医学界新聞

絶対に失敗しない学会発表のコツ

連載 後藤 徹

2021.12.06 週刊医学界新聞(レジデント号):第3448号より

 プレゼン中は演者が発表会場を支配し,基本的に座長や聴衆が遮ることはありません。あなたが話したい内容をみんなが黙って聞いてくれる特殊な環境にあります。つまり求められるのは純粋な話術であり,短い時間で聴衆にわかりやすく伝えるには,口演のテクニックが欠かせません。そこで今回はこのプレゼン方法について勉強しましょう!

 以下の5つのポイントを押さえるだけで,話術で圧倒的な差をつけることができます。

すぐにできる,話し方の5つのコツ!

  • 1.第一声は自信を持って堂々と
  • 2.話し方は丁寧語に統一する
  • 3.できるだけ短文で言う
  • 4.日本語は語尾を濁さず締める
  • 5.重要なことは結語でも繰り返してしっかり述べる

 まず,座長に「それでは○○病院の○○先生,お願いします」と言われた後の第一声が勝負を決めます。私は「よろしくお願いいたします。(タイトル)について発表いたします」と始めることが多いですが,最初の「よ」を全力で言えるかどうかでその後の発表スタイルが決まります。聴衆に理解してもらうことが目的の発表ですから,小声でごにょごにょ話すわけにはいきません。この部分ではスライドを見る必要がないので,聴衆を見て堂々とスタートを切りましょう!

 また,スライド内の文章が体言止めや文語体であったとしても,聞き手にトゲ無くすっと染み込ませるには口演を丁寧語で統一すべきです。そして内容はできるだけ短い文にして話しましょう。例えば「症例は80代男性で腹痛を主訴に来院し,来院後の造影CTにて肝動脈瘤の破裂出血が疑われ,放射線科と協力の上コイル塞栓を試み……」とだらだら続くのはリズムが悪く,聴衆は重要でない情報だと感じて理解度が落ちます。これを「症例は80代男性です。突然の右季肋部痛を主訴に来院しました。造影CTにて総肝動脈瘤と周囲のExtravasationを認めました。バイタル不安定であり緊急でコイル塞栓術を試み……」と変えると,短文で切るため情報をプラスしたにもかかわらず聴衆の理解度が落ちることはありません。

 次は読み方です。日本語は語尾で疑問文か平叙文か,否定形か肯定形かが決まります。逆に言うと語尾が弱いと何と言っているか曖昧になりやすい言語です。学会場は専門家ぞろいで萎縮してしまいがちですが,語尾まで自信を持って発音しましょう。最後に,重要な部分は繰り返しが原則です。結語でも再度全体をまとめて,重要事項は飛ばさずに話しましょう!

 口演がいまひとつという方に多いのが,不必要な単語の使用です。「あー」「えー」「まあ」「うーん」などについては,絶対に使用しないよう心掛けましょう。普段の病棟での電話やカンファレンスでもそうですが,これらは全く必要がない単語です。特に「まあ」という口癖は「偉そうに聞こえる」と非難されることもあります。これらの不要単語は意識しないと除外できず,癖を直すのに数か月はかかるのでやっかいです。

 一方で間を使うことも大事です。次のスライドに進んだら,心の中で1秒数えましょう。これによって聴衆は「スライド変わったぞ。読んでみよう!」という意識の下,タイトルを読んでくれます。その後に話し始めることで聴衆は「なるほど,今からこの内容を説明するのか」と流れに付いてきてくれます。たかだか1秒の間を取っても大した時間ではありませんし,この意図的な沈黙を使いこなして聴衆の理解度を上げましょう!

 発表時のセリフを忘れないために台本を作って紙に印刷する,またはPowerPointの発表者ツールに書く方法があります。不慣れな学生や研修医が特に多用するこの方法には注意点があります。それは,書かれた文字を読む際は棒読みになりやすいということ。最近,Web学会が主流となり事前録音された発表も増えましたが,台本を読んでいるかどうかは聞いていてすぐにわかります。棒...

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