに携わる看護師が日々の実践で活用できる内容となっている。本書は慢性腎臓病療養指導看護師の認定試験テキストでもあり,所々にちりばめられたコラムも新たな発見があり楽しい。多くの看護師に手に取ってほしい一冊である。


モデルチェンジを重ねて磨き上げられた名著
書評者:松尾 清一(名大総長)

 本書を一読して,三つの点に大変感銘を受けた。

 第一に,慢性腎臓病患者さんたち(決して「慢性腎臓病そのもの」ではない)にかける執筆陣の熱い思いがひしひしと伝わってくることである。「疾患(disease)という病気そのものをみて看護するのではなく,患者に寄り添う気持ちを強くもって,病い(illness)をさまざまな形で克服していくのが看護師のミッションである」というメッセージが全編を通して貫かれている。これは執筆者のほとんどが現役看護師であることが大きな要因になっていると思われる。WHOではchronic diseaseという概念の重要性が昔から強調されているが,「病い」という全人的な視点からのアプローチは,人生100年時代で心身共に病態が複雑になり,社会の中での健康医療が大きな課題になるこれからの時代に極めて重要であり,医師である私自身も大変勉強になった。

 第二に,読者の理解を促すように構成されている点である。一昔前までは慢性に経過する腎臓病には多様な病気が含まれており,原因や経過もさまざまで,医療の専門家ですら理解することが大変難しかった。関連する学会や関係者の努力もあり,今世紀初め頃から慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)という概念で,医療者や市民が理解しやすい形で社会に広く流布されることになった。これがきっかけで腎臓病の共通言語ができ,多様な専門家や職種が連携して腎臓病医療を進めることができるようになった。本書では,まず,CKDの患者さんの事例と看護上の課題が進行度や症状,シチュエーションに応じてわかりやすく提示され,読者の問題意識を高めた上で,CKDの最新の概念に基づいて医学的および看護学的な知識・技術が解説されている。したがって,読者は自分の興味に沿って必要な内容を深掘りして読めるように工夫されている。

 第三に,CKDに限らず慢性の病い(chronic illness)全般にも共通する重要なトピックスやキーワードがCOLUMNで(あるいは本文中にも)全編にわたってちりばめられており,かつわかりやすく書かれている。国内外の考え方も積極的に導入されていて,執筆者の高い見識と広い視野の一端がうかがえる。これらに触発されてさらに深く勉強してみようという読者もいるのではないか。

 以上に述べたように,本書は改訂を重ねて,その都度,進化してきた素晴らしいテキストである。車で言えば,モデルチェンジを何回も重ねて磨き上げられた大衆的な名車であろう。本書をCKD看護に携わる看護師だけでなく,CKDのチーム医療にかかわっているさまざまな職種にも推薦したい。

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