医学界新聞

絶対に失敗しない学会発表のコツ

連載 後藤 徹

2022.01.10 週刊医学界新聞(レジデント号):第3452号より

 社会人の基本は身だしなみです。それは学会の演者も変わりません。医師の多くは非医療者ほど気合を入れて就職活動に取り組まないためか,この点を見落としがちです。学会発表という晴れ舞台には,頭のてっぺんから足の爪先まで,いつも以上に気合を入れて挑みましょう。寝ぐせ,しわしわのシャツ,曲がったネクタイ,カジュアルすぎるバッグ,汚れた革靴などは絶対に避けます。連載第1~3回を通して学会発表のいろはを身につけたあなたのプレゼンは一流です。一流のプレゼンには,一流の身なりで臨みましょう!

 初めての学会発表では,プレゼン中に極度の緊張に陥らないため,会場に慣れることが一番重要です。この項では発表を「戦国時代の合戦」に例え,初心者が戦をいかに勝ち抜くかを考えます。

1)“地の利”を押さえる(=会場の下見)

 自分の発表場所および時間は,学会の日程表から事前に把握していると思います。受付と口演スライドデータの登録を済ませたら,会場を下見するのが吉です。特に研修医セッションやアワードが絡む場合は,自分以外の発表を聞くことがよい予行演習になります。会場の大きさや形状,収容人数を把握するとともに他の演者の発表を参考にしましょう。

2)発表時の武器を知る(=プレゼンツールの把握)

 会場ではプレゼンツールを確認します。空き部屋となる時間帯があれば実際に壇上に立って確認することもできます。に一般的なプレゼンツールと注意事項をまとめました。発表中,壇上に1人立つあなたは,言わば“四面楚歌”の状態です。会場をどう掌握するのかを再確認しましょう。

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 学会発表時に活用するプレゼンツールと当日の注意事項

3)開戦の狼煙を上げる(=座長への事前あいさつ)

 忘れてはならないのが座長への事前あいさつです。座長はたいていセッションが開始する直前に会場に入ってきます。その際,「〇番目の演者で,〇〇病院の〇〇(名前)です。本日はよろしくお願いいたします」と一言あいさつするだけで印象がだいぶ変わります。座長は初めて会う先生であることが多く,質疑応答時には座長からの質問が最も多いという状況に鑑みて,議論の相手と事前に少しでも会話をしておくと,本番でリラックスできるはずです。

4)先制の矢を放つ(=質問する)

 アワードセッションでよく行われる手法ですが,ウォーミングアップとして自分の発表前に他の演者に質問をするのがお勧めです。学会での質問は飛び道具です。質問内容さえしっかりしていれば,あなたにどれくらいの臨床能力があるかは関係ありません。また答えてもらった内容がわからなくてもお礼を言えば場を乱すことはありません。下記の基本ルールにのっとって積極的に質問してみましょう!

1.自己紹介
例 「○○病院の○○と申します」
※研修医や何年目といった情報は不要。

2.賛辞を述べる
例 「○○に関する最新の知見を教えていただき,大変勉強になりました」
  「○○の治療アルゴリズムの考え方が非常に勉強になりました」

3.質問/意見を述べる
例 「○○に関して質問させていただきたいのですが……」

4.答えに対するお礼を述べる
例 「教えていただき,ありがとうございます」

 質問時のポイントは「長々と」「過剰にへりくだって」話さな...

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